虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
498 / 2,809
DIY、地平線を拝む

バトルロイヤル その10

しおりを挟む


 ロボット兵たちが暴れ回った結果、休人は死を逃れるために安全域へ引き籠もった。
 一時は結界内からの攻撃を試みようとする者もいたが、それが無意味だと分かってからは、ほとんどの者が破壊を諦める。

「これで任務完了っと」

《旦那様、撤退を行います》

「ああ、それでいい……あっ、もう一通の手紙をみんなの所に置いてくれよ」

《ご安心ください、すでに手配を済ませております》

 さすが万能執事AIの『SEBAS』。
 俺が考えていたことを、俺以上の速さで実行してくれる。
 本当、俺にはもったいないヤツだな。

「しかし、『滅火の一日』とはずいぶんとまあ面白い名前だな」

《掲示板によりますと、『メッカ』とかけたようです》

「……名前は知ってるけど、それとどう関係しているんだ?」

 そこも抑えている『SEBAS』による解説では、メッカで崇められるイスラム教では地獄のほとんどに炎が使われているらしい。
 誰が最初にそう決めたかは分からないんだが、ロボット兵が生みだした惨劇が地獄だということでそういう名前になったとのこと。

《イベントも間もなく終了時刻となります。旦那様の優勝は、間違いなく成ります》

「まあ、ロボット兵の所有者が俺になってるからそうなるよな。やっぱり最後の雷をシメにした方がいいか」

《では、さっそく準備を行います》

 スーパーAIはすでに天空の城を完全に掌握しているのだから、下の大量破壊兵器も当たり前のように行使可能となっていた。
 少し時間が経つと、軽く地面が揺れ──何かを溜める音が足元で響き始める。

《プラズマカノン──『天の雷』発射可能時間まで……あと六十秒》

「いや、早くない!?」

《まだ使用しておりませんので、少し整備に手間がかかっております。以降は三十秒での装填が可能となるでしょう》

「そ、そうか……」

 わーい、はかいへいきだー。
 などと頭を空っぽにして忘れることもできないまま、時はあっさりと過ぎた。

《充填完了。旦那様の音声コマンド入力を確認後、『天の雷』を起動します》

「座標確認、誰もいない……生命体もいない場所だよな?」

《はい。旦那様のご指示通り、すでに結界も用意してあります。自然への影響もいっさい無いように準備は整えました》

「ああ、守護者に睨まれると厄介だ。それはどの世界でも変わらない、常識ということで定義しておいてくれ。いくぞ──『見せてあげよう、天城の雷を』!」

 少しオマージュした台詞を述べると、城は激しく揺れ動く。

 それは天が哭いた音なのだろう。
 強烈なプラズマが大気を焦がし、地上に破壊をもたらしたのだから。

「ふぅ……さて、どうなってるかな?」

 ドローンを近くに飛ばしてあるので、状況確認はちゃんとできる……ああ、結界がしっかりと残っていればいいけど。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

処理中です...