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DIY、新境地を求める
覇獸談(01)
しおりを挟むツクルの居なくなった王城で、一組の夫婦が言葉を交わしている。
夫は金色の虎耳を持ち、妻は白色の兎耳を頭から生やしていた。
「──それで、何を触れていたんだ?」
「こちらとなります」
ツクルと共に宝物庫へ入った臣下は、その際にツクルが触れていた宝物のリストを王たちへ提示する。
「ふんふん……どう思う?」
「聖具も呪具も関係なしか。法則性を持っているのではなく、あくまで『生者』が興味を持った品に触れた……ということか。狙いが有って行ったわけではないようだな」
「やっぱりそう思うかい? てっきり獣神様と関係を持つ物を持っていこうとすると思ったんだが……盗ってはいないんだろう?」
「は、はい。そのようなことは決して」
ツクルの挙動を探っていたその臣下は、彼の動きをすべて監視していた。
しかし、魔道具の中へ宝物を仕舞うような行為も、特殊なスキルを発動するようなこともなかった──ただ、布の上で宝物に触れていただけだ。
もちろん、そのことを報告する。
それを訊いた二人は、訝しげな顔を浮かべて臣下へ訊ねた。
「その布ってのはどういうものだ?」
「『生者』様が持ち込んだ、魔法陣が刻まれた物です。術式を確認させていただきましたところ、解析の構成術式がございました」
「解析か……別に複製を許さないわけじゃないが、そもそもできるのか?」
「不可能ではないだろう。摩訶不思議な魔道具を作ることは我が妻も知っているだろう」
すでにその身を以ってその強さや便利さを知っている二人。
強者の動きを再現する結界、あらゆるエネルギーを生みだす装置、聖なる剣や槍……その一つひとつが国宝を超える代物である。
「まあ、それならそれで一つや二つ作ってくれればいいんだが」
「ほぉう、そのような機会があったとして、我が妻は何を望むのだ?」
「どっかの誰かさんが国宝だから持ち出すなと言っていた、拘束の聖具だね。いちいち暴れるのを押さえ込むのも面倒臭いし、手っ取り早くしたいんだよ」
「……そ、そうか。いずれ! いずれ、来たときに伝えればよいだろう。も、もちろん、それ『生者』が応えるかどうかは、また別の話ではあるが!」
言葉を濁し、言質だけは取られまいと足掻く夫──『覇獸』。
しかし妻──【獣王】の口元に浮かんだ小さな笑みを見ると、背筋が凍るような感覚に襲われてしまう。
「そ、そういえばだ! 聖獣祭について、少し確認しておきたいことがあったんだ! すまないが、いっしょに来てもらうぞ!」
「は、はぁ……畏まりました」
言われるがまま、臣下は『覇獸』の後を付いていく。
その姿はとても小さく、ありふれた夫婦のようで……小さく笑う臣下であった。
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