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偽善者と終焉の島 後篇 八月目

偽善者と放映試合 その05

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『ここでチャル様が脱落です。さすが某流星弾を模した一撃――まさに、星降る夜の魔王ですね』

『あれ、天使じゃなかったっけ? でも、他のみんなはその後のマグマも対処できているみたい』

『皆様にとっては、最初の彗星さえどうにかできれば、後は簡単ですので。直接攻撃でさえなければ、超人的な能力値で自然影響など捻じ伏せることもできます』

『……そういう人、地球じゃ創作物の中でしか見たことないし、居ても困るね』


 全くだよ。
 どのようなな形であれ、自分と違うものを持つ者を人は恐れる。
 平々凡々の塊である一般ピーポーもまた、自身より優れた者へ【嫉妬】をする。
 ……まぁ、上の者が多すぎて諦念の域に達しているがな。

 地球に創作物の住人みたいな奴らがいるかどうか……それは当然俺なんかには分からなかった。
 モブがそんないかにも特殊な事情を抱え持つ奴に気付くことなんて無いからな。


閑話休題ん、フラグ?


 ま、そんな居るかどうかも分からない奴の話は置いておくとして、強者への対応策を考えないとな~。
 現在彼女達は、マグマを避ける為に創った壁を片付けている――そのままにすると、俺に魔力を回収されるからな。
 その内回収が終わるだろうから、その時はきっと、それが開戦の合図となるだろう。


「(う~ん……セイ、グラ。頼めるか?)」

《良いよ~》
《畏まりました》


 両手には対になるようなデザインの二挺拳銃が握り締められ、彼女達のやる気を表すようにキラリと光を放っている。


「ま、早速クロックアップで行ってみようか(――"時弾生成・一")」


 右手に握られた聖なる銃に、加速の意思を籠めて弾丸を装填して放ち、俺自身の時間の進み方を早める。


『………………ッ!!』

「あ、悪い。加速してるからなんて言ってるか分からないんだ……って言ってるのも解るかどうか分からないな(――"氣喰弾生成")」


 超速で移動するまだ目が慣れていない彼女たちは、密集して俺からの不意打ちを受け無いように身構えている。
 相手の氣力を喰らっていく弾丸を、左手に握り締めた銃から放っていく。
 彼女たちの周囲からランダムで放たれたそれらは、斬撃や息吹によって一瞬で消滅させられていく。
 弾丸の速度に間に合わず、当たる寸前に対処していくこともあったが――結局弾丸は一発も当たらなかった。

 集まっているのは愚策と言う者もいるが、一人一人の実力が高い場合、それは愚策とも限らない。

 ほんの少しの間だけで充分なのだ。
 それだけあれば――


『――――!』

「目が、体が、もう俺の速度に慣れてくるだろうしな! (――"銀の弾丸")」


 流石に(時空魔法)による加速では追いつくことはできないが、思考だけを加速させた場合ならば、俺の行動を視認することが可能である。
 そこに自身の戦闘によって培われた直感を合わせ、俺の動きを当ててるのだろう。


「だけど、そう簡単にやられる訳にはいかないんだよ! (――"剣弾ソードバレット""槍弾ランスバレット""槌弾ハンマーバレット")」


 放たれた弾丸はそれぞれ別の武器の形を模り、その武器の特徴を現していく。

 剣の弾丸は茨や樹木を切り裂き、
 槍の弾丸は息吹を穿ち、
 槌の弾丸は防いだ腕ごと体を吹き飛ばす。

 腕に受けた衝撃で吹き飛んだのは、元聖獣であるクエラムだ。
 如何《いかん《せん、新たに魔物を取り込んで再生力を上げた為、体を消耗品のように考え始めた彼女(?)。
 自身が事前に対処法を考えていなかった攻撃は、そうして体で受けていたのだ。

 今回はそれが仇となった。
 円陣の中から一人弾き飛ばされたクエラムは、俺にとって恰好の獲物となる。


「――ありゃ、時間切れか」

『クッ、このままではいられぬ。喰らえ――"聖爪斬"!』

「甘い、甘すぎるぞクエラム。爪のスキルを合成するまでは良かったが、威力をもう少し上げるべきだったな。その一撃、使わせて貰うぞ(――"時弾生成・四""疲喰弾生成")」


 苦し紛れに振るわれる爪による斬撃を、俺は両手を広げて受け入れる。
 その瞬間、体が焼けるようの感覚に頭の処理能力を奪われそうになるが、それでも根気強く耐えてそれを抑えつける。

 そして、新たに創られた二種類の弾丸を体内に撃ち込でいくと、その傷は一瞬で元通りになる。

 片方は肉体の時間を遡る弾丸、
 もう片方は――


「――ダメージを喰らう弾丸だよ! 殺るなら一撃で殺らなきゃ駄目だぞ(――"暴食弾生成")」

『むぅ……次はそうしよう』

「それじゃあ、後は外野での観戦になっちゃうけど、しっかり観ててくれよな(――"ハートショット")」


 心臓に狙いを付けて、受けたダメージをそのまま弾丸に込めて放つ。
 先程の反撃で無理な姿勢を取っていたクエラムは、避けることもできずそのまま心臓を射抜かれてこの場から退場した。

 しっかし、相手が相手なだけに倒すのに結構な時間が掛かるよな~。

 あ、あれ撃てば一気に減るかな?


「(おーい二人共、久しぶりにアレを試してみて良いか?)」

《だいじょーぶ》
《勿論です、いつでもどうぞ》

「(オッケー、ならやるぞ――"聖魔一対""聖魔混合")」


 右手と左手を重ねるように合わせると、握り締めていた二つの拳銃が融合し、神々しくも禍々しい馬上筒のような拳銃が現れる。


「神氣注入――クリア。聖氣・邪氣への変換――クリア」


 段階を踏んでいくと、銃口に純白と漆黒のオーラが可視化される程に集まっていく。
 それに気付いた彼女たちは大まかに分けて二つの選択を行った。
 俺を先に潰すタイプと、防御態勢を再び行うタイプだ。
 う~ん、どっちが正解かな?

 (転移眼)で再び銃口の先に彼女達全員を収めるようにしてから~っと――


「チャージ完了――"双極バイポーラー"発射(広範/極大)」

 ギュイィィィィィン!!

 引き金を引くと、視界を奪う程の閃光が空間を貫いていった。


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