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DIY、地平線を拝む
野生児 その09
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ちょうどスタート地点から十区画離れた場所に、それは存在していた。
「……街、ですね」
「そうだ!」
正確に言えば都、なんだろうが……。
巨大な壁で覆われた街が、区画に入ってきた俺たちの視界に入る。
「ヤー君はあそこに住んでいたんですね?」
「うん!」
「それはいつからのことですか?」
「気づいた時から、からだぞ」
つまり、野生で生きてきたわけではない?
じゃあ、なんで【野生王】なんだろうか。
生まれつき、そういう職業に就いているというのもあるのか? こればかりは必要性を感じなかったから訊いてないんだよな。
「せーじゃ、早く行こう!」
「ええ、分かりました」
しかし、入場とか大丈夫だよな?
いちおうエウスト(布の町)にもちゃんとは入れたし……イケるよな?
逸る思いでいっぱいのヤーは、俺を押しだしてどんどん街に向けて進んでいく。
死んで死んで死に続けて……それが収まるのは、入場門に近づいてからのことだ。
◆ □ ◆ □ ◆
「おおう……」
「どうかなされましたか?」
「いえ、なんでもありません──はい、ギルドカードです」
「確認させてもらいます」
俺は今、複雑な心境でいる。
渦巻く感情のままに動きたいが、ヤーも見ているため苛烈な行為はできないという、理性によって維持された複雑な想いだ。
「ねえ、ヤー君。街にはああいう人がいっぱいいるのかな?」
「そうだ! トー様もそうだぞ!」
「そうなんですか! 凄いですね!」
会話も『!』でいっぱいだ。
それぐらい嬉しいというか、盛り上がるというか……うん、喜びの感情である。
「お待たせしました。入国に問題はございませんでしたので、入国を許可します。ギルドカードは返却しますね」
「はい、ありがとうございます」
「そちらのお子さんは……お連れですか?」
「え、ええ、そうです」
ヤー君曰く、こっそり抜け出したからバレたくないとのことで……千苦にも使わせた魔道具で偽装を施している。
「お子さんが街の中で問題を起こしたら、責任は保護者である貴方に向かいます。それを充分承知してくださいね」
「はい、分かっています」
俺の返事に納得すると、入門官は笑顔を浮かべて告げる──
「ようこそ、獣人の国『アニスト』へ!」
そう、ヤーの住んでいた場所とは獣人たちの楽園アニスト。
モフモフとモフモフ、それにモフモフに溢れた真のエデンだったのだ。
うん、モフモフがいっぱいと言われてなんとなく動物系をイメージしていたが……まさか獣人の国だったとは。
──ヤー、いったい何者なんだろうか。
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