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【祭りの始まり】面倒事対処 その06【無数の戦い付き】
スレ114 過去の所業は今の罪
しおりを挟む「──生徒会に呼び出された? なら、行ってきてくれればいいだろう」
「……お前がだよ、アサマサ」
「えっと……どういうことだ?」
それは、一度ポイント交換を行った日の翌日のことだ。
突然ブラストに声を掛けられたかと思いきや、突如そんなことを言い出した。
「伝えろって言われたんだよ。生徒会のメンバー曰く、生徒会長が呼んでいるらしいぞ」
「……生徒会長か」
「お前、見たことのないのか? あの容姿端麗な美人会長様を?」
「まあ、あるにはあるが……なんというか、タイミングが悪くてな」
俺が見たのはブラストの考える美しい女性ではなく、正義執行中のヒーロー様だ。
彼女は『聖義』を冠する序列四位、名の通り正義を愛しているのだろう。
……会ったときは、ヒーローっぽい恰好に身を包んでいて顔は見えなかったんだよ。
「それで、なんで俺は呼ばれているんだ?」
「さあ、あの役員も呼べとしか言われなかったみたいだからサッパリだ。というか、普通の奴は呼ばれたってだけで有頂天になっていくもんだぞ」
「……お前もか?」
「そりゃあもちろ──あっ」
俺たちが話していたのは教室の中。
そしてそこには、俺以外の者たちもいた。
ブラストの背後には、幼馴染のエルフ少女であるフェルナス……とてもニッコリとした笑顔を浮かべ、水魔法を生成している。
「ねぇブラスト、とーっても楽しそうな話をしているみたいね。私も混ぜてもらっていいかしら?」
「……あ、アサマサ?」
「俺、生徒会長に呼び出されたみたいだからいかないと。フェル、それじゃあブラストのことは任せた」
「ええ、もちろんよ」
教室を後にし、廊下へ出る。
遠くから男の悲鳴が聞こえてくるが、それ自体は特に問題にならないのでスルーだ。
それよりも気にしなければならないのは、このタイミングで『聖義』の生徒会長様から呼び出しを食らった理由である。
やっぱり、入場者からポイントを掻っ攫っていたのが問題だったのだろうか?
今もこっそり闘いたいヤツのため、時折解放しているもんな。
「……けどまあ、悪いことはいっさいしていない。それだけは断言できるんだ、疚しさもないのに怯える必要は無いか」
正々堂々、無実を主張すれば良い。
また、断罪云々の内容でないなら、魔法の力で万事解決といこう。
……さて、いったいどんな用なんだか。
◆ □生 徒 会 室□ ◆
「──生徒会に入らないか?」
「大変申し訳ないのですが、俺はサーシャ様に仕えていますので……無理ですね」
「そうか、なら君の主もいっしょにということならどうだ?」
「……主に訊ねてはみますが、おそらくは拒否しますよ。そういう方なので」
こういう回答をすることを、すでに予測していたのだろう。
そうか、と言うだけで相手──生徒会長はそれ以上何も言ってこない。
きっちりと指定の制服に身を包み、腕には生徒会の証である腕章が巻かれている。
見た目は金髪ストレートが背中まで伸びた端麗な少女……ブラストの言も納得だ。
「あ、あの……生徒会長?」
「なんだ?」
「俺はいったいどうしてここに呼びだしを受けたのでしょうか? 先ほどのスカウト……では、ありませんよね?」
「もっと砕けた口調でも構わない。私が君をここに招いた理由は唯一つ──『聖義』を完遂するためだ」
先ほどまでと何一つ変わらない姿勢で、こちらを見つめる生徒会長。
だがその瞳が、放つ気配がその発言を境に思いっきり変化し始める。
「君が正式に序列者となる前、生徒会のメンバーを相手に大立ち回りをしたらしいな」
「……そりゃあ確かにしたけど。あれはあっちから吹っ掛けてきたこと──」
「それは重々承知している。そもそも、押しつけたのはこちら側。君が完全な悪ではないと分かっているつもりだ」
「……悪、ですか」
アイツらの中には、悪者扱いをされた者たちも少なくなかった。
相応の行動を取った者もいるが、やはり周りの誤解からそう判断された場合が多い。
「だが、それでも問題はいくつかあった。君ならもっとうまく立ち回れたはずだ。君の行いによって、退学者も現れた……本当にそれは、君にとって必要なことだったのか?」
「…………」
「私にはまったく感じられなかった。教えてほしい、君はあの結末しか用意できなかったのか? やり方によっては、彼女が退学せずともよかった道があったのじゃないか?」
「…………彼女って、誰ですか?」
うーん、全然思いだせないな。
たしかに俺に暴言を吐いてくる女子は何十人単位で居たが、俺が序列者に入ってからはパッタリだったし。
あの結末、と言われても……そもそも死んじゃないだろうし。
それに生きてりゃ儲けもの、いったい俺がその被害者とやらに何をしたんだか。
「そうか──君は『悪』だったか」
「はっ? あの、何を言って……」
「ダーシェスの意見を受け、まずは審判をするところから始めようとはした……だがダメだな、こうも話が通じないとは」
「いや、それこっちの台詞」
ダーシェスって誰?
そんな質問にも答えてはくれない生徒会長が、何やら自身の座る机の引き出しから何か取りだして操作しだす。
するとゴゴゴゴッと部屋の壁が動きだし、秘密の通路みたいな物が生まれる……なにあれ、凄いカッコいいんですけど。
「ついて来たまえ。君という『悪』を、この私が『聖義』の前に断罪しよう」
「……俺が何をしたって言うんですか?」
だが何も答えず、秘密の通路を使ってどこかへ向かう生徒会長。
……もう、帰っていいかな?
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