虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

DIY、祭りに現れる

新人参戦

　あれからそう経ってもいないのに、再び拓真の発言に驚かされることになる。

「……またイベントか」

「人気者は辛いな、おい」

「まあ、よくよく考えればそうだよな──新人が来るってことは、普通そうなるか」

　いわゆる新キャラ応援ってやつだ。
　従来のＭＭＯと異なり、ＶＲＭＭＯは一度に手に入るソフトに限りがあった。

　故に新人が来るのも一定周期で追加されることになり……都合が好いというわけだな。

「それで、今回は何をやらされるんだ？」

「仲が深まるだの、意味深な文面がいくつかあったが……はっきりとはまだ分かっていないな。予想でいいなら教えるが」

「まあ、お前の予想はだいたい当たる……瑠璃が言うと白も黒になるから、あれは例外にするとしても」

　明日は雨だと天気予報士が言っても、何度それが覆されたことやら……心の底から思った場合のみらしいし、あくまで瑠璃の周囲だけの話だ──決して、天気予報士がことごとくクビになっているという話は聞かない。

「……れ、例外はさておき話を戻すか。新人は今もログインしてからレベルが一定値に達するまで、毎日経験値を増加させるアイテムが与えられている……これは知ってるな？」

「まあ、教えてもらったからな」

　舞の友人である二人の少女、その子たちが教えてくれた。

　お蔭ですぐに一定のレベルまで達したんだとか……俺を殺していた分も、きっと含まれているんだろうな。

「新人じゃなくても、レベルが低い奴がいるけど……そういうキャンペーンは？」

「……無い、ってことはないだろう。そんなレアケースあんまり居ないが、たしかに初めてすぐに用事ができれば現れるんだよな。けど、ＶＲ機器を置いてどこかに行くなんてのはもっとレアじゃないか」

「そうだよな……」

　まず高い、次に持ち運びはそれなりに簡単にできる、そして使えばもっと便利だから。
　たとえ海外旅行だったとしても、持っていく方が役に立つ──それがＶＲ機本体の特徴でもある。

　おそらく、海外からログインしているプレイヤーもいるだろう。
　それが可能な技術があるからこそ、巷の注目を集めるヒット作となっているのだから。

「けどまあ、本当に何をやるんだろうな。また星対抗の争奪戦か？」

「それならお前の一人勝ちだな」

「そんなわけないだろう。あれからだいぶ時間が経ったし、みんな強くなっている。小細工が通用する時代はとうに終わったんだ」

「……どうだか」

　全然信じてもらえてないが、少なくとも俺自身（と『ＳＥＢＡＳ』）は確信していた。

　──絶対に、一筋縄ではいかないと。