上 下
743 / 2,752
DIY、流れて交わる

守護者任命法

しおりを挟む


 アイプスル

 真・世界樹の麓には、この世界を守護する一匹の獣が……なんてカッコイイ感じに説明しても、その獣の正体がウサギであることを誤魔化すことはできない。

 風を操るそのウサギは、今日も今日とて自身のために築かれた社の傍で世界を見守る。

「──みたいな感じでどうだ?」

『どうだ、と言われてもな……人の感性を問われても困る。それよりも先ほどの話の続きに戻ってほしいのだが』

「ああ、そうだったな」

 ちょうど大森林の中での出来事を順繰りに説明し、中央区に侵入した辺りまで話した。

 そこでなんとなく浮かんだ美辞麗句込みの風兎に関する説明を突っ込み、話が中座してしまったところだ。

「森獣も侵略されて、仔犬っぽい個体が門番代わりにされていた……心当たりって風兎にあるのか?」

『…………いや、無いな。おそらくは私よりもあとに森獣となった個体だろう』

「なら、森獣ってどういう風になるんだ? やっぱり聖獣が関係するのか」

『いや。それは場合によるな』

 風兎は悩むようにキュウッと小さく鳴き、それからその説明をしてくれる。

『まずお前の予想通り、聖獣様の力があれば森獣へ昇華することができる。だが、それだけが森獣へ達する唯一の方法ではない。その個体が信仰を浴びる、森を支配する……などと、手段はいくらでもある』

「それはどっちが正規の方法なんだ?」

『そのすべてが正当な方法だ。そもそも名の通り森の獣、その守護領域はとても狭い。条件を満たすことさえできれば、森の民すべてに機会が与えられるのだ』

「つまり、風兎以外にもこの世界の守護をする存在ができると?」

 それならば、ぜひ海を守護してほしい。
 原初の海洋系を再現した海の中、魔力の力によって早回しでできあがったそれは──すでに現代と同じ辺りまで進化を終えている。

 まあ、それにプラスしてファンタジーな存在もいっしょに生まれているのだが……それも含め、『SEBAS』に任せている現状を解決するいい方法だろう。

『可能ではあるが、一定以上の存在の格──つまりレベルだな。他にもそれなりの知性が必要となり、何よりも一つだけ外せない条件があるのだ』

「……そんなのあったのか。それで、いったいどういうものなんだ?」

『──まあ、お前なら一瞬なんだがな。上位の存在による加護、聖獣様の加護もそれに該当するのだが……最上位の加護として、獣神様の加護が存在する』

「ああ、うん……それなら有るしな」

 とっくに話していたので、風兎もそういう風に話を進めたのだろう。

 つまり知性を宿した高レベルの魔物がいれば、それを守護者に仕立て上げることができるわけだ……うん、いずれやってみよう。

『いずれ卵も孵化する。それを守護獣とするのがよかろう』

「卵……あっ」

『まさか、忘れていたとは言わせないぞ』

「……あ、あはははっ!」

 ずいぶんと前のことだ。
 当千の試練の報酬として得た──守護獣の卵なんてアイテムがあった。

 たぶん、予め獣神の加護が掛かっている便利なアイテムなんだろう。

『……まあ、思いの外時間が掛かりそうだ。細かな地域を守護する者たちを見つけだすのもよかろう』

「そ、そうだよな」

『忘れるのはやはり問題だがな』

「す、すみません……」

 一度、『SEBAS』に纏めてもらった方がいいかもしれない。
 俺がいったい何をしてきたのか、またどういったアイテムを持っているのかを。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO

無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。 名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。 小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。 特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。 姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。 ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。 スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。 そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...