407 / 2,791
DIY、闇に潜む
命乞い
しおりを挟む「君が……新たな『超越者』かい?」
「……フラグ様め」
明らかに強そうな礼装の女性が、これまた強そうな男たちを引き連れて俺の下を訪れてこう告げた。
経緯は──ログイン→【情報王】の元へ訪れようとする→ここだ。
うん、まったく意味が分からない。
目の前の女性は、背中に布に包んだ槍のような物を背負っている。
顔は……どうやら認識阻害が施されているようで、はっきりと確認できない。
あくまで女性だと分かったのは、『SEBAS』による報告があったからだ。
「人違いではないでしょうか? 私には、貴方が何を言っているのかさっぱりです」
「……そうなのか?」
「はい」
すると、後ろの男たちの方を向き「は、話が違うではないか……」などと揉め始める。
確証がないなら、接近しないでほしい。
いやまあ、当たってるのだから口に出して言うことではないけど。
「だ、騙したね……」
「なんのことでしょうか?」
首を傾げ、いかにも分かりませんよアピールをしておく。
少しだけ顔を赤くし(たように思えた)、女は声を荒げる。
「と、とぼけないでほしい、君が『超越者』であることは裏が取れているんだ。もう一度聞くよ──『超越者』だね?」
「えっと……『超越者』ってなんですか?」
「ふっ、まだ誤魔化すかい? 人の理から外れた、人智を超越せし者……それが君の正体なのだろう!」
ビシッと指を差してくる。
後ろで見ている男たちは、なぜだか拍手をしている……なんか、仲良さそうだな。
「本当に……そう思われますか? 私が、そのように」
「…………と、当然さ」
物凄く目を逸らしながら答える。
彼女からすれば、証拠も無いのに誘導して真実を求めているだけだからな。
いかにも、と言えるような力強さを感じられない俺を『超越者』だとは思えないのも仕方がない。
「そうですか……ならば、私も相応の対応で貴方がたに帰ってもらいましょう」
「! そ、そうかい……なら、やってもらおう──はっ?」
「私のような弱者、どうかお見逃しくださいませんか? たしかにカジノでいくらか儲けましたが、そのすべてを支払います……なので、どうかお許しを!」
ジャパニーズドゲザ!
日本の文化が生みだした、最上級の謝罪を行ってこの場を逃れようとする。
……お前が面倒事を起こそうとするのは、その存在感とこれまでの勘が教えてくれた。
「どうか、どうか御慈悲w──」
「……充分だ。もう、分かった」
頭を下げたままなので、彼女がどういった表情を浮かべているかは分からない……どうせ認識偽装で見えないけど。
だが間違いなく、軽蔑や侮蔑の顔をしているんだろうな。
「みんな、戻るぞ……彼は、私たちの目的には関われない」
クルッと後ろを向き、どこかへ去っていく彼女たち一向。
やれやれ、いったい何者なんだか。
11
お気に入りに追加
650
あなたにおすすめの小説
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
なんか黄金とかいう馬鹿みたいなスキルを得たのでダラダラ欲望のままに金稼いで人生を楽しもうと思う
ちょす氏
ファンタジー
今の時代においてもっとも平凡な大学生の一人の俺。
卒業を間近に控え、周りの学生たちは冒険者としてのキャリアを選ぶ中、俺の夢はただひとつ、「悠々自適な生活」を送ること。
金も欲しいし、時間も欲しい。
程々に働いて程々に寝る……そんな生活だ。
しかし、それも容易ではなかった。100年前の事件によって。
そのせいで現代の世界は冒険者が主役の時代となっていた。
ある日、半ば興味本位で冒険者登録をしてみた俺は、予想外のスキル「黄金」を手に入れる。
「はぁ?」
俺が望んだのは平和な日常を送るためだが!?
悠々自適な生活とは程遠い、忙しない日々を送ることになる。
【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました
鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。
だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。
チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。
2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。
そこから怒涛の快進撃で最強になりました。
鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。
※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。
その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職
鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』
倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。
……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。
しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。
意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。
小説家になろう、カクヨムにも掲載
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる