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DIY、流れて交わる
帰国祭り その04
しおりを挟む「あれ? そういえばまだ、名前を言ってなかったんだっけ? ごめんごめん、ぼくの名前は……うん、『テーリア』だよ」
「テーリアさんですか。私はツクル、見ての通りしがないタコ焼き売りです。……というわけですし、この出会いを祝してタコ焼きを一パック分プレゼントしましょう」
「えっ、いいの?」
「宣伝、ということでどうでしょう? ここのタコ焼きが美味しい、そう言い広めていただければ充分です……もちろん、味の方は保証しますので」
人間は好奇心を持つことで、恐怖を凌駕することがある。
ゲテモノを食べた人々は、みんなそういった一時の感情で食していたのかもしれない。
「今までに作った分もありますが、せっかくですので新しく焼いているところをお見せしましょうか」
「うん、ちょっと気になっていたし」
「そうですか? では、やってみましょう」
お祭りの期間中は:DIY:は使わず、高レベルの身体スペックが誇る器用さだけでタコ焼きを作っていく。
タコ焼き用のプレートに生地を流し込み、安全を確認したタコの魔物を埋め込む。
「ちなみにこれ、オクトパス種のどんなヤツが使われているの?」
「それは秘密にしています。いちおう、リストはありますが……見てみますか?」
「…………今は止めておくよ。けど、食べ終わったら見せてくれるかな?」
「構いませんよ」
生地を区切り、少し待つ。
ファンタジー世界なので料理に補正が働くため、少々焼き時間も手早く終わる。
「ほいっ、そいっ、そうれっ」
端の穴から順番に、素早く生地を回転させていく──裏返すのではなく、まず90°だけ回すことで中の生地が上手く流れ、綺麗な球体となるのだ。
「あとは中に具材を戻したり、継ぎ足しをしたりムラがある物を入れ替えたり、カリッと上がるように油を塗って──完成です」
千枚通しと呼ばれる棒を使い、掬い上げたタコ焼きを特殊な植物で作った皿の上に載せていく。
ついでに串焼き屋の店主と考案したソースで味付けをし、さらなるトッピングをいくつか盛り付けて──テーリアに差しだす。
「熱いから気を付けてください」
「~~~~~ッ!?」
「ほら、言ったではありませんか。いちおう水も……必要ありませんでしたか」
「は、はふっはふっ……おいしいねっ!」
口から息を何度も零しながら、テーリアは笑顔を浮かべてくれた。
よし、これなら子供にも喜んでもらえるタコ焼きだと証明できる。
「そういってもらえて何よりです。宣伝用のタコ焼きは別途で用意しますので、ぜひご家族にもプレゼントしてください」
「いいの? ぼくだって、お金ぐらいちゃんと持っているよ?」
「構いませんよ。当店でタコ焼きを食べてくれた最初のお客様、その出会いに感謝の礼をしていると思ってください」
「うーん、そうさせてもらおうかな? お姉ちゃんにも食べさせてあげたいし」
そう言うとテーリアは、渡したタコ焼きをバッグの中へ仕舞う。
まあ、たしかに収納袋という実例があるのであまり違和感を感じないな。
「それじゃあ、また来るよ!」
「はい、またの来店をお待ちしております」
テーリアは去っていく。
そして再び、辺りに静寂が訪れる。
──さて、どれだけの効果があるんだか。
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