上 下
353 / 2,721
DIY、闇に潜む

疲労限界

しおりを挟む


 と、いうわけで一度初期地点へ戻った。
 生産ギルドは相も変わらず冷たく、依頼があるかを尋ねても一蹴されてしまう。

「──なあ、本当に無いのか?」

「ありません、ございません、存在しませんので、ギルド長の下へ向かってください」

「……ハァ」

 トボトボと、しょげるオーラを出しながら移動を開始する。
 ……だがしかし、誰も同情しない。

 冷たいよ、世界が。
 いつまで経っても依頼は受けられず、クエストも最近はまったく起きていない。
 というよりも、『超越者』絡みのイベントが多すぎて疲れたな。

 最近は新しく【魔王】と『◯天』という面倒事の種が増えたし、本当に直接会うのは久しぶりだ……仙人たちとの一悶着以降か?



 結論から言おう──壊れてた。

「あっ、ツクル君だー!」

「お、お久しぶりです」

「うんうん、気にしなくていいよー。それよりほら、座って座って」

 なんだか語尾に『♪』が付きそうなほど嬉しそうに、俺を迎え入れるギルド長。
 少し訝しむが、ここまで弱らせたのも俺のせいかと項垂れて誘導に従う。

「……あの、ギルド長」

「どうかしたの?」

「近すぎません?」

 そんなことないよー、などと言うギルド長は俺の座るソファの隣に居る。
 ……何なんだ、本当に。

《……『状態異常:疲労』レベル四。かなり危険な状態ですね》

 そこで、『SEBAS』から答えが届く。
 そっか……ギルド長、もうすでに限界だったんだね。

「ギルド長」

「な──ぬぐっ!」

「申し訳ありませんが、今の貴方に正常な思考はできていないようです。しばらく休むことをお薦めします」

 ポケットから『快眠の丸薬』というアイテムを取りだし、口の中に突っ込む。
 しばらく抵抗していたが、最後にはそれを飲み下し──ポテッと倒れることになる。

「ほとんど俺のせいなんだろうな。普通、初期地点のギルドの長が、ここまで疲れるような事柄に巻き込まれるはずなんてないんだろうし……」

《優秀すぎるが故、なまじ耐えられていたのでしょう。それが旦那様の来訪によって、ついに限界を迎えた。……新しい仕事を与えられる、そう体が認識したのでしょう》

「まあ、ほぼ正解だしな。許可証の方は、あとで秘書さんを通じて用意してもらおうか」

 できることなんて、もう何もないさ。
 俺が原因でこんな状態に至ったと言うのだから、本当に俺がいても良いことはない。

 それでも少しは手伝いたいので、『SEBAS』を通じてではあるが、机の上にあった書類の一部を消化しておく。
 同時に、机の上にいくつかギルド長のためになるポーションを置いてこの場を去る。

 ──本当に、頑張ってください。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

処理中です...