上 下
628 / 2,519
偽善者と決意交わる水着イベント 十月目

偽善者と赤色の紀行 その19

しおりを挟む

先日更新できていなかったので、0:00と12:00の他に6:00と18:00にも更新を行います
===============================

夢現空間 自室


 偽りの初夜からどれだけの時が経過したのか……実際、あんまり経っていない。
 {夢現空間}の時間の流れは完全に操作可能であり、基本的にAFOの世界よりも遅めているからだ。
 赤色の世界がAFOの世界と互換している世界だったのが幸いし、都合よく時を操作可能だった。

 精神的に童貞を卒業し、(心の中でのみ)一皮剥けた俺。
 赤色の世界での行動も一段落つき、再びこの世界に舞い戻って来たわけなのだが……。


「いや、だから魔導が回復したらな」

『何故だっ!』

「言葉じゃ上手く伝えられないけど、アイツらは本当に心がパンクしそうだった。手段として言うのも嫌だけど、眷属を……いや、家族を守るのが家長としての務めだろ? 俺が行うのは精神のケアだ。俺が欲望をぶつけるだけの腰振り作業じゃない」

『なら、吾も限界だ! 今すぐ褥をともにしようではないか!』


 不完全な魔導は、未だに使用不可だ。
 なので誘われようと、俺はYESの回答を出さないし出せない。


「褥って……どこからそんな知識を持ってきたんだよ」

『ええい、細かいことを気にするなど男としてどうなのだ! 一部を遮断できる他の者と違って、吾は全部を受信しているのだぞ! 耐えられぬに決まっているだろうが!』

「そんな自慢するように言われても」


 本日のお客様のご紹介です。
 病的にまで白い肌をし、同様に真っ白な髪色を持つ瞳に緑の炎を照らす……チョイとばかし顔を紅潮させた女性。

 ――そう、元骸骨のネロさんであった。
 罰ゲームによって俺の感情が全部流れ込んでくるという状態にされていたのだが、今では眷属全員の感情を受信させられている、少し可哀想な骸骨だ。
 前に外そうかと訊いたら、全力で否定していたはずなんだけどな。


「帰って来た途端に全裸で襲いかかってきたドMよりはマシだから抑えているけど、このままだと俺の倫理観が崩れそうなんだよ。魔導が回復するまで待てって」


 欲情しただの発情しただの、R18待ったなしの発言をしながらルハ°ンダイブをしてきたので蹴り返した。
 ったくあの龍め。
 他のドラゴン娘たちは普通にできるのに、どうしてお前だけそこまで堕ちたんだよ。
 最初に会った頃のラスボス感、あれは一体どこへ逝ってしまったのだろうか。


「ほら、とりあえず精神安定魔法と一時的な感情ネットワークの強制遮断ぐらいやってやるから。指輪出せ」

『そ、それは困る。吾は褥をともにするだけで構わないのだ』

「それこそ困るから代案を提示してるんだろうが。何が嫌なんだ? 俺が手を出さないこと、なんて冗談は止めてくれよ」

『…………』

「…………うわっ、冗談じゃなかった」


 地球で鍛え上げてきた観察眼によって、ネロの考えをなんとなく理解する。
 やっぱり{感情}の洗脳効果がすごい、非ヒロインをヒロイン化するのが特にすばらしい。


「"精神安定"、"冷静沈着"、"緊張弛緩"……とりあえず魔法だけでも受けろ」

『う、うむ』


 {夢現魔法}を通じて(精神魔法)を発動。
 ネロの燃え滾る炎のように赤くなっていた顔が、少しずつ元の白色に戻っていく。


「指輪の方だが、少なくとも眷属からの回路は遮断しておく。俺と繋げておくことに文句があるなら、別の奴に頼むが――」

『それはメルスで構わん。むしろ、そこはメルスにしておいてくれ』

「そっか? 分かった」


 俺なら迷わず、ティルの感情を共有させてもらう。
 普段心を読まれまくっているのだから、そういうときぐらい逆に読んでみたいです。


  ◆   □   ◆   □   ◆

会議室


「――で、あるからして、俺は(仮称)赤色の世界に国を造ることにした」


 ネロの暴走も治まったので、続いて眷属たちへの説明会を行う。
 詳細を伝えずにあっちに行ったからな。
 こういう場を設けないと、記憶の確認に向かわれてしまう。
 ……被害は、最小限にしないとな。


「何か質問のある奴、いるなら手を挙げてから発言すること――はい、カカ」

『私を出しに使ったようだな。どういった了見か、聞かせてもらえないだろうか』


 カグの中で見た黒炎のような髪を持つ少女が、ジト目で俺にそう言ってくる。
 そう、彼女こそが赤色の世界で話題の邪炎神であった。


「早い話、ネタが浮かばなかったからだな。お前さんに関する話は聞いていたし、観光ついでに少しばかり集めた。アッチの腐った宗教の改善を行うのに、肩書を借りたのさ」

『この名前は君が付けたのだろう。あの世界では何の意味も持たないはずだ』

「うんにゃ、そうでもないからな。神像をカカの物として作っておいて、信仰力とやらの中継点をその国に作れば、多分それはここまで届くと思う」


 度が過ぎて、信仰が盲信や妄信や狂信や恐信にならなければ、問題無いだろう。
 炎ばっかりのあの世界で、炎を司るということは凄いことだ。
 海も大地も大空も、至る所に炎を添加させていた。
 そんな場所で炎の信仰を行う……信じた、と定義付けられる物が多過ぎるだろう。


「大体さ、俺もカグも幸せになってほしいと思ってるんだからさ。な、カグ?」


 俺たちの話に最も関係があるカグに、そう尋ねると――。


[そうだよ。カカお姉ちゃんも、いっしょにいてくれないとやだよ]

『カグ……』


 少し汚いが、最終的には承諾を得ることに成功した。
 これで、俺の建国にケチを付ける者は誰もいなくなったのだ。


「さて、頑張ってもらいますか」


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...