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DIY、大陸を渡る
陰陽師 その04
しおりを挟む「あっ、でもコンセプトは同じなのか? 鏡写しの世界ってのは悪しき者が眠ると」
入った空間は左右が逆さになった場所だ。
大きな違いはそれともう一つ──またしても、大きな山があることだ。
「……うわっ、鑑定の色がヤバいことに」
濃厚な色で浮かび上がる、詳細不明を示す文字の羅列……封印された存在が、異常な戦闘力を有していることを示している。
「鬼、まあ東洋と言えばこれだよな」
瘴気に包まれた一つ角の鬼が一匹、空間の中で鎖に縛られていた。
山に打ち込まれた楔は今にも外れそうで、唸りと共にジャラジャラと鎖が鳴っている。
「だがまあ、俺の目的はコイツをどうにかした先にしか無いからな……悪いが、俺の目的の礎となってもらうぞ」
《旦那様、最適解を求めますか?》
「いや、俺のボケっぷりで平常運転なら怪しまれないだろう。どうせ休人ってことはバレてるんだし、少しぐらいならヒントを出しても構わないだろう」
《……偽装の方は完了しました》
「ああ、だが『超越者』に完全な安全など存在しないだろう。俺らだって、何重にも策を用意しているんだ。周りがそうじゃない保証はないし、それ以上がないというわけでもないだろ?」
どうにか『SEBAS』のお蔭で、俺もそうした頭脳戦をやってこれた。
だが、世界には『SEBAS』以上の頭脳の持ち主がいるかもしれないし、別のベクトルで秀才な者ならばごまんといる。
特に人を使うことができる『陰陽師』。
ただ使役するだけでなく、慕われている彼女ならば……。
簡単には見抜けない方法で、観察することぐらい容易いだろう。
「まあ、ここは任せておけ。正解じゃなくとも、答えには導いてみせる」
《畏まりました》
ビキビキ、という音が山々から響く。
楔は外れ、鎖は壊れ、鬼が吠える。
『グォオオオオオオ!』
「やかましいな……。また鼓膜が破れて死んだみたいだ」
手に持つのは小さなカプセル。
予めこういった状況に使えるよう、加工に加工を重ねた一つのアイテム。
それをポケットから取り出したパチンコに載せ、鬼に向けて放つ。
『グォオオオオ……オオオ、オ……オ……オオ……Zzz』
「よし、成功」
《死天による具現化アイテム。その銃弾化アイテム『永眠の死弾』──成功です》
放ったのは、俺が昏睡死に関する死に方で亡くなった際に生成されたアイテム。
撃てば相手は百パーセントの確率で眠りに着き、特定の方法で無ければそのまま永眠して死ぬという恐ろしい物だ。
まあ、加工する際にある程度眠りの強さを弱くしてあるので、仮死として使っても大丈夫なんだが。
「さて、これで終わりだな。──監視は?」
《……やはり、まだいました。新たな対応策の準備をしております》
「まっ、そうだよな。そう簡単には、やらせてくれないか」
それでも最後に利を得るのは俺だ。
式神の情報、引き出させてもらうぞ。
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