649 / 2,733
DIY、遥かな旅路へ
再質問
しおりを挟む「それで、またイベントかよ」
「なんだなんだ、『新時代の申し子』がずいぶんと暗いムードだな?」
「……そんな変な二つ名が、お前の口から飛び出てきたからだよ」
今日も今日とて家族のために仕事へ行き、そこで拓真と情報共有。
そして発せられた謎の単語──物凄く、俺の中でテンションが下がった。
「だいたい、なんでそんな二つ名になるんだよ。もっとこう、地味なのは無いのか?」
「あるわけないだろ。お前、自分が何をしたのか分かってんのか?」
「銃の情報開示、それだけだろ?」
「……んなわけねぇだろ。さらっと未来技術の開示をしやがって、その理論まで生産ギルドに公開すりゃあどうなるかなんて、お前なら分かっていただろ」
光線銃の技術は、未だにブラックボックス状態となっている。
無理に解体すれば消滅するし、解析を内部の深くまで行おうとしても同じことだ。
「アレを使うと、光の剣も作れる。だから二つとも揃えたい奴は必ず二つ以上買うよな」
「今の技術力じゃ、まだ大剣ぐらいの大きさが無いと無理みたいだけどな。それで、何が問題だったんだ?」
「そのすべてだよ。普通嫉妬するだろ、そういう突出したプレイヤーにさ」
嫉妬か……それを言うなら、一つだけ訊かなければならないことがある。
「瑠璃、されてたっけ?」
「…………あれは例外だ、いろんな意味で」
俺たちオンゲーのユーザーにとって、ルリという言葉自体が一つの概念であり理だ。
起こす行動すべてに疑念を抱かず、あるがままに受け入れろという意味の。
「えっと、理由だっけ? ……というか、この話もうしたよな?」
「あれから時間も経って、状況がいろいろと変わってんだよ。自分で光線技術を生みだせるようになったと一喜していたヤツが、全員揃って一憂していればそうもなるだろう」
なんでも、先に言ったシステムを突破できる奴が一人もいなかったんだとか。
あの『機械皇』であれば、すぐに解除できるレベルだったんだが……『SEBAS』式のシステムを、まだ破れはしないわけだ。
「それで、もっと詳しい話が訊きたいと……何を言えと?」
「さすがにブラックボックスを開示しろなんて言わねぇよ。せめて、その技術が普通のプレイヤーでも手に入るのかどうかだけ」
「──俺は『機械皇』という人物に接触し、技術を向上させた。俺が言えるのは、それぐらいだな」
嘘は言っていない。
そして、真実を言ったとしてもそちらの方が嘘っぽいことを自覚している……拓真がそれを本当に信じそうなことも。
「……前に言ってた、『超越者』か?」
「そうそう。ソイツは名前が示す通り、機械に詳しいヤツだったんだ。だからそこで地球の技術を提供する代わりに、アッチ側の技術の一部を貰ったってわけ」
「……恨まれそうだな、お前」
「さてな、それはお前ら次第だろ」
俺はあくまで、自分のため──そして家族のためにやっているだけだ。
問題は無い……そう、無いのだ。
10
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる