792 / 2,795
DIY、流れて交わる
幽体の問題 その16
しおりを挟む「時間切れです……非常に残念ですが、これより五分間で考えを変えられた方は、すぐに申し出てください。古来より、武を競うことで行うという──『交渉(物理)』を最後の手段として行いますので」
俺が指を鳴らした瞬間、天から光が降り注いでいく。
冷酷無慈悲に霊魔一体一体のすぐ傍を通過したソレは、ドローンによって放たれた。
「牽制の一発、次は外しませんよ。ただしこちらへ向かうのであれば、攻撃であろうと降服であろうと同じことを致しません」
要するに、同じ方向に進ませるわけだ。
相手の代表者も、すでに選択肢を失っている──怒号と共に、彼らは動きだす。
「いらっしゃいませ、あなたがこの軍勢の主でございますか?」
「……よくも、やってくれたな!」
「さて、なんのことだが……」
俺自身は確認していなかった親玉。
人形がその情報をこっそり伝えてきたので分かったが……まあ、四天王のパワー担当みたいな男型の幽魔である。
逃走者を捕まえようと動いたのだろう、ドローンによる迎撃を受けたのか体の一部にダメージ痕が残っていた。
「俺様の計画を……いったい、どれだけの時間を掛けていると思っていやがる!」
「さて……二年でしょうか?」
「九百年だ! お前は、それだけの時間を一瞬で無駄にしやがった!」
「なんと……なんとも長い日々でしたね」
なるほど、見た目からして三十代だったのだが……最盛期の肉体を維持したまま長期間生きられる種族なのか。
まあ、地球の神話でも亡霊は長い時を生きることができる。
いずれ『冥王』とその世界の住民に、年などを訊いてみるのもいいかもしれないな。
「ですが、私が介錯を致します。野望は潰えて平和が訪れることでしょう。おめでとうございます、貴方はこの素晴らしき日を生みだすための礎に選ばれました」
「──死ね」
「ストレートなお言葉、大変結構。では、改めて名乗りましょうか」
男は沸点を超えて逆に冷静になったのか、真顔で接近し──俺を上下に真っ二つする軌道で武器を振るった。
本来であれば、武人であろうと抵抗するのは困難な鋭い一撃。
この光景を観る誰もが男の勝利を疑わないだろう──だが、それでも俺は口を動かす。
「私の名は『生者』」
「なっ……!?」
「生と死の狭間を渡り、死を超越する者。生に執着し、理すらも捻じ伏せる者。たとえ貴方がどれだけ強者であろうと、同じ場所まで上がれないままでは……絶対に勝てません」
体を通過する武器。
だが俺は平然と立ち、一瞬だけ発光したあとは元通りの姿を保っている。
それだけで理解できるだろう──俺を殺さなければその先には進めないと。
12
お気に入りに追加
649
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる