虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
714 / 2,828
DIY、新境地を求める

決闘装置

しおりを挟む


 ルリ教団が有する戦力──ルリ騎士団。
 構成員は休人だけでなく、ルリの威光を知り集まった星の住民たちも含まれている。

 そのため死の危険性がある訓練場には、ある特殊な仕掛けが施されており……。

「みんなー、おつかれさまー!」

 ルリが明るい声で近づいてくると、騎士団が集まり跪くポーズを取りだす。
 俺はただボーっと立ち尽くし、その様子を見ている。

 我が妻ながら、求心力が半端ない。
 夫として本当に情けないが、決して勝とうとして勝てるわけではないので分を弁えて、ただあるがままを受け入れる。

「アナタもね~、かっこよかったわ~!」

「……ありがとう」

「もう、照れちゃって~。ほらほら、みんな纏めて回復させるから、混ざって混ざって」

「あ、ああ……」

 言葉に詰まっているのはもちろん、騎士たちからの視線がいろいろとクるからだ。

 崇めている教祖様が直接近づき、褒める存在……どういう扱いを受けるのかは、察しての通りだろう。

「いくわよ~“範囲回復エリアヒール”!」

 一定エリアに居る対象すべてを回復させる魔法だが、もっとも性能が低い魔法だ。
 しかし、使っているのがルリならば話は別となる……むしろ弱めておかないと、過剰回復で悪影響となるらしい。

 どんだけだよ、とツッコみたくなるがこればかりは才能が生んだ悪影響だろう。
 まあ、よくある『やりすぎちゃった?』みたいなヤツだ。

 とにかく、そんなわけで参加した騎士団員と俺たちは癒される。
 誰一人その癒しの波動を浴びていない者はおらず、至福の表情を浮かべていた。

 ──ちなみに俺は、過剰回復による死亡を迎えている。

「ご苦労様でした」

「ええ、まったくです……」

「あのお方の指示に逆らおうとする者は、ここには誰もいませんからね。問題なく模擬戦が終了して良かったです」

 逆らえない、ではなく逆らおうとしない。
 そう表現されている辺り、彼女たちの忠誠心がどれだけ狂気染みているかお分かりいただけるだろう。

 ただ、それなりにいっしょに居るためくっ殺さんことリンスウェルさんはしっかりとルリのことを理解できている。

 なので狂信的ではあるが、しっかりと考えて意見を言ってくれていた。


 ちなみに、くっ殺さんも騎士団長だ。
 ただし、ルリ騎士団としての騎士団長とルリ本人に忠誠を誓う騎士団とで分かれている内の後者である。

 そちらのメンバーは前者の騎士団長よりも地位的に上らしい……なんだろうか、そのルリが好きそうな特殊キャラの集まりみたいな設定は。

 あと、どっちもほぼ同義である。

「しかし、死んでもそれを無かったことにする結界ですか。聴いた時には耳を疑いましたが、本当にそんなものがあるのですね」

「休人たちが『ピーブイピー』とやらをする際と同じ結界が生成され、そこで死んだという事象を破却する……そんな神代魔道具を教祖様が持ち帰ったときは、さすがに誰もが驚いたな」

「……ええ、さすがは教祖様ですね」

 拾っちゃったー、みたいな感じで持って帰れば誰もが唖然とするだろう。

 もう、本当に運がイイってレベルじゃ収まらない幸運の持ち主……それこそが俺の妻、ルリであった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】聖女ディアの処刑

大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。 枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。 「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」 聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。 そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。 ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが―― ※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・) ※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・) ★追記 ※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。 ※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。 ※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。

処理中です...