419 / 2,812
DIY、闇に潜む
情報ギルド その12
しおりを挟む「──完成だ。受け取れ」
何か書類作成系のスキルでも持っているのか、手を使わずに目を瞑っていた【情報王】の目の前に、紐で縛った紙筒が現れる。
それを解いて中身を検めると、【情報王】はポイッと俺にそれを渡す。
「ありがとうございます。では、私も改めましたら情報をお教えしましょう」
「待て、先に解除の方法を教えろ」
「私の手元から現物が離れた今、解析を始めているのでしょう? 一方私は、まだ検めることすらしていません。これは少し、不平等ですよね」
「……好きにしろ」
そう言ってくれるなら、好きにしないと駄目だな。
紐を解き、紙を広げて情報を調べる。
首の巻いたチョーカーを介して、記された情報は『SEBAS』に送信される……正しいかどうかなんて、すぐに分かるのさ。
「おや、私でも思い当たるようなご職業の方の情報が無いですね」
「……何が無いというのだ」
「【魔王】、そして【勇者】です」
「【魔王】は売れる程の情報は無い。文献を漁れば出る程度だ。【勇者】は代々能力に違いがあるから料金が足らん。知りたいなら、対価を払え」
ふーん、そういうものなのか。
たしかに【魔王】は『騎士王』が教えてくれた分の情報で充分だし、その気になれば直接訊けばどうにかなる。
だが【勇者】、そちらは知っておきたい。
この世界に【魔王】が居れば、対の存在として必ず存在するだろう【勇者】。
○○の勇者、とかいう称号でいくつか能力に変化があるのかな?
「──そうですか。では、隠蔽の解除法をお教えしましょう」
「それが対価とはならんぞ」
「ええ、結構です。別の人物に情報を求めますので」
そう言って、スラスラと『SEBAS』から確認しておいたやり方を説明する。
黙って聞く【情報王】ではあるが、物凄い殺意を隠していることを死亡レーダーが教えてくれた。
「──以上です。何か質問はありますか? 無ければ今日のところは失礼しますが」
「……私に、それを尋ねるのか」
「えっ、何か仰りましたk──」
バンッ、と机に手を叩きつけて【情報王】がキレる……カルシウムが足りないんだな。
「この俺が、情報を尋ねることなどあるわけないだろう! あらゆる情報は、すべて俺の下に自然と集まり、支配下に入る! 貴様ら星渡りの民とて同じだ! やがてこの街を俺が支配したら、そのすべてを晒してやる!」
「……それだけですか? では、私はこれで失礼します」
そう言って、扉に手をかけて──クルリと後ろを向いてもう一言だけ。
「では、賭けをしましょう。貴方以外の誰かがこの街を支配した時、私はある情報を街全体に伝えます。それでもなお、貴方が私に教えを乞わないのか……」
11
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる