454 / 2,835
DIY、闇に潜む
革命 その19
しおりを挟む「ただいま、でしょうか? とにかく、戻ってまいりました」
「……あのあと、いったい何があった」
「少しばかり【暗殺王】さんとお話をして、仲を深めただけですよ。英雄様のように、深いことは考えておりませんので」
実際、そんな話だっただろう。
僅かにブラックな要素も含まれていたものの、最終的に暗殺に関する事柄へ対する決まりを設けることができた。
──要するに、以降は殺されないわけだ。
「ところで、魔道具の方はどうですか? 正常に稼働しているとは思いますが……」
「今も稼働しているぞ。飢えに苦しむ者はたくさんいる……だが、『生者』の協力のお蔭でそれもずいぶんと減った!」
「それはよかったです。何より、少し雰囲気が明るくなりましたね」
「そ、そうだろうか……?」
活気に溢れる、と言った方がよかったか?
老若男女問わず、もともと死にたくはないが動く気力がなかった者たちは動けるようになっている。
エネルギーを省エネする必要がなくなったが故に、剽軽者たちが場を盛り上げてくれているのも理由の一つだろう。
「英雄様、私は貴方に言っておかなければならないことがあります」
「い、言っておかねば、ならない、こと?」
なぜ区切ったかは分からないが、それよりもちゃんと言っておかねば。
「革命も一段落しましたし、私はこの場から去ろうと思いまして……」
「…………そうか」
「皆様の食糧問題は解決できましたので、また私を必要としている場所へ向かうことにしました。申し訳ありませんが、英雄様とはここでお別れです」
「君は、商人なのだ。本来であれば、それが普通であろう」
何かを堪えるように、ギュッと拳を握りながら英雄はそう語る。
だいぶ商品を売ったし、そろそろゆっくりしたくもなってきた。
タクマ? ああ、もう会ったぞ。
どうせ俺が動けないこともあって、タクマの方に闇厄街へ来てもらうことで問題は解決だった。
……俺が一部、物知り顔をしていたのもそのためだ。
「せ、『生者』は次にどこへ?」
「そうですね……一度街を離れ、地上でいくらか商品を揃えてくるつもりです。しばらくしたら、またこちらにもお世話になります」
「そ、そうか……また、来るのだな」
「ええ、ですのでこちらを」
渡したのは、名刺のようなカードだ。
現実であればそれは名刺そのものだが、こちらの世界でそんな陳腐な品を流行らせようとするわけもなく──
「ご必要な品があれば、そちらの魔道具でご連絡ください。また、構造を解析し、コピーすれば連絡用の魔道具を複製できます」
「そ、そのような品を……いいのか?」
「もちろん、英雄様に渡した品以外は劣化してしまうのでご注意を。魔力による連絡ですので、盗聴も可能となってしまいます。あくまでそれを想定しての用途でお願いします」
「あ、ああ……分かった」
この後少しやり取りをして、俺はこの場を去った……闇厄街を去ったのではないのは、まだ他に会うべき人が居るからだ。
11
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

婚約破棄?一体何のお話ですか?
リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。
エルバルド学園卒業記念パーティー。
それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる…
※エブリスタさんでも投稿しています

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。


「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる