469 / 2,733
DIY、地平線を拝む
野生児 その06
しおりを挟むN5W4
「──うーん……見たこと、ある、ぞ?」
再び緑が広がってきたその場所で、ついにヤーはそんなことを言いだした。
フィールドの入り口に入ったばかりで、その先には──渦巻くキューブがある中。
「そうなのですか?」
「気配が似てる。けど、少し違う?」
「……きっと、アレのせいでしょう。私のような者が居ると現れます」
そう言って、キューブを指し示す。
それ以外の理由が特に思い浮かばないし、違うのであれば勘違いだったのだろう。
ドローンを飛ばして調査には向かわせているものの、キューブのせいで奥には向かえていない……倒すしか、ないのかな?
「ヤー君、少し休んでいてください」
「せーじゃは、どうするんだ?」
「少し、淀みを晴らしてきます」
「なら、手伝うぞ!」
これまで単独活動しかしてこなかったわけだが、当然このゲームにもパーティーシステム的なものは存在していた。
こちらの世界の者ともそれは可能で、さまざまな便利機能が使えるようになる。
──王の職業持ちは使えないみたいだが。
何か特別なシステムがあるようで、申請も自動的に弾かれるようになっている。
予めなるかどうかを訊いてみたんだが、できないと言われていたので……きっとそういうことなのだろう。
「いえ、私だけで行います。ヤー君は参加できないらしく、戦いが始まれば結界でその場から追いだされますので」
「そっかー……分かった」
「先ほどヤー君が倒した魔物であれば、すでに調理しておきました。ヤー君に渡しておきますので、それでも食べて待っていてくだ」
「──分かった!」
ずいぶんとイイ返事だ。
というか、その言葉を聞きたかったのではないかと疑ってしまうな。
◆ □ ◆ □ ◆
「まっ、それでもやるんだけどさ」
遠く離れた場所で、ヤーは食事をしながらこちらを見ている。
一挙一動を監視され、少しばかり気が重いのはなぜだろう。
「……というか、最近は縛りプレーが多い気がするな。なんでこう、思う存分力が振るえる機会がないんだろう」
《どうなさりますか?》
「遠隔狙撃もバレるだろうし、また何か別の方法でどうにかするしかないんだろうな。誰かの動きを再現して、結界を纏わせてぶん殴ればそれでも倒せるだろうし」
《畏まりました》
キューブは前に見た時と同じように、脈の蓋をするように配置されている。
ヤーが違和感を感じたのは、おそらくそれが原因なのだろう。
「淀みをどうにかすれば、ヤーはここが正しいのかどうかを判別できる。違っているのであれば、一度場所を変えるかな?」
《ドローンの活動範囲を増やせますので、一度調査を行いましょう》
「ありがとう。なら、結果が分かるまではもう少し西に、次のスポットに当たったなら一度東に向かおう」
なんてことを話しつつ、俺はマジックハンドを動かしてキューブに触れた。
10
お気に入りに追加
643
あなたにおすすめの小説
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。
何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる