虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、流れて交わる

帰国祭り その03

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 そしてお祭り当日。
 ドゥーハスト王国は、その領域すべてで王女の帰還を祝していた。

 ──第二王女はお祭りが好きだ。

 厳密には事実は異なるのだが、大衆にとってはそのように伝わっている。
 故に彼らは彼女の喜ばせるためにも、派手な出迎えを行っていた。

「……さて、予想以上に客が来ないな」

 オンリーワンを目指した結果だろう。
 そもそも立地条件が悪かったというのも理由の一つだが、通った客もすぐに店に掲げたイラストを見てこの場を去っていく。

「聞いた時はてっきり、少しぐらいなら客が来ると思ったんだが……港町のヤツぐらいはこれを知っているだろうに」

 出店の名は『タコ焼き』。
 この世界だと八本足の軟体動物は『タコ』という名前ではないので、たしかにオンリーワンな屋台となっている。

 だがしかし、忌避感があるのか絵を見て逃げるように居なくなるんだよな。
 いっそのこと、コネでも使って王城の前でやればよかったのかもしれない。

「そういえば、デビルズフィッシュとか言われて食べちゃいけないとか言われていた地域もあるんだっけ? いや、この世界だとそれは理由に当て嵌まらないな」

 たしか、いちおう魚扱いされたうえで鱗を持たないからダメと言う扱いだったらしい。

 しかし、同じ宗教がこの世界にあるというわけでもないし、タコの扱いがまったく同じということの方がおかしいだろう。

「ソースの匂いで釣れているのに、それでも絵柄で逃げる……だがしかし、看板を下ろすわけにはいかない」

 なぜかと言えば、『SEBAS』にそういわれているから。

 あとはタコ焼き屋をやることをなんとなく家族に零した時、とても興味深そうに聞いてきてくれたので、その誇りを下げたくはないからでもある。

「しかしまあ、それでも客が来ないのはなんとも儚いような……っ!」

「──お兄さん、こんな場所でいったいどうしたの?」

「……いやねぇ、少しも売れない商品に困っていたところだよ」

 死亡センサーに突如反応した存在。
 転移という移動手段を知っているので、それ自体にはあまり驚かない。

 だが、それでも気にしなければならないことがある──それだけの存在であるというのに、『超越者』ではないという点だ。

「ふーん、『タコ焼き』って言うんだ。見た感じからしてオクトパスみたいだけど……」

「私の出身地では、オクトパスのことをタコと言うのです。それを焼いた物ですので、タコ焼きということです」

「なるほど……だから絵もあるんだね。遠くから見て気になったからつい来ちゃったよ」

「はい。言語の違いもありますし、それを理解したうえでタコ焼きにしていますので……絵で何を使っているのか、そこははっきりと明示しておきたかったのです」

 目の前の少女は、遠くから来たという──そうするだけの知覚能力があり、来るだけの魔力があるということだ。

 いったい何者なんだ……いやまあ、この流れからしてだいたい察しは付くけどさ。

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