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偽善者と決意交わる水着イベント 十月目

偽善者と水着イベント後半戦 その15

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【……報告は以上です……】

「(素晴らしい、素晴らしいじゃないか! 恋でも愛でも無く恩返し! 実に少年のツンの心を表している。今までイジメられていたからこそのやさぐれ感……よくやった)」

【……『復讐者』たちは、これからどうする予定なので……】

「(とりあえず別の奴に頼んで回復はさせてあるし、上の方にも話は付けてある。一度アップグレードした魔剣の状態を確認したら、本人に直接訊いてみることにするわ)」

【……了解……】

◆   □   ◆   □   ◆


 転移した先――白色の世界には幾つかの異物が存在した。
 屋久杉のように聳える大樹や、そこに絡まる数人の人間……暴れ柳みたいだな。
 確かにやり方はユラルに任せたけど……。

「まあ、最初は木の片付けからか? 確かに便利な木なんだが、もう必要ないし」

 彼らが吊るされている木には、肉体の治癒速度を上げる効果や回復力を増大させる効果がある。
 なので、そこに俺特製のポーションを振りかければ一瞬で完治できるぞ。

 そんな木から彼らを回収してから、魔法で引っこ抜いて片付けて置く。
 あとでダンジョン前にでも植えておくか。

「……おっと、忘れるところだった」

 毎度お馴染み(変身魔法)を発動し、自分では無い者へと姿を変える。

「これでよし、まずは犯人のコイツからやっていくとしようか――」

 倒れた者たちから一人を連れ出すと、俺は結界を張って空間を隔離する。
 これで目が覚めても互いに見ることはできないだろうし、何より結界があるから乱入されることもない。

 ゆっくりと、話ができそうだな。

 掌から水を生成しながら、俺はそんな風に考えていた。


◆   □   ◆   □   ◆

「……ほら、起きろってんだ!」

 バシャっという体に何かを浴びせられた感覚と共に、少年の意識は現実へと回帰する。
 体が万全の状態で機能し、少年の意思通りに動くことを確認すると、少年は一度瞼を開き――。

「ようやく起きたか。ほれ、さっさと体を起こせ」

「……お前は!」

 目の前にいる男を、視界内に捉えた。
 それは、かつて復讐を決意した際に会った男――裏通りで会った商人の姿だった。

「おいおい、そんな殺気立つなって。人が折角意識を戻してやったってのに、そのまま放置されてたら、ずっと目が覚めないままだったんじゃねぇのか?」

「それなら緊急ログアウトで――」

「お前さんに起きたのは、あくまでそこの元魔剣によるヤツだ。祈念者どもがどんな時にでも自分たちの住む世界に帰れるのは分かっているが、そう簡単にはいかねぇよ」

 少年は、ただ茫然とその言葉を聞く。

「確かその条件ってのは、頭のどっかに異常があった時だけなんだろ? なら……その異常を見つけれらなきゃ、お前は一生この場所で死んだように生きていただけだろうさ」

 緊急ログアウトは、脳波に異常を検知した際に行われる処置である。
 それ故に、プレイヤーがゲーム中にトラブルになった時、外部から電源を落とされるような危機に陥った時、プレイヤーの身を一度現実に帰還させるすべとなる。
 ゲーム中、どんな場所に居ようともおこなわれる最上級の脱出方法であるが、その分使用にリスクを伴い、使用後はペナルティとして設定されたものの内、幾つかがランダムで課せられるリスキーな方法だ。

 だが、その異常となる脳波そのものを検知できなかったら?
 安全機能として用意された緊急ログアウトがもし、使えなかったら?

 それは、自身がログアウトを選択するまで帰れないことを意味するのだ。

「――まあ、そんな仮定の話はどうでもいいよな。お前さんの体は動かせるし、その元魔剣に注いだ力も補填されている。それだけがここにある事実だ。お前さんは、俺の前で告げた復讐を果たした。いやーおめでとう。その魔剣を譲った甲斐があるってもんだ」

「……お前は、何者なんだ?」

「何者って言われてもな、俺は俺であってお前じゃ無いことは確かだよ。そんなわけの分からねぇ質問は、どっかの偉い学者さんにでもしてくるんだな」

「ただのオヤジに、魔剣なんて大層な物を用意できるはずが無い。ただの商人に、あそこまで腕の立つ奴を用意できるはずが無い……アンタは一体、何者なんだ」

 少年は、目の前の商人を睨み付ける。

 何故、この男がこの場に居るのか。
 陽炎によって呼ばれたのか、それとも自分の復讐劇を見ていたのか、それとも……また別の理由なのか。

 理由はどうであれ、目の前の事実は変わらない。
 商人は目の前にいて、自身は質問を行う。
 隠された真実を、今暴くのだ。

「俺はただのしがない商人さ。お前さんのような強い意志を持った奴に、便利な品を渡していく愉快な商人。それ以上でもそれ以下でもない、俺は俺のやりたいように商売をやっていくだけの男だ」

 商人はニヒルに笑い、少年の問いをはぐらかしていく。
 元々、商人に明確な理由は無かったのだ。

(……どうしようか。面白そうだったから適当な魔剣を渡したなんて言い辛いな。アイツに連絡役を頼んだのもプレイヤーで動かせるのがアイツしかいなかったからだし……あ、言ったらアカン、ヤバいヤツや)

 裏で商人がこのようなことを思ったいたのかは、定かでは無い。



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遅れてすみませんでした
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