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偽善者と終焉の島 後篇 八月目
偽善者と漆黒の扉
しおりを挟む夢現空間 修練場
その日、修練場に置かれた煌びやかな扉が輝いた。
……だがそれは、万人する受けする美しさとは言い難い、妖しい輝きであった。
黒より墨く、闇より昏い――本来ならば近付くことすら不可能なその色に、扉は輝き異常を示す。
そこに住まう住人たちは直ぐにその事態に気付き、何が起きたかを調べた。
……その結果、現在の扉が此処とは違う何処かへと繋がることを見つけ出した。
その調査結果を聞いた空間の主は、住人たちへこう告げた――
「……うん、面倒だから放っておこう」
そして、その扉はその光を放ったまま誰からも注目されなくなった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
自室
「あれ、いつまで放っておこうか?」
《特に期限が指定されていない招待状だったからね。座標の方は鍵状にして創っておいたから、向こう側が位置を変えない限りはいつでも行けるよ》
カッコイイ色に扉が光ったが、別に放置しても問題無いとのことだったので、放置しておくことにした。
その時が【怠惰】モードであったのが一番の理由だが、その扉の行き先を特定した解析班からの報告を聞いて、よりいっそう面倒になったんだよ。
今はグーとのトークタイムだ。
IF編風にやりたかったから、俺は口で話してるがな(ついでに、黒い結晶も首から下げているぞ)。
「……というか、確かに別次元にいるとは言われてたけど……どうして俺のスキルで創った空間に干渉してくるんだろうな。神様から俺の空間って、簡単に分かるものなのか?」
《この空間でマスターは加護を貰えたんだ。少なくとも、全く見ていないということは無いだろうね。それと、称号『神々の注目』も働いているんじゃないかい? どの神が観ているか……そこだけが心配だけど》
「まぁ、運営神じゃないんだろうな。もしそうだったら、既に世界大戦でも起こしてるんじゃないか?」
《マスターの粗悪品を創るような連中だからね、余程嫌っているように見えるよ》
コピーされた俺は、"偽りの厄災"と呼ばれる程の存在に狂化されていた。
視たことも無い職業もいっぱいあったし、再現のし甲斐があるってもんだよ。
……って、今はその話をするタイミングではないな。
俺が言いたいのは――そこまでして俺を嫌う運営神がここに気付いているなら、全プレイヤーに討伐指示を出して直ぐにでも倒そうとすれば良いということだ。
俺の権利を俺の知らないところで剥奪できるみたいだし、居場所を知っているのなら弱体化も容易くできるだろうに。
「……となると、本命はレイたちが言っていた神様かな? 色的にも丁度当てはまる」
《僕達の知らないところで、GMとイチャコラとは良いご身分だね》
「まぁ、お前たちの主だしな。王代理も務めているからこっちでの身分なら、それなりに高いんじゃないか?」
そう言ってグーのジト目から目を逸らす。
……偶に会っているんだが、その間の情報が空白になるから直ぐバレるんだよな。
未だに新たなGM姉妹たちとの遭遇は無いのだが、それはそれで会えた時の楽しみがあるから別に良いか(眷属にはなるかは会ってから決めると伝えられたから、という理由もあるけどな)。
《……別に良いんだけどね。マスターがそれなりに僕の要求に付き合ってくれるなら》
「そういうことなら、こっちも全力でやらせてもらうよ」
《ハハッ。それじゃあそうだねぇ……とりあえず、お菓子の御代わりを頼むよ》
「仰せのままに、我が嬢」
練乳入りのアッサム紅茶に合いそうなお菓子を取り出して、"Wifone"へと突っ込む。
すると、そのままお菓子が中へと吸い込まれていき、この場から消え去る。
《――うん、さすがマスターだね。向こうでの料理経験が0でも、ここまで美味しい料理が可能になるなんて》
「……褒められている気がしないんだが。一応、俺は不器用ってことになってるからな。今は加護で器用さ∞になっているけど、現実だったら針を糸の穴に通すこともできないぐらいの不器用さだぞ」
《それは知っているけど、だからこそ凄いと思うんじゃないかい。できないことができる力――スキルという概念は、とても調べ甲斐があるものだよ》
「頑張って見つけてくれよな。そこは俺も気になってることだし」
この後は、スキルトークになっていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
???
「……遅い! どれだけ待っていると思っているのだ!」
真っ暗なその世界で、少女は何かに憤りを感じ、叫んでいた。
つい先日のことである。
目的の人物があの古龍を倒した――それを知った少女は、直ぐにその者の世界に置かれた次元の扉を、自身の世界へと繋がるように仕込んだ。
それなのに……。
「どうしていつまでも来ないのだ!」
自身の体に絡まっている鎖がジャラジャラと鳴り、余計にイライラする少女。
――全く来ていないのだ、その者が。
扉を維持している力も無限にあるワケでは無い。
それなのに、その者は少女の力が尽きかけている今になっても来ていない。
「もうこれ以上は辛いの……あっ」
そして今、扉を繋ぐ為の力が尽き、その者がここに来る可能性は無くなった。
「なんでなのだー!!」
再び力を蓄えて扉を繋いだ時、もしその者がここに来たならば……
「絶対に、ブン殴ってやるのだ」
縛られた腕を振るい、その者にパンチをぶつけるイメージを行う少女であった。
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