464 / 2,518
偽善者と終焉の島 後篇 八月目
偽善者と『極塔之主』 その13
しおりを挟む「――レヴィアタンを倒した彼女たちは、遂に98階層へと到達した。フィールドは先程と似通っており、小島が階層中に置かれているものであったが、最も異なる点として……宙に浮いていることが挙げられるだろう。
そこは彼女たちが戦うボスモンスター、天空獣王ジズが待ち構える天空フィールドだったのだ。前足の無いグリフォンのようなその魔物は、激しい暴風を以って小島ごと彼女たちを吹き飛ばす戦法を取った。
結界や壁を生成して風を防ぐことはできても、固定がされていない小島を守ることはできなかった。その為彼女たちは、階層の端まで何度か飛ばされることになる。
小島には何故か魔核が埋め込まれており、それに魔力を流すことである程度移動が可能となっていた。それに気付いた彼女たちは、幾つかのグループに分かれての戦闘を行う。魔力を注ぐ者、小島や仲間を守る者、小島でジズと戦う者、空を飛んで戦う者……翼を持つ者たちは、そりゃあもうアクロバティックに空を駆けて戦っていった。巨大な翼を攻撃して風を起こせないように羽をズタボロにしたり、体中の部位という部位を傷付けて弱体化させたりしてな。
弱ったジズが咆哮を上げると、小島がジズに周辺に集まって巨大な大陸のような地形を造り上げられた。この世界の魔物は、翼の力だけで飛んでいない魔物も多い為、現在もジズは空を飛んでいる……が、最終決戦的にはこっちの方がありがたい気がするな。
勿論その選択は不正解だ。グループを分ける必要が無くなった眷属は、今出せる限界の一撃を放ち――最後の魔物は死んで逝った。
だが、問題はこれからだ。
Wifoneにジズを収納した途端……彼女たちは全力の速度で次の階層を目指した。これには深いワケがあるのだが(ドドドッ)……説明している暇はなさそうだ」
『……な、なぁ。本当に大丈夫……なんだよな? 俺、殺されねぇよな?』
現在俺とカナタは、大神殿のような豪華絢爛な舞台で相対している。
宝箱から入手したというレア装備に身を固めたカナタだが、見た目が少女な為、可愛いという感想しか出て来ない。
が、流石最強ダンジョンの宝箱から出てくる装備なだけあって、メイドin俺の装備の中でもかなり上位に匹敵する物が主であった。
いつか、レンと造るダンジョンもそうなるのかな?
「だ、大丈夫だろ。お前自体はほらっ、何もしてない……ワケだ……し……あっ」
『お、おいっ。何だよその嫌な予感だらけのその間は!』
「……スライム(ボソッ)」
『うぐっ』
「触手、クトゥルー、ぬるぬる、ダメ絶対……(ボソボソ)」
『……お、俺、殺されねぇよな?』
罪状を呟いていくと、顔面蒼白な状態で怯えていく。
……確かに、あの無双を見た後ともなれば恐怖だよな~。
「ま、何があっても俺が説得するさ。……カナタがそう思ってくれているかどうかは別にしてもさ、俺たち……友達、だろ?」
『メルス……。そうだよな! 俺達、親友だよな!!』
え? いや、親友とまでは言って無いんだが……まぁ、友達いない歴=歩んだ人生の俺には嬉しいことだから、否定はしなくても良いか。
「そうだな。あ、でも、親友って言葉に盾にして、調子に乗ったら多分殺されるぞ」
『分かってるって。初めての親友を利用するなんて、そんな酷いことするワケ無いじゃないか♪』
……今のセリフ、見た目が少女だったから良かったけど、もし男のままでやられていたら……ウプッ。
そんな会話をしていると、遂に眷属たちが個の階層へとやってきた。
激しい移動音と共に、最初に辿り着いたのは――
『やった~、一番乗り~!』
「……えっと、おめでとうだな――ディオ」
一番に辿り着いたのは、{多重存在}によって創られた少女ディオである。
色だけ説明するならば、オレンジ色の髪と瞳を持っているぞ(別に石仮面や吸血鬼、幽波紋とは関係無いからな)。
他の娘たちもこの階層へと到達するが、皆が皆、悔しさを感じ取れるアクションをしている。
とりあえずカナタに話をつけ、ディオの元へと向かう。
『――ッ! メ、メルス様!? あ、ありがたきお言葉、感謝致します』
「別に、そんなに硬い言葉を使わなくても良いんだぞ。ほら、さっきみたいに伸ばしてくれても構わないからさ」
『で、ですが、それではメルス様への敬意というものが――』
「う~ん、俺には敬われる価値なんて無いと思うが、それを言うと周りに怒られるしな~(……よし、なら二人きりの時、素のままでいてくれよ)」
『は、はい! 分かりました!!』
最後の言葉は念入りに偽装したから、多分他の眷属たちには分からないだろう。
秘密の一つや二つぐらい、彼女にも作ってあげたかったんだ。
『……そ、それでですねメルス様。れ、例のアレなのですが――』
