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偽善者と開かれる新世界 九月目
偽善者と闇泥狼王
しおりを挟むまぁ、そんなこんなで妖女としての活動も行うようになったワケだが、俺は常時彼女たちと共に活動をしていくワケでは無い。
「はい。ますたーにはこれを渡しておくね」
『……これは?』
クラーレの右手の甲に手を当てると、仄かにそこが光り……俺が手を放すとそこには、不思議な模様が刻まれる。
「ここに魔力を集中させて私をイメージすると、その場所に私が召喚されるよ」
『あれ? メルちゃんは、わたしたちと一緒に冒険しないんですか?』
「ますたーたちは、この世界にずっといるワケじゃ無いからね。私はこの場所とは違う世界で、ますたーに呼ばれるのを待っていることになるんだよ」
『そう……ですか……』
眷属印の形を少し崩した模様をクラーレに刻み、渡しておいた。
結晶と同等の効果を持たせてあるので、使えば俺が召喚されるだろう。
「あ、ますたーたちは確か魔物を討伐するためにここに来たんだよね? 魔物の死体……どうするの?」
『メルちゃんが全部倒してくれましたし、今回は違約金を払って諦めようかと思っ――』
「ゴメンね。素材の方は私が持っているから今渡すよ」
クラーレの言葉を敢えて遮り、<複製魔法>で用意した闇泥狼王の素材をその場に置く。
戦闘中にデータは取ってあるので、全身を複製してから解体して取り出してみた。
「これで大丈夫だよね?」
『も、貰ってしまって良いんですか?』
「うん、私には必要の無い物だからね。それが、これからますたーにお世話になる分のお代だと思っていてよ」
『こんなに貰えませんよ!』
そう言って粘るクラーレを、他のメンバーたちと共に説得して強引に渡しておいた。
……まぁ、こっちからしたらただのコピーだしな。
全然困らないんだよ。
その後は、彼女たちと別れて行動を行う。
彼女たちは、ダンジョンボスであった闇泥狼王を倒したことで出現した魔方陣に乗って地上へ向かい、俺はダンジョンの奥に隠されたコアを回収する為に奥地へ行く。
そして現在、コアを"収納空間"に仕舞った俺は、本物の闇泥狼王の死体を取り出して魔法を掛ける(念のため、元の姿に戻ったぞ)。
『……むう。本当にできたのか』
「だから言っただろう。後で仲間も蘇生させるから安心しろ」
『感謝する。私達も本来は争いなどしたくは無かった。しかし、住処を追い出されたあの状況では、人々を傷付けてでも家族を守る必要があったのだ』
状況はリョクと似たようなものである。
それを先程の戦いで訊いたので、色々と芝居を打ってもらったのだ。
そして現在、代表である闇泥狼王を蘇生させたというワケだな。
「話が通じる狼で助かったよ。しかし、お前は王の子供だったのだろう? どうしてわざわざ外に出て狩りをしようとしてたんだ?」
『役割なりの責任というものだ。今まで良い身分を使っていたのだ、私が家族の為に率先して動かなければ駄目であろう』
「そうか。――それで、この後のお前たちの立ち回りについての相談なんだが……」
まぁ、細かい話はカットにするが――第一世界に湿地帯が造られ、そこに狼が生息したとかしないとか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それから、俺の忙しい日々が始まった……てことは無いんだが、偶にクラーレに呼ばれたり、世界開発に向かったりしている。
同時に様々なことをしていると段々と疲労感を感じそうなものだが、<物質再成>で肉体的な疲労は回復しているし、魔法で精神疲労を癒すこともできる。
……うん、魔法最高!
「……擬似的な召喚魔法は可能だが、結局俺の(召喚魔法)は戻って来ない。職業が無いってのは虚しいもんだな」
そう言ってスタータスを確認しても、職業欄には何も記されていない。
今でも俺は無職なため、職業系の能力や補正には肖れていない。
"再現の指輪"で職業固有の動きは再現できても、座標指定を行う必要の有った幾つかのスキルは未だに使用不可能である。
昔手に入れた【ダンジョンマスター】の職業結晶から解析をして、俺でも職業の力を使えるように頑張ってくれてはいるが……残念ながら、それはまだ終わっていない。
「召喚だけなら可能なんだけどな~」
(召喚魔法)の再現はできなくても、頭で座標を指定して何かを取り出すことはできる。
なので、一応召喚自体は可能のだ。
できないのは、それを職業スキルとして認定させること。
既にスキルとして存在するから、(未知適応)も(アレンジ)も発動しない。
……ハァ、チートでも思い通りにいかないこともあるんだな。
さて、どうして俺がそこまで(召喚魔法)に拘っているのか……まぁ、別にそこまでって程でも無いけど。
――それは、(召喚魔法)に二段階目が存在するからだ。
前に一度言った気もするけどな?
[神代魔法]にも、<召喚魔法>というものが存在するという。
別世界のものに干渉し、そこからそれ、またはそれの複製を自分のいる世界へと召喚する魔法。
――召喚したい、小説の続きを!
シャインにでもその小説を読ませれば、一応は解決する。
……いや、自分で読むわ。
(召喚魔法)を覚醒させることで<召喚魔法>へと進化するのだが、使える魔法の一つに異界召喚が可能となる魔法があるのだ。
<次元魔法>で一々地球の座標を探すよりも見つけ易く、<干渉魔法>で他の奴の記憶から本を創り上げるよりも簡単だろ?
ま、そんな理由から、その元となる(召喚魔法)を探しているワケだ。
「あ、また呼ばれた。今度は何をするんだろうな」
足元に召喚陣が光り、クラーレの元へと俺は転送される。
【固有】持ち……他にも会えるだろうか?
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