虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
553 / 2,831
DIY、再会を果たす

裏五天談 その01

しおりを挟む


 再び舞台は生産ギルドの中。
 話の分かる表の皆々さまの前ではリーダー面をしたが、父親の威厳というあったとしても無きにしも非ず状態な現状から鑑みて、下手に出ない方がいいということになった。

『まあ、これはこれで待ちぼうけをくらう彼氏彼女の片方みたいになってるけど』

 今の俺は、髑髏の紋様を刻んだ椅子に座っているように投影されている。
 ……現実でそんな椅子が有っても、絶対に座らないんだろうな

『そもそも三人以上集まるんだろうか。表にも帰還時に送れただろうけど、お土産がありますって情報をサプライズにしたからな』

 強力な武器などはアウトだし、そもそも渡してある『闘天ショウ』たちには必要ない。

 無難な品ということで、各種ポーション詰め合わせセットと携帯食料を収めた魔道具を渡しておいた。

『さて、まずは誰からかな?』

 ここは無難に『孤天』が来てくれるとありがたいんだが……確率は三分の一、俺は俺を信じる!





 ──運はルリに任せておくべきだった。
 というか、さっき逢った恩恵がちょっとぐらいあってもいいのに、まったくと言っていいほどに効果がない。

 それほどまでに、俺自身の運が低いのかもしれないな。

『…………』
『…………』

 先ほど確率から抜いていたことから分かっていると思うが、替え玉担当『SEBAS』ことセバヌスは俺が要請をすればすぐに駆けつける。

 だからこそ、まだ待機してもらっていた。
 故に、今居るのはその二人じゃない。

 魔法使い風だった『魔天』とは違う、闇に溶け込みそうな外套を被っている。
 歳は十五、六ぐらいだと思うが、初期設定でどうとでもなるので俺では判断に欠けてしまっていた。

 ここで『SEBAS』が居れば、重心などの観点から当ててくれただろうけど……先も挙げた通り呼ぶわけにはいかない。

『…………』
『…………』

 だからこそ、沈黙これは起きていた。
 互いに何か話すことがあるわけでもなく、最初に『どうも』と言うだけで終わった。

 気まずい、が今の俺にどうにかする手立てもないんだけど。

 必要以上に声をかけ、相手の機嫌を損ねたらお仕舞い……裏の五天たちとはそういった存在であることを意識しなければならない。

『な、なかなか、来ませんね……』

『……だね』

 挨拶を返してもらったときに分かったのだが、俺の聴力に問題がなければこの『天』は女の子だろう。
 つまり、『孤天マイ』と友達になれる可能性を秘めているということだ。

 できるなら、そっちの方を頑張ってもらいたいと思うのはいけないだろうか?
 ──張り切りすぎな父親も、かなり引かれるパターンかもしれない。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷

くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。 怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。 最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。 その要因は手に持つ箱。 ゲーム、Anotherfantasia 体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。 「このゲームがなんぼのもんよ!!!」 怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。 「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」 ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。 それは、翠の想像を上回った。 「これが………ゲーム………?」 現実離れした世界観。 でも、確かに感じるのは現実だった。 初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。 楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。 【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】 翠は、柔らかく笑うのだった。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...