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偽善者と終焉の島 後篇 八月目

偽善者と『極塔之主』 その09

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 その映像内では巨大な魔物一体とその配下たちが、二人の眷属を相手に奮闘していた。


「アレは……グラとセイだな。意外と早く上に着いたんだな。カナタ、このボスって一体なんて名前なんだ?」


 その魔物は、巨大なマッチョに犬の頭を取り付けたような容貌である。
 まぁ、どこかで見たことがある気がするんだが……。


『ん? 観て分からないのか? アレは10階層ボスのコボルトエンペラーとその配下、コボルトキングたちだ。その内(配下召喚)ってスキルで、チャンピオンやナイト、アサシンやソーサラーとかが出てくるぞ』

「いやいや、俺も(元)ダンジョンマスターだから一応分かる。だけど、アレはもうコボルトって言って良いのか?」

『あぁ……確かに、進化するごとに筋肉質になるからなー。でも、それならどの魔物だって大体同じだろ? 成長した力を余らせて、筋肉になるじゃないか』


 確かに、力こそが全て! 的な感じで育てていればそうなると思うが……。


「んなワケ無いだろう。ちゃんと特訓させれば……ほら、映像のこれ見て」

『ん? コイツ……鬼人じゃねぇか!』


 カナタが観ているのは、白い大剣を持った角の生えた美女である。
 一振りごとに大量の魔物を屠り続けているからか、楽しそうな顔であった。


「ゴブリンキングの時、見つけた従魔のリョクだ。今の種族は鬼人女王だな」

『育ててこうなるもんなんだな……って、おい待て』

「ん? 何か問題でもあったか?」

『いや、コイツ……女だよな。どうしてキングなんだ?』

「……さて、10階層のバトルに戻ろうぜ」

《露骨に話を逸らしていますね》

『あぁ、これは絶対に裏があるな』


 えぇ、ありますともありますとも!
 だがしかし、お前達に言うワケにはまだいかないんだよ!

 映像の方を見ると、グラとセイが協力し合いながらコボルトたちを圧倒しているのが見て取れる。
 グラは手袋を嵌め、セイは銃剣の握り、お互いの力を十全に扱えるような状態での戦闘が行われていた。


「グラは何でも喰べられて、セイはそれを効率良く放出できる。だから、二人はそれらを有効的に使っている。
 グラが嵌めている手袋、アレは指先から銃系統のスキルが使える魔具だ。接近戦に持ち込んで直接喰らっていけるから、彼女本来のスキルも扱いやすいんだよ。
 セイが持っているのは……カナタでも分かるか。グラが喰らったものを全部弾丸にするなら、やっぱり銃が無いとな。セイ自身の剣の扱いも上手いから剣も付けてるし、近接も遠距離もどっちもできる娘だ」


 コボルトの上位種がどれだけ(配下召喚)を使おうと、それは一瞬で消え去ってしまう。
 セイがグラを補助する為に放つ時弾が、彼女たちの動きを加速させ――文字通り、刹那の如き速さで魔物を消し去っていくのだ。


『おいおい、アイツらもアイツらで結構強い筈なんだが……あの二人ってどんぐらいのステータスなんだ?』

「今の能力値は、LUC以外10000だぞ。スキルはさっき言った感じのスキルと、彼女達の種族に関するスキルだな」

『10000って……なら、あの無双もまだ納得だな。で、種族はなんだ? 見た感じは犬獣人と天使に見えるが……さっきの感じからして違うんだろうが』

「ご明察。ケルベロスと熾天使だな」

《どちらもいわゆる、希少種のようですね》

『AFOってのは、そんなにレア種族がいっぱいいる世界だったのか』

「あぁいや、違う違う。俺も眷属以外でレアな種族に会った経験はあんまり無いし、多分遭遇率は同じぐらいだぞ。カナタ、天使ならダンジョンで召喚できるんじゃないのか?」

『まぁ、うちのダンジョンの方針は中立に一応はなってるしな。召喚の前提条件は満たしてるが……それでも善に性格が認証されてないから、天使は召喚できないぞ』

「方針? 性格?」


 何、その英霊みたいな属性設定!
 ダンジョンって、そんな機能あったの!


「……まぁ、それについては後でじっくり聞かせてもらうとして、お前らのコボルト……もうラスト一匹しかいないぞ」

『うげっ』
《……ハァ》


 映像を観ると、コボルトエンペラーがズタボロな状態で這い蹲っていた。
 グラとセイは周りの魔物をアプリで回収してから……ソイツの命を喰らった。


「カナタ、このダンジョンは必ずボスを倒さないと上に行けないのか?」

『あ、あぁ。同じ奴が入るならスルーして次に行けるが、未討伐の奴がいるパーティーなら必ず倒さないとならない。ドロップアイテム狙いの周回なら、リポップタイムが必要になるがな』

《周回する毎にドロップ確率が下がっていくという、鬼畜仕様ですがね》

「怖ッ! その仕組みを考えた奴の顔を見てみたい……って、そこにいたわ」

『……俺もあとで考え直して、悪魔の発想だと思った』


 検証班でも気付けないんじゃないか?
 理由の全てを『物欲センサー』の一言で済ませられてしまうんだからな。


「さて、11階層に行った二人でありますが……地形が違うんだな」

『10階層までは普通の塔だが、それ以降は10階層ごとに地形が変わるんだ』

《11階層から20階層は、洞窟風になっています。それ以降はダンジョンらしからぬ、マスターの残念なセンスが光っていますよ》

『おいっ! 俺の考えたパーフェクトな地形設定にケチを付けるなよ!』

「まぁ、今回は悪いがカナタに賛成だな。地形は把握しているが、俺も同じような地形を設定したことがあるからな」

『おぉ! 分かってくれるかメルス! そうだよなー、やっぱり自由にできるなら、それなりの地形にしたいよな~』

「そうそう、普段居られない感じの場所にするのがたまらないよな~」


 この後話が少々脱線し、フィールドに関する話で盛り上がった。


《……ハァ。全く、これだから男性のロマンというものは》


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