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DIY、遥かな旅路へ
東国巡り その13
しおりを挟む「なんとも……幼いな」
「忌避感を感じさせないよう、工夫が施されているらしいですよ。また、破壊されないようにするために保護欲を誘うそうです」
「……そういうものなのだろうか」
どうやらせっかく用意した、庇護機能は働いてくれなかったようだ。
イメージ的には二頭身の美少女AIだと思えばいい、【刀王】が無反応なのはそっちに興味が無いからだろう。
封印の札を外すと、鞘から刀が勝手に少し抜けて──人工霊体が出現した。
彼女との対話によって、鞘と刀の所有権を得るのだが……すでに得ているみたいだな。
「懐いているようですね。先ほど手に触れただけで、ここまでできるとは……【刀王】とはまさに貴方の在り方そのものですね」
「刀を愛する者であれば、これができて当然だ。刀身一体、心を一つにすることで……おい、止めろ」
「武具と一体となっているというよりは、親子のように見えますね。会って一日も経たずにこれとは、相当な誑しでございますね」
さすがに媚を売る機能は持たせていないので、これ──割と条件をシビアに設定したはずの人工霊体が懐いている光景は、【刀王】自身が持つ才によって成されたのだろう。
「……ふむ。そうか、理解した。まずは試させてもらおう」
「おや、もう会話まで達しましたか。そして私は、その実験体に選ばれたのですね」
「少々扱いに手を焼きそうだが、其方と闘う内に感覚を掴もう。さぁ、武具を取れ」
相手は【刀王】、相手にとって不足なし。
ならば俺もと武器を引っ張り出す──悪人にも使った、『命刀[生鳴]』だ。
「その刀……これ以上に面妖だな。こちらとしては、それの方が気にな……いや、そういうことではない」
「おや、ヤキモチを焼かれているので? ずいぶんと感情豊かな刀ですね」
「……また厄介事が増えた。其方、ずいぶんな品を持ち込んでくれたな」
「求める者に最適な品を届ける。それこそが商人の在り方ですので」
刀を互いに構えた。
俺は中段の構え、【刀王】は八相の構えで相手の動きを読み取る。
無粋ということもあり、身体機能を補助する以外の結界をすべて解除しておく。
残ったそれもとても薄いため、【刀王】ともあろう方ならば一瞬で切り裂くだろう。
「其方のそれ、壊してしまっても文句はあるまい。屍を喰らうこの妖刀に、刀の死骸をまず喰わせてみよう」
「いえいえ、私の防衛手段が無くなってしまいますのでそれはご勘弁を。刀を斬られてしまえば、二つ目の糧は私でございましょう」
「うむ。苦しむことなく楽にしてやる、ありがたく逝くがよい」
会ったばかりのことからして、本当に苦しまずに殺されるんだろうな。
だがまあ、意味もなく死ぬのはごめんだ。
それなりに抗ってから死ぬことを選ぼう。
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