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偽善者と開かれる新世界 九月目
偽善者と身勝手
しおりを挟む日がな一日、ごろごろする日々が続いてほしいな~。
そんな夏休みの少年や久しぶりの休日を手に入れたサラリーマンのようなことを思う。
偶に言っているが、基本的に俺という存在は【怠惰】なのだ。
面倒なことを眷属に委ね、面倒な仕事は国民を任せ、面倒な使命をプレイヤーに押し付けて……と、基本的に俺ってなんにもやってないよな、うん。
最近は派遣妖女もやっているが、実際に働いているのは彼女たちであり、俺は適当に補助系スキルを発動したり武具になって使ってもらうだけだ。
あ、武具化は(万象変化)の一部を劣化させて使用することで、眷属以外でも使えるようになると気付いたからやっているのだ。
そもそも、何処かに居る主人公やその周りの人たちが、とある問題に関してはやってくれているだろう。
今更情報を開示するが第五陣と呼ばれているプレイヤーの中に、色々と濃い奴らがいるらしい。
遅れてゲームをしてるのに、第一陣より高性能を誇る奴……うん、ソイツが主人公なんじゃないか?
シャインももしかしたら主人公の器だったのかも知れないが、俺の私怨の所為で変な方向に迷走しだしたしな。
そこはある程度責任を取るかな? と最近は思うようになってきたよ。
だからこそ、眷属にも一応登録したしな。
「……なら、俺がやることってなんだ?」
偽善者らしい行動をする――それがそもそもの行動理念? とか言うヤツだった。
だが、最近は偽善をしていない気がする。
……闇泥狼王を救ったのは偽善に含まれる気がするから全くってワケではないのだが、それでも頻度がだいぶ下がったことに違いは無い。
「それじゃあ、偽善ってなんだ?」
俺にとっての偽善――それは無理矢理俺の考える幸せを押し付ける行為のことだ。
相手の考えなどお構いなしに、自分の価値観を相手に強制する……そんな感じである。
それは、子供が陰の方でひっそりとしている奴を遊びに誘うようなことかも知れない。
ソイツにはソイツのやりたいことがあるかも知れないのに、それを無視して自分が楽しいと思うことを無理矢理やらせる。
やればきっと分かってくれるだろう……そう信じて。
普通の奴は成長し、それが迷惑になると理解する。
考え方は千差万別であり、十人十色の思い方がある。
俺は……それを経験と共に理解した。
理解したけど納得はしていない。
「別に、俺がやりたいようにやるだけだ。俺一人ができることなんて高が知れてる」
例え世界最強と呼ばれる龍を倒そうと、例え封印された邪神と対話しようと、それは俺じゃなくてもできたことだろう。
兎と亀の物語。
あれが俺の言いたいことを表している。
俺は兎、主人公は亀。
有した才能を用い、兎は高みへと達した。
それも、武ならば誰にでも負けない程に。
だが亀もまた、弛まぬ努力を行った――兎以上に。
確かに兎は凄いだろう。
それなりの力を誇り、亀を圧倒した。
――だが、亀はもっと凄い。
種族の差という壁をも着実に緻密に経験を積み、いつしか驕った兎を超えて行った。
つまり、こうして俺がのんびりとしている間に、主人公と呼ばれる存在は日々研鑽を重ねていて、いつしか俺は何らかの形でソイツに敗北するというワケだ。
……なんだか話が物凄く逸れている気がするな。
要するに、俺がどれだけ行動をしようと、最後は主人公が上手く纏めて一件落着になるというワケだ。
俺の偽善で傷付いた奴がいたなら、きっと俺を倒しに来るだろう。
罪を償う為に何かをさせ、ハッピーエンドにでもなるんじゃないだろうか?
そうなるって分かっているなら、もう適当に生きても構わないだろう。
主人公が世の面倒事を引き受けてくれるんだし、俺は俺のやりたいようにやるだけさ。
あとのことは後の時に生きている奴に任せれば良い。
「……あ、俺(不老)で(不死)じゃん」
やっぱり、控えめに行動しようかな?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――っと、ここまでワケの分からない俺の主張を聴いてもらったのいたが……どうしてそんなことを、わざわざ今言ったと思うか?
「……ますたー、あれ、倒していい?」
『わたしとしても、本当なら倒したいんですけど……』
今日も今日とで派遣妖女、呼ばれた先では一人のプレイヤーが色々と語っていた。
『――――――――』
……うん、色々と言ってるんだが、アイツの放つ言葉をカットしたからもう聞こえないようになっている。
それぐらいに、呼ばれたばかりの頃に話していた内容が面倒だった。
まぁ、こんな感じだったな。
『僕は選ばれし存在。弱きを救い、強きを挫く……最強の勇者だ!』みたいな(意訳)?
それからは、自分がどれだけ凄いのかを永遠と聞かされている。
時々彼女たちを口説くような言葉も混ざっている気もするが……多分天然で素の状態での発言だと思われる。
どうしてそうなったか……それは、先の闇泥狼王の一件が関わっていた。
アイツが俺に言っていた住処を追い出した存在、それが今ウーヌムの町へと進行しているそうだ。
ギルドはそれをどうにかするため、特別処置として緊急依頼を張り出した。
彼女達もそれに参加し、魔物を討伐しようとする。
クラーレによって俺も召喚され、いざクエストへ――と、いうタイミングでこいつがギルドに入って来たというワケだ。
「あ、みんなも音声をカットする? 攻撃も受けない仕様だから、安心だよ」
『『『『『『お願い(するわ)』』』』』』
そうして俺は、彼女たちにも俺と同等の結界の準備を行っていく。
……コイツが主人公?
なんか違う気がする。
ただただ、狂ってるだけみたいだな。
でも、【固有】持ちならどうにかしないといけないし……ハァ。
放置しとくと、もっと面倒だしな。
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