673 / 2,518
偽善者とキャンペーン 十一月目
偽善者と忘れていた案件
しおりを挟む夢現空間 自室
今さらだが、俺が放置している案件はいくつほどあるのだろうか。
時々忘れてしまうが、{夢現記憶}があるので思い返そうとすればすぐに思い出せる。
「プレイヤーの眷属の願い事は叶えたし、ギルドはスルーでよし。アッチ系の眷属の願いは回復すれば検討する。ずっと前に出会ったプレイヤーは俺を呼ばないし、裏関係からの連絡はまだない。あとは……聖炎龍を縛る契約とあの世界の選ばれし者たち、それに亜空間で呼んでいた声の主か?」
他にも結構あるが、まずはこれぐらいか。
いちおう対人関係のものだけを選出して思いだし、口に出して頭に認識させる。
……意外とあるようだ。
俺の今のコミュ力ならば、現実でもモブDからモブCにランクアップできるかもな。
「他には……赤の世界で国を建てて教会を調べ、いちおう別世界の探索。それに神の捜索とクソ女神が用意したクエストを破壊。……うちの世界の防衛強化と訓練もしばらく重ねていこうか」
これは眷属に協力を願う案件だ。
というより、眷属主導の元すでに一部は実行されている。
運営神の目を掻い潜るために隠蔽工作をしているので、多少時間がかかっているが……ある案件はそろそろ目途が立つらしい。
防衛強化と訓練は……うん、俺がやるか。
「あとは俺個人の問題。{感情}の侵蝕と原因である大神に関する情報。戦闘面なら新武技と魔法の開発、武技のなぞりもやって魔法の新しい使い方も使えるようにする。スキルの方もやらないとな……」
これは特に焦ってもいない。
焦らずとも、日々の積み重ねがいつかその成果を示してくれるからな。
最近精霊に関する検証を終え、そろそろ聖霊を入れておけるアイテムが完成しそうだ。
そうやって何かしら、時間を費やせて物事に励めば結果が出ている……現実とは大違いだよな。
「この世界で死んでも、俺は死なない。記憶が月に送られることも、復活に時間が掛かるということもない。一瞬で可能だ。あの邪神の使徒との戦いでよく分かったな」
クラーレが遭遇した熊や男、あれらは邪神の使徒であった。
(鑑定眼)で視ることはできなかったが、リオンがあとでそう教えてくれたので間違いないだろう。
クラーレを庇い、一度首を落とされた俺だが……(再生の焔)はバッチリと発動した。
残念ながら死ぬと強くなる効果は発動しなかったのだが、それでもしっかり蘇った。
──当然、(再生の焔)以外にもそのときは死亡対策を使っていたがな。
眷属は望まないが、死ねば発動するスキルや魔法は大量に存在する。
本当に必要なとき、俺は迷うことなくそれらを使うだろう。
「さて、この中からどれに着手しようか。浮かばないなら生産にすればいいし……はてさて、どうするべきか」
俺が遊びに行って邪魔にならない場所の中で、俺を必要としている場所……はないが、それでも暇潰しを探したいからな。
「……ま、散歩でもするか」
全く関係ない第三の選択を選び、俺は外の世界に転移した。
◆ □ ◆ □ ◆
始まりの町
何もないときは歩くのが一番だ。
意識を空っぽにしていても、歩くことはたいていの者には可能だしな。
日本人が多いので、譲り合い精神を発揮してフラフラしていても歩くことができる。
「――そしてそうでない者も、ちゃんといるのが現代日本である」
「あ゛? 何言ってんだよ、ガキが」
「気になさらないでください。貴方がたのような人が、プレイヤーとして認識されるのが少々不快だと言っただけです」
「! ……ふざけやがってこのガキ! こっちが黙って聞いてやりゃぁ、冷静ぶるのも大概にしやがれ!」
そもそも、今の俺は凶運であった。
あるときは強者に挑まれ、あるときは運営神に狙われ、あるときは大悪魔を呼びだす。
不幸、とは少し違うが戸惑うようなイベントが起きやすい体質となっている。
望まぬ展開に遭いやすい、と言えば真意の数割は伝えられるだろう。
面倒事でもよくある、荒くれ者との接触イベント……ハァ、厄介なもんだな。
仲良し三人組のプレイヤー、装備品に少し遠い場所で倒せる魔物の素材が使われているので少しはやれるのか。
ちょっと有り余った力を乱雑に振るって周囲の者に多大な迷惑をかけている。
俺が独りで殲滅しても良いが、それは少し目立つのか……。
「誰かー! 助けてくださーい!」
「ちょ、おまっ!」
「おいおい、どうしたどうした?」「ルールも守れない馬鹿が子供に絡んでんだよ」「小さいけど……プレイヤー? 寄ってたかって許せないわ」「よし、ちょっと行ってくる」
「――チッ、覚えてろよ!」
そんな捨て台詞を置いて、三人組はどこかへ消えていく。斥候職に就いたプレイヤーが追跡に向かったのですぐにバレるだろうが。
さて、近づいてくるプレイヤーに状況を話してアイツらを庇わないと。
「大丈夫だったかい、君?」
「あ、はい。助けていただきありがとうございます」
「同じプレイヤー、助け合うのは当然さ」
「そう言ってもらえると嬉しいです。……あの人たち、この後どうなるんですか?」
「ん? 簡単だよ、掲示板に晒す。君みたいな子に被害が無いように、ああした奴は早めにマークしておいた方がいいからね」
「あ、あの! それは……止めてあげられませんか?」
「……どういうことだい?」
猜疑の目を向けてくるプレイヤー。
まあ、ただの子供じゃないことはここら辺でバレるだろうな。
別にそこは気にしない、どうせ皮を被った上にSSにも影響を及ぼす認識阻害を使っているしな。
「まだ何かされたわけじゃありませんし、それに……同じプレイヤーですから。まだ初犯だったなら、どうか許してあげてください」
「…………君がそういうのなら、そういうことにしようか。周りには、俺が伝えておくから任せてくれ」
「はい、ありがとうございます」
その後、若干の事情聴取を受けてから俺は解放される。誰も俺を認識しなくなったところで──連絡が届く。
【……餌三つ、確保しました……】
「(ああ、こっちもいちおう説得しておいた。ついでにスキルも使ったから誰もアイツらは気にしない。ただ優しい少年がいたという記憶しか残らないだろう)」
【……餌は、どうします……】
「(決まっているだろう。餌は餌になるためにあるんだからさ)」
【……畏まりました……】
さて、散歩を続けますか!
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
俺と異世界とチャットアプリ
山田 武
ファンタジー
異世界召喚された主人公──朝政は与えられるチートとして異世界でのチャットアプリの使用許可を得た。
右も左も分からない異世界を、友人たち(異世界経験者)の助言を元に乗り越えていく。
頼れるモノはチートなスマホ(チャットアプリ限定)、そして友人から習った技術や知恵のみ。
レベルアップ不可、通常方法でのスキル習得・成長不可、異世界語翻訳スキル剥奪などなど……襲い掛かるはデメリットの数々(ほとんど無自覚)。
絶対不変な業を背負う少年が送る、それ故に異常な異世界ライフの始まりです。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる