上 下
364 / 2,793
DIY、闇に潜む

第一権限 その08

しおりを挟む


 レムリアには、とりあえず『アイプスル』へ先に向かってもらった。
 どうせ俺は集めた品を発送する必要があるので、冥界の地下の扉から帰る予定だ。

「『SEBAS』、解析は?」

《すでに終わっております。──座標指定、目標冥界の扉前……で、よろしいですか?》

「ああ、頼む」

 黒霧の解析が終わったため、帰りは楽に転位で帰ることができる。
 ……むしろ、それができなきゃいったんログアウトしていかもしれないな。

 細かい座標に関しては『SEBAS』に任せ、俺は転位が発動するのを待つのだった。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「なるほど……苦労したようだな」

「最悪、一つは素材を持ち帰ろうとしたんだが……それしかなかった。植物とか、何か自然に発生するものはあそこにないのか?」

「あそこは冥界の中でも深淵に近き場所。生命は存在を否定され、生まれる可能性を根本から断たれている。本来であれば、この虫のようなモノが番人をしているはずだが……ご苦労だったな」

 門から脱出した俺は、そのまま謁見の間へ向かった。
 集めておいた素材はその前に衛兵に渡しておいたので、その一つを今『冥王』はちゃんと受け取ったのだろう。

「特に黒い霧が厄介だった。生命力、魔力、精神力のすべてを奪おうとするもんだから、虎の子を使うしかなかったんだぞ」

「ほう、『生者』の虎の子ね」

「調べれば分かることだから言っておくが、『龍王』さんの結界を俺なりにアレンジしたものだな。強度は劣るが、コスパで言えば俺のヤツの方が優れている」

「結界……なるほど、それで肌に霧が付着することを防いだのね」

 結構使っているので、魔力を可視化することができる人ならすぐに見抜ける。
 いちおう透明にもできるんだが、それすらも見抜ける──いわゆる上には上がいるのだからどうしようもない。

 科学的なバリアが生みだせれば、良かったのだが……そんな宇宙世紀にでもならないと生まれない技術は、あいにく持っていない。
 あくまで『龍王』さんの結界を元にした、改良を重ねた結界だけで生きている。

「……まっ、そんなわけだ。探索もできたから俺はそれで充分だ。行きたくなったら、また行ってもいいか?」

「まあ、いいわ。もう一度訊くけど、魔物はこの虫以外にはいなくて、黒い霧とやらが厄介。それ以外に伝えることは無いのね?」

「ああ、他に魔物もいなかったし厄介な環境効果も無い。対策だけしておけば、たぶん大丈夫だろう」

「……そう、ならもういいわ。帰ってもいいわよ」

「そうか。ならそうする」

 嘘を見抜くスキル、そんなものもある。
 だがそれは魔力を伴うし、相手にそれをぶつけなければいけない。

 俺の嘘を暴くには、自力が必要なのだ。

(だが、現代社会において嘘ではない嘘を吐き続けた俺に、そう不覚はないさ)

 そんな必要に応じて身に着けてしまったPSのことを思いながら、謁見を終わらせるのだった。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

チートなガチャ運でVRMMO無双する!?~没入型MMO「ラスト・オンライン」

なかの
ファンタジー
「いきなり神の剣が出たんですけど」 僕はチートなガチャ運でVRMMO無双する!? 330万PV(web累計)突破! 超大手ゲームメーカーの超美麗グラフィックな大型RPGの最新作「ラスト・オンライン」 このゲームは、新技術を使った没入型MMO、いわゆるVRMMOだった。 僕は、バイト代をなんとか稼いで、ログインした先でチートのようなガチャ運で無双する!! 著/イラスト なかの

最強と言われてたのに蓋を開けたら超難度不遇職

鎌霧
ファンタジー
『To The World Road』 倍率300倍の新作フルダイブ系VRMMOの初回抽選に当たり、意気揚々と休暇を取りβテストの情報を駆使して快適に過ごそうと思っていた。 ……のだが、蓋をひらけば選択した職業は調整入りまくりで超難易度不遇職として立派に転生していた。 しかしそこでキャラ作り直すのは負けた気がするし、不遇だからこそ使うのがゲーマーと言うもの。 意地とプライドと一つまみの反骨精神で私はこのゲームを楽しんでいく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載

運極さんが通る

スウ
ファンタジー
『VRMMO』の技術が詰まったゲームの1次作、『Potential of the story』が発売されて約1年と2ヶ月がたった。 そして、今日、新作『Live Online』が発売された。 主人公は『Live Online』の世界で掲示板を騒がせながら、運に極振りをして、仲間と共に未知なる領域を探索していく。……そして彼女は後に、「災運」と呼ばれる。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!

yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。 だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。  創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。  そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

処理中です...