虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
595 / 2,853
DIY、遥かな旅路へ

お湯鉄砲

しおりを挟む


 いろいろと何かを反省した気もするが、すべて忘れて探索を始める。

 あれだけ散々宣伝した『雪目薬』とゴーグルの効果もあり、良好すぎる視界を確保して探索ができていた。

「ただ……歩きづらい」

《結界ごと足が冷えているのかと。また、重量オーバーで沈んでいます》

「軽く……はできないか。寒さは熱機能でどうとでもなるけど、重さはどうしようもないな。雪の強度を高めることは?」

《可能です》

 道の方を上手く修繕し、俺は何も変えずに街の先を進んでいく。

 もちろん、融かしづらくならないように対策はしてある……ドローンが一定時間ごとに雪を融かすことでな。

「魔物の気配が無いな……そんなにすぐに出てくるようなことはないと」

《調べておきましたが、『侵雪』は一定期間ごとに街へ近づくんだとか。そのため、このような時は前に進み出て、一体でも多くの魔物を討伐するようです》

「するとどうなるんだ?」

《解放されて雪が止みます。また、最終決戦としてそのフィールドに居たボスが猛威を振るうようです。負けたら元に戻ります》

 やる気さえあればいいのか、一定期間はボスがスタンバイしてくれるらしい。
 しかも、挑む人数は無制限で誰が倒しても一定フィールドが解放されるんだとか。

 ──ずいぶんと優しいシステムだ。

「おっと、ようやく魔物……じゃないのか」

《アンデッドのようですね》

「そりゃあなんとも珍しいな」

『グオォォォォ……』

 アンデッドとの戦闘経験が少ないのだ。

 なにせ、ドローンさえあれば勝手に魔物だろうが屍だろうが掃除してくれるわけで……それはつまり、魔物との戦闘経験そのものが少ないように感じる。

「まあ、たまには戦うか。『SEBAS』、他の個体はさっさと成仏させてやれ」

《畏まりました》

 その言葉に、上空から光が降り注ぐ。
 太陽が顔を出したわけじゃない……どこからか光属性の魔力が溢れだし、潜むアンデッドたちを焼き殺したのだ。

 これがあれば一掃も簡単だったが、自分で戦うことも大切だろう。

「俺は……これでいいか」

『グォォォォ──』

「聖水入りお湯鉄砲」

『グォォォォォォォォォォ!!』

 おお、効いてる効いてる。
 すぐにお湯は冷えて水になり、アンデッドの動きを止める氷の棺桶になっていく。
 本来なら、そんなはずないのだが……ここはファンタジー世界の寒い環境だしな。

 氷の彫刻となったアンデッド。
 その現れた際の姿に関して『SEBAS』と話し合う。

「あれは……ここで死んだ者か?」

《いえ、正確にはその情念が負の力を糧に動き出した魔物です。雪で対象を包み、永遠の時を彷徨います》

「それじゃあ、中身は」

《居る場合と居ない場合があります……ですが、戦闘力が低かったことから、外側だけをコピーした個体たちだと判断しました》

 なるほど、過程が面倒臭い劣化版ドッペルゲンガー量産機……みたいなものか。

 雪という触媒が必要だが、アンデッドを生みだせるんだと……負の力、研究する必要がありそうだな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

処理中です...