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【祭りの始まり】面倒事対処 その06【無数の戦い付き】

スレ106 ゴーレム≒ロボット

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 前回、二十層も当然攻略した。
 十層ごとに階層守護者が立ちはだかっており、そこにはたしかデミゴブリンキングがスタンバイしている場所だったはずだ。

「……本当、いろいろとおかしくね?」

 男子中学生サイズの、緑色の醜悪な魔物。
 それが居るはずだったのだが、目の前の光景はそれをあっさりと否定する。

 いや、居るには居るのだ。
 ただそれがペシャンコに潰され、汚れたフローリングのようになっているだけで。

「デッカいゴーレムだな……ここには居ないはずなんだけどな」

 十層のボスはスライムキング。
 これはまだ人型の魔物を殺せない学生たちへの配慮がされたため、そういう配置になっているらしい。

 そして十層以降、少しずつ弱い人型の魔物で慣らすために最弱扱いのデミゴブリン──通常のゴブリンは妖精──が現れるのだ。

 だがゴーレムはもっと後、普通に強い魔物として学生たちの攻略を阻む。
 弱点は用意されているのだが、基本スペックが高く生徒たちは苦労するらしい。

 しかしそのサイズだって、精々三メートルから五メートルぐらいのが大半だ……しかし目の前のヤツは十メートルぐらいあった。

 うん、これはおかしいだろう。
 すぐにスマホのカメラをかざし、情報を強制的に[ステータス]で開示してみると──

「『オリハルコンカスタムゴーレム』って、レベル250!? いや、どんだけ強いのがここに居るんだよ!」

 まだ二十層だ。
 それに、この迷宮の最深部辺りのボスラッシュだってそこまでレベルは高くない。

 本来であれば神々しく輝くはずのオリハルコンが輝いていないのは、その『カスタム』の部分が関わっているのだろう……なんだか所々に魔物のパーツが入っているし。 

「うん、というかなんでこんなところにゴーレムが。しかも、わざわざ迷宮に?」

『敵性侵入者確認。潜在魔力……測定不能。エマージェンシーモード起動──全装備使用許可、これより殲滅を開始します』

「マジか……」

 レベル250のゴーレムが全力を出してくると宣誓した。
 内部で高まる魔力の反応、おそらく増幅するための炉でも内蔵しているのだろう。

『魔力増幅完了。続いて限界突破オーバードライブを起動し、プログラム[神殺しゴッドスレイヤー]を実行します』

「……うん、少なくとも製作者はだいぶ患っていた人っぽいな」

 何もしないわけにはいかない。
 戦闘用に脳スペックの割り振りを行う。
 戦闘九、歩行に一を注ぎ込み、虚無魔法で全身を固めれば準備はバッチリだ。

「来い──『聖剣(不壊)』」

 自作の聖剣を呼び出し、握り締める。
 だいぶ前に言ったが、素材を工夫すれば誰にだって聖剣は打てるのだ。

 今回の聖剣は不壊に特化しており、どんな扱いをしようと絶対に壊れない……ように、俺なりに頑張った聖剣である。

「まずは──『縮地』」

 気を練り上げ、脚から放出することで爆発的に速度を高めてゴーレムの死角へ迫った。
 だがさすがは250、ゴーレムらしからぬ高機動によって俺から距離を取る。

「なら──“魔力壁ウォール”」

 一回一回にそれぞれ籠められる限界量まで魔力を注ぎ、半透明な壁を生成していく。
 俺にとってはただのデカい壁だが……ゴーレムからすれば、立派な障害だろう。

「そして“構造複製トレース”」

 魔力でできた仮初の聖剣が、二十階層の至る所に展開された。
 いっしょに“浮遊フロート”も付与してあるので、ある程度自由に俺が操ることができる。

「今度こそ、始めるぞ」

『危険、危険、危険。能動的行動による対処は不可能。エネルギーを対神威結界へ運用し防御を実行します』

「なら、やってみろよ──一斉射出!」

 ゴーレムが籠もった殻に向けて、不壊の聖剣が次々と突き刺さっていく。
 初めはビクともしていなかったのだが、刺さる本数が増えていくにつれて……次第に罅が入っていった。

「……それで、結局耐えたか」

『…………』

「まあいい、問題はない。まだまだお代わりはたくさんあるからな──“構造複製”」

 再び放たれる剣の嵐。
 その猛威に晒され続けた結界は、すでに限界だった……ついに罅割れた結界は完全に消滅し、内側に居たゴーレムを守れなくなる。

 そして、剣がいっせいに迫る。
 能動的行動を止めていたゴーレムは、その身に大量の剣を突き刺された。

『ダメージを検出。修復不可。増幅炉が一部損壊、生成率が二十パーセント低下。以降はAIによる思考ルーチンを内部でのみ処理して戦闘を続行します』

「……ちょっと待て、AIって言ったな」

『…………』

「くそっ、本当に黙りやがった」

 この世界の人々が、AI──人工ArtificialIntelligenceを表す単語を知っているのはおかしい。

 つまりこのゴーレムの製造者は異世界人。
 俺たちの同朋がこれを造ったことになる。
 もしかしたら違う概念で『AI』があるのかもしれないが、十中八九当たりのはず。

「ただ、造ったヤツと使ったヤツは別人の可能性があるからな……そこら辺、気にしておかないと」

 真の敵、みたいな展開は創作物でもお決まりのパターンだろう。
 ここで製造者に目星を付けるのはいいが、ソイツが悪人かどうかも分からないからな。

「となるとまずはここで、情報を取れるだけ取るような戦い方をしないと。たぶんロマンが分かるヤツだろうし、間違いなくあの機能が搭載されている」

 それは男たちの……いや、ロボマニアであれば分かってくれるであろうシステム。

 自分を犠牲に何かを救う、決して相手の思う通りにさせないという強い遺志が生みだした全力の抵抗。

 ──そう、自爆システムである。

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