虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
375 / 2,812
DIY、闇に潜む

アジト その01

しおりを挟む


 それからしばらく、『拳王』の案内の下で暗躍街を移動することに。

「『生者』、気をつけろよ。……狙われすぎじゃないか?」

「ええ、まあ。体質、でしょうか?」

「……単に弱そうだから、ってのもあるかもしれねぇな。お前、本当にオーラを感じねぇし。鍛えろよ」

「呪いのようなもので、肉体的に強くなることはほぼないんですよ。だから、私はこのままなんで……っとと、またですか」

 何度目だろうか。
 隣に最強のボディーガード──『拳王』が居ようと、俺のアイテムを狙ってくる。

 最初は対処してくれそうだったのだが、必要ないのでそれは止めてもらった。
 恩として扱われるのもアレだし、そもそも対策はこっちで行っている。

 彼らにも彼らなりの事情があるのだし、あまり残酷なことはする気がない。
 ドローンで暗躍街の情勢は調べているものの、まだすべては調べ尽くしていないのでどうにも判別に困る。

 通り魔などには遭遇せず、あくまでスリだけなのだが……そこに理由があるのかな?

「あの、『拳王』さん」

「ん、どうした『生者』?」

「貴方の領土? という場所で、こういったことは行われるので?」

「んにゃ、そんなことさせねぇよ。基本、俺の領土は力がすべてだ。『賭博』に闘技場も用意させてあるから、だいたいのことは拳一つで解決できるぞ」

 つまり、アングラファイトで稼ぐこともできるってことか。
 たぶんだが、金以外の物もここでなら賭けれるだろうから何でもいける。

 ん? もしかして、だが……

「まさか、『拳王』の座も──」

「当たりだ。よく分かったな。『拳王』の条件は最強たれ──少なくとも、この街で最強にならねぇと『拳王』は無理だぞ」

「そうですか……というか、掛け持ちできないのでは?」

「普通は無理だな。だが、世の中には裏の道というものがある。【魔王】だって、いくつかの権能を使えるんだ。──そして、ここは裏に知り尽くした者が集まる暗躍街……求れば、何でも手に入るさ」

 俺も【魔王】の細胞を抽出して、似たようなことをできるようにしてある。
 だいぶ精度も向上し、質を下げれば常時維持もできようになった。

「……まっ、今は俺のアジトまで連れていくことを優先するか」

「アジト、ですか……」

「まあ、そんな大層なもんでもねぇけど……俺の部下たちの紹介でもしてやろうか?」

「いえ、そちらは遠慮しておきます。私の戦闘力は低いので」

 よくある、実力を見せてもらおう……なんてことになってはまた死んでしまう。
 安全第一、力がすべてのエリアでそんな思いは通用するだろうか。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

処理中です...