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【祭りの始まり】面倒事対処 その06【無数の戦い付き】
スレ108 本は過去を繋ぐもの
しおりを挟むとりあえず、学園側へ今回起きたことをすべて報告して依頼は達成。
俺は報酬として、閲覧禁止となっていた蔵書に手を伸ばせるようになった。
「さて、何か良いモノはないか……」
そんなこんなで翌日、クラスメイトたちと別れた俺は図書館に向かう。
地球に今すぐ帰りたいわけではないが、帰還方法を確立させるためだった。
「閲覧禁止って言っても、その理由も多岐に亘るからな……うわっ、何か出てきた」
耐久度が低くなっている本や、開けた瞬間読者を呪う本なども存在していたようだ。
だが、予め魔力で手をカバーしておけば、問題なく読むことができるらしい。
「内容的に禁止になった本はどれかなぁ……これは、『初代勇者の真実』?」
俺の脳内では、仲間思いな友人の姿が連想されたが……かつて見た初代勇者に関する本では、ずいぶんな書かれ方をされていた。
召喚した国を壊滅させ、王族すらも脅した悪逆非道の裏切り者。
最期は魔王と共倒れ、世界は救われた。
召喚は召喚者の願いを叶えなければ、元の場所に帰れないケースが多い。
初代勇者……アキの場合もそうで、魔王討伐が成されなければ帰れなかったそうだ。
だが召喚国は強かで、条件をそう偽り勇者にさまざまな雑事をさせたんだとか。
実際には自国に覇をもたらせ……的な野望があったらしい。
「──『心優しき勇者も、すでに限界を迎えていた。罪なき者を救おうとした想いすらも利用され、少しずつ身も心もすり減らし。最後の時、私たちは共に居られなかった。支えていられれば……そう後悔している』」
どうやら著者は、かつてのアキの仲間だったようだ。
そんな彼あるいは彼女が残した手記を、何者かが本に書き記した物がこれなのだろう。
「『■■よ、どうか許してほしい。せめて君と共に居られるだけの力が私たちにあったのならば……』か。アキ、初めて会った頃はだいぶ怖かったからな」
俺には実感が無いのだが、本来異世界に来ると知り合いに忘れられるのだとか。
地球に帰ってこようと努力した結果、家族が自分を覚えていない……辛かっただろう。
俺と会ったばかりのときは、神様殺すとか言ってたけど……変わったモノである。
「さて、そろそろ探し物の続きをするか──“虚像偶像”、転写しておいて」
俺は本探しを再開するのだが、魔法で生みだした分身に先ほどの本を写してもらう。
一ページずつ、写真を撮るぐらいしかないからな……うん、時間が掛かる。
スマホ側で解像度云々をやってくれるし、撮ればそれだけで本を読めるようにしてくれるだろう。
これはアキの仲間が書いたメッセージだ。
本人に届けるのがごく自然な行動だろう。
ただ、周りに説明できないからな……こうして犯罪ギリギリの方法で送るしかない。
「あった、空間魔法に関する禁書!」
そんなこんなで本を探していると、ようやくそれらしき本を発見した。
途中、名状しがたい本とかもしたが……そちらはいいとして。
これまでに気になっていた本は先ほどの方法で撮影しているのだが……すでに、二十冊ほど複製作業に入っている。
そんな中、ようやく見つかったいかにもな革のカバーに包まれた怪しい本。
中を開くと、小難しい古語で書かれた文面がギッシリと載っていた。
「でもまあ、翻訳アプリがあればバッチリ」
竜の言葉に対応しているくらいなので、人の古い言葉ぐらい当然対応可能だ。
こちらも複写してもらい、そのうえで翻訳アプリを通せば──ちゃんと読める。
「異世界から何かを呼びだす召喚魔法は……無いのか。代わりにあるのは、膨大な魔力で小さな世界を生みだす魔法。それはそれで気になるけど、空間魔法だしな」
虚無魔法の使い手である俺なので、そっくりそのまま再現して遣うというのは難しい話である。
もともと普段からやっているイメージからの起動では、本を読んでのやり方はあまり会わないから別にイイんだけどさ。
「ん? まだ続きがある……『異なる次元より生きる存在を呼びだすためには、神と呼ばれる存在に許可を得なければならない。魔王という脅威に対し、それが認められる特例。それこそが──勇者召喚』……これだ!」
最後の辺りで説明してくれていた。
求めていた魔法に関する情報が、そこにはギッシリと記されている。
どうやら空間魔法だけではなく、もう一つの高難易度魔法である時間魔法を操らなければ発動しないため、普通の魔法説明をしてある場所には書いていなかったようだ。
「『時と空間、二つを操ることで勇者たちの世界へ干渉する。そして力ある者を見つけ出し召喚する──これが勇者召喚である。ただし、力とは戦力のことではない。その意味は神のみぞ知る』……って、最後は適当だな」
物語とかでよくある、ハズレとか異端者的な奴を想定して書かれているのだろう。
最初から力を持っているわけでもないんだし、そういう風に思われるのも仕方がない。
「『送還は願いを叶えることでのみ果たせ、それ以外の方法では帰ることは難しい。私の考えた帰還方法は、彼らにとって福とも災いとも言える。実際に試したことの無いものを行わせようとしているのだから』……ふむ」
あるにはあるようだ。
どうせ召喚した国の願いを叶える気はまったくないので、その在るかもわからない机上の空論に頼るしかないのだろう。
──さて、いったいどんな方法なんだか。
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