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DIY、闇に潜む
友好
しおりを挟むアイプスル
「ギルド長の狂乱が不味いな。お香でどうにか耐えてくれればいいんだけど……」
《どうでしょうか。旦那様がこれからも、これまで通りの振る舞いを続ければ、あるいは大狂乱に至るかと……》
「そりゃあ危険だな。各生産ギルドを巡って信頼できる奴を見つけておくべきか? あんまりいないと思うが」
頭だけが良い奴も、ただ人の言うことを鵜呑みにする奴も必要ない。
性別不詳を未だに貫くあのギルド長こそ、俺の求めるベストなビジネスパートナーだ。
それを失うのはとても不味い。
最悪、了承を得てクローンギルド長を用意してもいいのでは? と思うぐらいには、俺の計画が頓挫してしまうだろう。
《そこまででしょうか……》
「というか、そのまま死なれてアンデッドになって情報を漏らされても困るしな。優秀な人材をスカウトするって意味じゃあ、ある意味ギルド長は適任だ。……これも、俺が直に接したからそう思うだけかもしれないが」
オンゲーでも、そうした繋がりを大切にしていたからか?
ゲームの中で縁を結んだ相手は、できるだけ友好的に接することを心がけている。
厚意には厚意を、悪意には悪意を。
握手を交わした者と武器を交わした者では扱いなど異なるだろう。
俺の場合……ランダムプレイのせいで、それが何度もあったからな(遠い目)。
「ギルド長の件はとりあえず放置で。秘書の方に対策をいくつか授けておいたから、それはどうにかなるだろう」
《では、別のギルドの下へ?》
「うーん、ショウやマイがそのことを迷惑と考えては困るからな。家で訊くよりこっちで訊きたいし、再会したら対応するギルドに挨拶しに行こうか……たぶん、関係者って言うだけで相手から飛びだしてきそうだ」
嘘だろうが本当だろうが、超有名な休人の知り合いというだけで眼を向けなきゃいけないのが社会の業というものだろうか。
──違っていた場合のリスクが、半端じゃないからな。
「探そうとしても探そうとしなくとも巻き込まれる『超越者』、そうでなくとも異常な能力を持つ【魔王】、そして……世界を色んな意味で掻き回す休人たち。三つ目だけは俺が直接関わっているわけじゃないけど、俺自体が休人だしな。どうするべきか……」
《アイプスルの改善はこちらで行えます。旦那様にしかできないこと、というものは現在ございません》
「そっか……どうせふらふらしてたら、何かトラブるし……よし、あそこに行くか」
行こうと思っていたが、行くのを止めていたとある場所。
俺はそこへ向けて、転位装置の座標を指定するのだった。
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