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DIY、再会を果たす
表五天談 その01
しおりを挟むそこは誰もいない個室だった。
部屋ギリギリの大きさで用意された巨大な円卓と、一定距離に並べられた五つの椅子。
それ以外には何もなく、使われていない静寂感が場を支配していた。
『……ここ、かな?』
その声は、部屋の入り口から聞こえたものではなかった。
椅子の一つ、剣の紋様が施された物が光を放ち何かを投影する。
声はどうやら、同じように設置された装置から流されていたようだ。
『暗い部屋だな。どこかにスイッチが有ったとして……押せるのか?』
少年のような姿をしたソレは近くに在った机に触れようとして──すり抜ける。
何度やっても机に接触できず、ぶんぶんと手を振るだけの結果に終わった。
『ホログラムだっけ? なんだか一人だけ、違うゲームをしてるよな』
この場を設けた一人の男性を思い、複雑な感情が入り混じったため息を吐く。
そうこうしていると、別の椅子──十字架の紋様が施された物の投影装置が起動する。
『あら、私は二番目なのね』
『今日はやることがあるって、先に伝えておいたんだ。だから速いんだよ、かあ……『援天』さん』
『ふふっ、ちゃんと言えたわね。せっかく決めたことだし、最後までやり抜きましょうよ『闘天』さん』
『……なんか、しっくりこないな』
普段とは異なり呼び方に違和感を覚える少年──『闘天』だったが、『援天』は笑みを絶やさずに別の呼び方を否定する。
慈母のような綺麗な笑顔を浮かべる大人の女性は、ただ綺麗だけと思わせないナニカを放っていた。
ママならないなぁ、と思い渋々慣れようと思ったそのとき──別の椅子が光りだす。
『この椅子は……『魔天』ね。バッチリ装飾されてるじゃない。あっ、私のも』
『本当だ、これ貰ってもいいかな?』
『そうね、あとで相談してみましょう』
などと会話をしていると、『援天』の言った通りの椅子──杖の紋様が刻まれた椅子の投影装置が作動する。
現れたのはローブ姿の男。
分かりやすい典型的な魔法使い、といった格好でこの場の様子を窺う。
『……って、やはりお前なのだな。今度は回復役として夫のサポートか。いつもいつも、頂点にはどちらかがいるよな』
『あら、まさか貴方も来るなんて……運命ってあるのよね。このゲームだと、どんな名前でやっているの?』
『いつも通り、『ローム』だよ。だがまあ、今回ぐらい『魔天』と呼んでくれ。そっちの少年も……って、もしかして息子か?』
『かあ……『援天』の息子です』
ペコリと頭を下げる『闘天』。
その辺の礼儀はしっかりと教え込まれているので、目上の者にはちゃんと挨拶をする。
それから少しの間、残りの二人が到着するまで積もる話をしていく大人二人。
残る席は二つ──いったいどんな人が来るのか、そしていつ来てくれるのかと『闘天』はわくわくしながらそれらを見ていた。
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