524 / 2,791
DIY、試練を受ける
当千の試練 その12
しおりを挟む「おー、温かいな」
《手袋による防熱効果にございますね》
「そりゃあ知ってるけど、まさかマグマでも同じように効くとは思わないだろう……」
とっさに両手で抱え込んだ大きな球体。
ミラーボールぐらいはありそうなそれは、つい先ほどスライムから奪った核である。
転移技術を応用し、観測に成功した物をどこからでも取り寄せる……抵抗される可能性はほぼなく、たとえ敵の心臓であろうと観測できれば手に入れることができるのだ。
「そして、そんな心臓部分を失ったマグマのスライムは……ドラゴンの形なんて当然取れなくなって、ドロドロに解けていくっと」
張りのあったボディはボコボコと泡を吹き出し、なんだかバブルタイプのスライムに変化しているのだが……それは置いておこう。
いずれにせよ、もう勝敗は決した。
核を奪われた魔物に、戦う力は残らない。
「ただし、かなり粘ります」
《強引な干渉でしたので。少なくとも、数十分はこのままとなるでしょう》
「こればかりは仕方ないだろう。まあ、俺も大人しく待つさ」
最後の抵抗とばかりに、スライムはそのボタボタと零れるマグマを俺に伸ばしてくる。
おそらく核を取り戻そうとしているんだろうが、すでにポケットを通じて転送をしてしまったからそれは不可能だ。
「水でも散布して、涼しくしてくれ。それまでは避暑でもして休んでいるからさ」
《畏まりました》
そういって結界を構築し、お茶でも飲もうとしていたのだが……世界が突然色褪せ、俺の足元に魔法陣が展開されていく。
「──さて、行きますか」
驚くようなことはない。
すでにこの現象は体験済みだし、何より必ず起きると予測していたことだ。
いっさい抵抗する必要もなく、あるがままに受け入れれば良い。
そして俺は──光に包まれる。
◆ □ ◆ □ ◆
???
「ここは……神様ごとに、支配する空間の構造も異なるのですね」
『当神の趣味嗜好もそうだが、何より権能と性質がそれを決定づける』
「なるほど。そして貴方様が、この場所を支配する神様であると」
かつて出会った死神様のように、その姿はふわふわとした球体だ。
だがその色は夜のような闇色ではなく、目に優しい肌色であった。
『可能な範囲で情報を開示するのであらば、オレは獣の神に該当する。それが何なのか、人であるお前には説明できない』
「ええ、お気になさらず。分を弁える必要があることは理解しておりますので」
『ならばよい。ある者たちに頼まれ、お前を試していた。この箱庭は、オレも管理者として創造に加わった場所だ。少しであれば、権限が無くとも干渉ができる』
そして、獣の神は語る──
『試練は果たされた。お前は合格だ』
11
お気に入りに追加
650
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる