虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
302 / 2,812
DIY、大陸を渡る

個人領域

しおりを挟む


 アイプスル

「さて、やることも終わったし、そろそろ冒険に行きますか」

 すでに受け渡しやそれに関する処理を終わらせ、彼女──カルルはこの世界の住民として生きることになった。
 風兎の助手として、きっちりと働いてくれるだろう。

「いちおう外出用に『隷属の首輪(笑)』を用意したし、なぜか『服従の足輪』なんてパチモンが作れたりもしたけど……そこら辺はどうでもいいか」

 だって用途が無いんだもん。
 なんだかアイプスルが気に入ったらしく、一度聞いたときは永住する、などと言われてしまい困ってしまった。

 せっかく用意したアイテムだが、俺に従魔ができない限りは使わないな。

「『SEBAS』、俺に足りない物を埋めてくれる従魔ってなんだと思う? できれば教えてほしい」

《旦那様に足りないものですか……嵌め殺しされた場合に解除するものでしょうか?》

「おおっ、それだよそれ!」

 基本:DIY:でなんでも用意できちゃうわけだが、体を動かせなくなった状態ではどれだけ便利なアイテムを持っていようと使用することができない。

 死ねばリセットなのだがそれすらできず、ひたすら暇な時間なんて絶対にいやである。

「それじゃあ、そんな俺の悩みを解決してくれそうな魔物はいるか!? できるなら、弱い奴でも受け入れてくれそうな奴で」

《本来ならば聖獣などの存在をお薦めしたのですが……旦那様のお嬢様が粗方調教しておりますので、もう目ぼしいものは存在しておりません》

「マイがか……ならいいや。たしかたくさん従魔が置ける場所を貰ったってずっと前に教えてくれた気がするし。それでたくさん手に入れておいたのか」

《旦那様が死神のクエストをこなしていた頃に行われたイベント。その中の一つとして、優秀な功績を誇った者が選んで入手できたものこそ──『個人領域プライベートエリア』というものだそうです》

 要は箱庭の個人版である。
 拡張などに少々面倒があるそうだが、無駄にSPという設定にこだわる必要がない。

 環境設定も一度行えば簡単にできるらしいので、従魔を置いておくには最適な場所だったのだろう。

「個人領域か……ショウもルリも持っていたよな? 同じときに聞いた気がするし」

《はい、持っておられるようですね》

「世界との関連性は? 接続は可能か?」

《可能でございます。核の存在を知る者であれば、領域の保持者を核の場所へ連れていくか擬似核に近づけることで、組み込むかどうかをシステム的に確認されます》

 つまり、会えば世界に誘えると。
 ……よし、やる気が満ちてきたな。

「まあ、それとは別だが従魔を探そうか。魔物の『超越者』っているのかな?」

 それをスカウトするのが、一番強い気がしてきたよ。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

処理中です...