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偽善者と未熟者たち 三十九月目

偽善者とデート撮影 その07

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 赤色の世界 紅蓮都市


 動画配信(の真似事)をした果て、別次元から現れた触手の怪物がすべてを掻っ攫って幕を閉じた……うん、しばらくは動画配信のていはしないでおこう。


「ところで、なぜにこの世界なんだ?」


 そんな俺は現在、赤色の世界に来ていた。
 理由はただ一つ──同伴者が、その場所を指定したから。

 白金の髪に桃金の瞳、整った顔立ちは本来待ちゆく人々の視線を釘付けにする。
 今は認識阻害により、それを見るのは俺のみ──だからこそ、敏感に俺を見つけ出す。


「あら、遅刻ですわよ」

「おっと、そりゃあ悪い。言われてすぐに着たつもりなんだが」

「……様式美ですから、気にする必要はありませんわ」

「そうか、様式美か……なら、こういう方が良かったか? ──ううん、今来たところ」

「いや、違うから!?」


 割と正解だと思っていたのだが、どうやらお気に召さないようで。
 口調が崩れてきてしまっているが、そちらは気にしないでおく。

 彼女──リーは不服そうに頬を膨らませ、俺に近づいて指を押し付ける。


「だ・い・た・い! 今回は……その、デートじゃない! どうしてもっと、優しくできないの!?」

「……悪かった、すまん。そうだよな、ならそうだな、お姫様みたいに扱うか?」

「……そうではなく。普段通りでよろしいですから、ああいうからかいをしないで欲しいですわ」

「そっか、ならそうしよう。遅れて悪い、その分サービスするから、許してくれ」


 どうやら、この発言は正解だったようで。
 無言で差し出された手を握り締め、俺たちは移動を始めるのだった。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「──ところで、さっき答えてもらえ損ねたけど、どうしてここなんだ?」

「有り体に言いますと、視察と観光を兼ねておりますわ」

「こっちは基本的に、ウィーに任せているからな。ん? でも、定期的に情報の共有はしているよな」

「自分の目で見て確かめる、それも重要なことですわよ。まあ、ウィーもやっているようですけれど。今回は、メルスとのデートもありましたし、いろいろと意見を聞きながら、巡ってみようと思いましたの」

「……一般庶民には、無理だと思うけどな」

「この世界における一般的な庶民と、メルスの世界とではずいぶんと差がありますわよ。だからこそ、知識としてだけでなく実際に生きてきたメルスの感じるものを、言葉にしてほしいのですわ」

「だといいんだが……」


  ◆   □   ◆   □   ◆


 様々な場所を巡り、リーはその都度手にしたメモ帳に何やら書き留めていた。
 時折俺も意見を求められ、解説を貰うことで何をしているのかを知ることができる。

 そうして練り歩けば時間も経っていく。
 気づけば日が沈む頃、子供たちは帰宅し仕事を終えた大人たちが街を歩く時間帯。


「──もうこんな時間ですの。メルス、そろそろお開きにしましょう」

「了解、と言いたいところだが……最後にもう一つだけ、行きたいな」

「あら、エスコートをしてくださるのならばよろしいですわよ?」


 期待の眼差しを向けられれば、それに応えざるを得ない。
 まったく機能しない演技スキルを頼りにせず、自分なりに気取った態度で手を伸ばす。


「──お手を」

「ええ」


 触れた手を握り──空間転移。
 都市から離れた港、灼熱の世界の海は海水ではなく文字通りのマグマオーシャン。

 結界を張り、防熱性を付与。
 夕日も沈み、少しずつ空は暗く染まる。
 誰も居ない静かな場所で、改めてリーと言葉を交わす。


「それで、こんな人気の無い場所にわざわざ連れ込むなんて……いったい、どういうつもりですの?」

「今のリーに相応しい、シチュエーションを考えていたんだが……うん、残念なことに俺の知識はかなり乏しいからな。いちおう、こういうこともできるにはできるけど」


 指を鳴らすと同時に、火魔法“花火スターマイン”を展開。
 神代(補助)魔法込みでブーストされ、暗くなる世界に彩りが灯っていく。


「なお、無許可だからあとでウィーに謝りに行かないといけない」

「……それを言ったらおしまいよ」

「うん、普段のリーもいいな。いやまあ、頑張って丁寧さを心掛けているのも可愛らしくはあるんだが……お嬢様なリーとは、たっぷり楽しんだからな。最後ぐらい、素のお前を楽しませてくれよ」

「もう、せっかく意識し続けたのに。だいたい、どうしてこんな風に創ったのよ!?」


 リーは武具っ娘であり、その根幹は俺の意識によるものだ。
 ──聖・魔武具の武具っ娘たちと違い、彼女とギーは純粋に俺が生み出した武具。

 だからだろう、種族としての特殊性が無い代わりに他の影響がかなり大きい。
 ……リーは性格的な面で、ギーは肉体的な面で深層心理の癖が反映された気がする。


「まあなんだ、(見ている分には)リーみたいな女の子が好き、ってことなんだろう」

「……絶対に言ってない部分があるのは分かるのに、素直に嬉しい自分がいて悔しい」

「そんな好きな子のために、花火が打ち上がるイイシチュエーションを用意したんだ。このデートのご褒美、いただけるかな?」

「そういうことを口に出すのって、減点対象なんだから……でも、今回は、及第点にしてあげる……」


 花火の音と光が、何もかもを掻き消す。
 それでもたしかに、彼女からのご褒美を受け取ることができた。


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