上 下
480 / 2,519
偽善者と終焉の島 後篇 八月目

偽善者と漆黒の扉

しおりを挟む


夢現空間 修練場


 その日、修練場に置かれた煌びやかな扉が輝いた。
 ……だがそれは、万人する受けする美しさとは言い難い、妖しい輝きであった。

 黒より墨く、闇より昏い――本来ならば近付くことすら不可能なその色に、扉は輝き異常を示す。

 そこに住まう住人たちは直ぐにその事態に気付き、何が起きたかを調べた。
 ……その結果、現在の扉が此処とは違う何処かへと繋がることを見つけ出した。

 その調査結果を聞いた空間の主は、住人たちへこう告げた――

「……うん、面倒だから放っておこう」

 そして、その扉はその光を放ったまま誰からも注目されなくなった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


自室


「あれ、いつまで放っておこうか?」

《特に期限が指定されていない招待状だったからね。座標の方は鍵状にして創っておいたから、向こう側が位置を変えない限りはいつでも行けるよ》


 カッコイイ色に扉が光ったが、別に放置しても問題無いとのことだったので、放置しておくことにした。
 その時が【怠惰】モードであったのが一番の理由だが、その扉の行き先を特定した解析班からの報告を聞いて、よりいっそう面倒になったんだよ。

 今はグーとのトークタイムだ。
 IF編風にやりたかったから、俺は口で話してるがな(ついでに、黒い結晶も首から下げているぞ)。


「……というか、確かに別次元にいるとは言われてたけど……どうして俺のスキルで創った空間に干渉してくるんだろうな。神様から俺の空間って、簡単に分かるものなのか?」

《この空間でマスターは加護を貰えたんだ。少なくとも、全く見ていないということは無いだろうね。それと、称号『神々の注目』も働いているんじゃないかい? どの神が観ているか……そこだけが心配だけど》

「まぁ、運営神じゃないんだろうな。もしそうだったら、既に世界大戦でも起こしてるんじゃないか?」

《マスターの粗悪品を創るような連中だからね、余程嫌っているように見えるよ》


 コピーされた俺は、"偽りの厄災"と呼ばれる程の存在に狂化されていた。
 視たことも無い職業もいっぱいあったし、再現のし甲斐があるってもんだよ。

 ……って、今はその話をするタイミングではないな。
 俺が言いたいのは――そこまでして俺を嫌う運営神がここに気付いているなら、全プレイヤーに討伐指示を出して直ぐにでも倒そうとすれば良いということだ。
 俺の権利を俺の知らないところで剥奪できるみたいだし、居場所を知っているのなら弱体化も容易くできるだろうに。


「……となると、本命はレイたちが言っていた神様かな? 色的にも丁度当てはまる」

《僕達の知らないところで、GMとイチャコラとは良いご身分だね》

「まぁ、お前たちの主だしな。王代理も務めているからこっちでの身分なら、それなりに高いんじゃないか?」


 そう言ってグーのジト目から目を逸らす。
 ……偶に会っているんだが、その間の情報が空白になるから直ぐバレるんだよな。

 未だに新たなGM姉妹たちとの遭遇は無いのだが、それはそれで会えた時の楽しみがあるから別に良いか(眷属にはなるかは会ってから決めると伝えられたから、という理由もあるけどな)。


《……別に良いんだけどね。マスターがそれなりに僕の要求に付き合ってくれるなら》

「そういうことなら、こっちも全力でやらせてもらうよ」

《ハハッ。それじゃあそうだねぇ……とりあえず、お菓子の御代わりを頼むよ》

「仰せのままに、我が嬢マイレデイ


 練乳入りのアッサム紅茶ティーに合いそうなお菓子を取り出して、"Wifone"へと突っ込む。
 すると、そのままお菓子が中へと吸い込まれていき、この場から消え去る。


《――うん、さすがマスターだね。向こうでの料理経験が0でも、ここまで美味しい料理が可能になるなんて》

「……褒められている気がしないんだが。一応、俺は不器用ってことになってるからな。今は加護で器用さDEX∞になっているけど、現実だったら針を糸の穴に通すこともできないぐらいの不器用さだぞ」

《それは知っているけど、だからこそ凄いと思うんじゃないかい。できないことができる力――スキルという概念は、とても調べ甲斐があるものだよ》

「頑張って見つけてくれよな。そこは俺も気になってることだし」


 この後は、スキルトークになっていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


???


「……遅い! どれだけ待っていると思っているのだ!」

 真っ暗なその世界で、少女は何かに憤りを感じ、叫んでいた。

 つい先日のことである。
 目的の人物があの古龍を倒した――それを知った少女は、直ぐにその者の世界に置かれた次元の扉を、自身の世界へと繋がるように仕込んだ。
 それなのに……。

「どうしていつまでも来ないのだ!」

 自身の体に絡まっている鎖がジャラジャラと鳴り、余計にイライラする少女。

 ――全く来ていないのだ、その者が。
 扉を維持している力も無限にあるワケでは無い。
 それなのに、その者は少女の力が尽きかけている今になっても来ていない。

「もうこれ以上は辛いの……あっ」

 そして今、扉を繋ぐ為の力が尽き、その者がここに来る可能性は無くなった。

「なんでなのだー!!」

 再び力を蓄えて扉を繋いだ時、もしその者がここに来たならば……


「絶対に、ブン殴ってやるのだ」

 縛られた腕を振るい、その者にパンチをぶつけるイメージを行う少女であった。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...