上 下
544 / 2,519
偽善者と開かれる新世界 九月目

偽善者とアップデート

しおりを挟む


夢現空間 居間


「そういえばさ、プレイヤーって結局どの範囲まで大陸を攻略しているんだ?」

『……今更ですね、主様マイマスター

「いやぁな、もう大陸の地図自体は完成しているワケだろ? なんだか急に……あ、そういえばって思うようになったんだよ」

『それで、プレイヤーとの橋渡しを担当する私に訊こうとした、ということですか?』

「そうそう。本当に問題があって攻略ができていない場所があるって言うなら、アイテムの援助でもして、発破を掛けなきゃならないし、その原因がどういった理由でできたものなのもかも調査しないとならない。それが、偽善者の仕事ってもんだろうよ」


 ある日、そのような会話が行われていた。
 本当に今更なんだが、掲示板を読まない俺には調べる方法が無いんだよな。
 本で識るにも限界があるが、やっぱり情報は必要なものだしな。

 なので、本当に俺の代わりにプレイヤーとの交流を行う我が家のダンジョンコア(人化)に訊いてみることにしたのだ。


『主様にそのような仕事は無いと思うのですが……仕方有りません。
 主様は最近のシステムとしての変化を。ご存知でしょうか?』

「システム? いや、さっぱりだな」

『システムコンソールを使い、アップデート機能を発動すればできますので、いづれ行ってくださいね。偶に主様の役に立つ機能も、更新されるようになっていますので』

「へ~、知らなかったなぁ」

『……いえ、私は今やれと暗に伝えたワケでは無いのですけど』


 ん? 便利な機能って言うから早速更新しようと思ったんだが……駄目なのか?

 状況を説明するならば――この場所にこの瞬間、ドーンと一つの機械が設置された。
 うん、システムコンソールを用意して、早速使っているワケだ。


「……指輪も連動するんだな」


 アップデートを行うと、コンソールと『挑む者の指輪』が同時に光る。
 まぁ、同じ機能を搭載してるからな。
 一々コンソールの機能を組み込むのも面倒だったし、俺としてはありがたい。


「――って、話はプレイヤーの攻略範囲の話だったな。レン、分かっている範囲で良いから教えてくれ」

『はい、ではご説明しましょうか』


 アップデートの待ち時間……まぁだいぶ掛かりそうだしな。
 ゆっくりと待ちますか。

 レンの解説をつまみに、本当のつまみを食べながら時間を潰していった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『――と、言う状況ですね』

「まぁ、少しずつ進んでいるってことか……西以外は」

『森の中の霧が全てを惑わせ、隙を見せた者は即座に死に戻りさせられるそうですよ』

「ゲームバランスがおかしいな。まぁ、称号効果とかクエストで中の奴と関われば意外とイケるのか。でも普通、主人公みたいな奴がそういうイベントは直ぐに起こすもんじゃないのか?」


 さて、暫く会話を進めていると色々分かったことがある。
 そして一番重要なことは、未だに『始まりの町』の西に位置するフィールドのエリアボスが、倒されていないということである。

 一応説明すると、その場所は『迷いの森』と呼ばれているのだが……終焉の島にある、『彷徨の森林』と似たような場所だな。
 条件を満たしていないプレイヤーはその場所ではマップ機能を使えず、一部の魔法(転移等)も発動できない。
 そんな場所だから、確かに攻略に時間は掛かると思ったんだが……幾らなんでも掛かり過ぎだろ!

 ちょっと前にクラーレたちが受けたクエストで見つけた主人公君のような奴が、きっとそういう誰も行っていない新天地の開拓を行う――そう思ったんだけどな。


『何人かこちらで目星を付けていた者もいましたが、残念なことに全て別の方角へと進んで行ってしまいました。そちらではそうした活躍もあると報告があったので、彼らの内幾人かを森へと向かわせれば可能かと……』

「でも、必要なのは今だしなぁ。無理矢理行かせるのもどうかと思うし……眷属の誰かを派遣してやらせるか? あ、アイツに依頼するのもまた一興だとも思うけど」

『あの者ですか……眷属では無い者に委ねるので?』

「眷属って案にしたのは強そうだからだし、誰でも良いしな。いつの間にか死に戻りってパターンなら同じ暗殺者タイプだろうし、案外いい感じだと思うが」


 あ、前に会ったPKのことだぞ。
 偶に俺の依頼で動いてくれるようになったのだが……まぁ、アイツもアイツで勧善懲悪のようなイベントをやっているらしいな。


「……いや、駄目か。最近は闇ギルドとドンパチやるって言ってたし」

『それでしたら、既に終わったいるそうですよ。ただ、新たに犯罪者の捕縛依頼を受けたそうなので、今は無理かと』

「アイツ、ダークヒーローの才能あるよな」

『本人は色々とツッコみそうですけどね』


 世が世なら、アイツは13な人でも暗殺一家にでもなれそうな程に優れた技術を有している。
 俺があの時勝てたのは、まだこの世界で敗北を知らなかったからであり、今やったらどうなるか……考えるの止めとこ。


「う~ん、森の中に何があるかも気になるしな~。今度行ってみるかな?」

『――お独りで、ですか?』

「…………ア、アハハハハッ!」

『…………』


 ジト目は段々と冷えたものになり、いつしか俺の体感温度はマイナスの域に達する。


「すいません。今回は誰か連れて行くことを誓います。ただ、今回は条件を付けさせて頂くことをお許しください」

『条件……ですか?』


 あぁ、条件だよ。
 アップデートが終わるまでまだ掛かりそうだし、今の間に今後予定を大体纏めておこうかな?
 <千思万考>でそれらを直ぐに行い、レンに条件を告げておく。

 みんなにも伝言してくれるだろうし、選考の準備でもしておこうか。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

処理中です...