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DIY、遥かな旅路へ
小さな豪邸
しおりを挟む必死に引き止めてくる『騎士王』。
なんで某有名な裁定の剣の保持者が、そのための交渉材料として焼き串を提案してくるのだろうか……いや、旨かったけどさ。
「見ての通り、私は忙しい」
「嘘を吐いている暇があるなら、さっさと国に帰って仕事しろ」
「今日は非番だ」
「王に非番なんてねぇだろ」
年中無休、二十四時間営業。
お国のために、その命のすべてを支払い働くのが王様の仕事である。
……つまり、外交でもないのにふらっとここに居る時点でアウトだ。
「とにかくだ。そんな私だが、個人で所有している物がない」
「そりゃあ、王の物は国の物だろう」
「この身に根付く力すら、代々受け継いできたモノ……つまりは王に与えられた、国がもたらしてきたモノだ」
「たしかに、そういう考えもあるな」
そもそも、『騎士王』という超越者名なところでお察しである。
騎士の王、それはつまり常に王として崇めらることで成り立っているということだ。
──成立条件がある、それが異常な能力の理由かもしれないな。
「そして、考えた……家が欲しいと」
「そこがおかしい。急すぎるだろう」
「どこかで聞いた話だが、部屋には個人の性格が表れるのだろう。だが、王が自由にできる場所など無い……ならば、創ってもらえばいいではないか」
「……いちおう、意味は分かった」
部屋が無いなら家を造ればいいじゃない。
なんてマリーさんな考え方だよ……。
「要するにだ。家じゃなくとも、好きにできる場所があればそれでいいんだろう?」
「そういうことだ。たまには『円卓の騎士』に邪魔されず、自由な時間を過ごしていたいものだ……」
「現在進行形で俺の妨害をして、そんな真面目な『円卓の騎士』たちが来ないようにしているのはどこのどいつなんだか」
「──と、いうわけだ。謝礼は払う、だから私に家を建ててくれ」
◆ □ ◆ □ ◆
「ハァ……」
結論から言えば、それを引き受けた。
だが、普通の家は用意しないと念入りに忠告したので、どれだけユニークな家でも文句は言われない。
「こっちは適当でも質がよければ構わない。『SEBAS』、例の物は?」
《完成しております》
現れたのはオモチャの家、ミニサイズに加工された豪邸である。
ただ、まだ色が塗られておらず、完全に木の色だ。
「あとは色を付けて……はい、完成」
ちなみに、天然の素材だけで作った塗料という裏設定もあるが、別にどうでもいいか。
あまり派手すぎず、地味すぎない色に加工して、塗料を用いた特殊コーティングを済ませて完成である。
──シルバーニアのファミリーみたいな家な気がする。
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