「それに関しては後程だ。今は……親友との決着をつけさせてくれ」
軽くディオを撫でた後、再びカナタの待つ舞台へと上がる。
「――待たせたな。これがダンジョンバトル最後の決戦だ」
『あぁ、分かっているさ。先に相手に参ったと言わせた方が勝ち……これで良いよな』
「それで充分だ。死なせないってルールなら何でも良い――ドゥル、セット"天"を送ってくれ!」
『仰せのままに、我が王』
入口で何かをやっていたドゥルは、俺の言葉を聞いて、頼んだ装備を俺の周囲に召喚してくれる。
"着装"と念じると、それらは一瞬の内俺の身を包む。
――さて、どうなることやら。
0
お気に入りに追加
510
あなたにおすすめの小説
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
DPO~拳士は不遇職だけど武術の心得があれば問題ないよね?
破滅
ファンタジー
2180年1月14日DPOドリームポッシビリティーオンラインという完全没入型VRMMORPGが発売された。
そのゲームは五感を完全に再現し広大なフィールドと高度なグラフィック現実としか思えないほどリアルを追求したゲームであった。
無限に存在する職業やスキルそれはキャラクター1人1人が自分に合ったものを選んで始めることができる
そんな中、神崎翔は不遇職と言われる拳士を選んでDPOを始めた…
表紙のイラストを書いてくれたそらはさんと
イラストのurlになります
作品へのリンク(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=43088028)
虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。
Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。
最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!?
ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。
はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切)
1話約1000文字です
01章――バトル無し・下準備回
02章――冒険の始まり・死に続ける
03章――『超越者』・騎士の国へ
04章――森の守護獣・イベント参加
05章――ダンジョン・未知との遭遇
06章──仙人の街・帝国の進撃
07章──強さを求めて・錬金の王
08章──魔族の侵略・魔王との邂逅
09章──匠天の証明・眠る機械龍
10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女
11章──アンヤク・封じられし人形
12章──獣人の都・蔓延る闘争
13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者
14章──天の集い・北の果て
15章──刀の王様・眠れる妖精
16章──腕輪祭り・悪鬼騒動
17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕
18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王
19章──剋服の試練・ギルド問題
20章──五州騒動・迷宮イベント
21章──VS戦乙女・就職活動
22章──休日開放・家族冒険
23章──千■万■・■■の主(予定)
タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。
モノ作りに没頭していたら、いつの間にかトッププレイヤーになっていた件
こばやん2号
ファンタジー
高校一年生の夏休み、既に宿題を終えた山田彰(やまだあきら)は、美人で巨乳な幼馴染の森杉保奈美(もりすぎほなみ)にとあるゲームを一緒にやらないかと誘われる。
だが、あるトラウマから彼女と一緒にゲームをすることを断った彰だったが、そのゲームが自分の好きなクラフト系のゲームであることに気付いた。
好きなジャンルのゲームという誘惑に勝てず、保奈美には内緒でゲームを始めてみると、あれよあれよという間にトッププレイヤーとして認知されてしまっていた。
これは、ずっと一人でプレイしてきたクラフト系ゲーマーが、多人数参加型のオンラインゲームに参加した結果どうなるのかと描いた無自覚系やらかしVRMMO物語である。
※更新頻度は不定期ですが、よければどうぞ
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる