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偽善者と終焉の島 後篇 八月目

偽善者と天上の転生者 中篇

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失墜の天空都市 最下層


 ……だと思っていた場所だ。
 実際には色々と封印用の世界とかもあったし、まだ仕掛けがあって、別の部屋もあるんじゃないか?
 目の前を見ると開いたままの宙に浮かんだ扉と、巨大な青い石が飛んでいる様子が確認できる。

 今回は調査の為、単独でこの場所へやって来ている。
 ……転生者が造っていたと分かった今ならば、少し不思議に思った箇所を全て洗うことで、必ず何かが出てくる筈だ。


「う~ん……◯行石自体には、何もおかしい点は見受けられない。まぁ、あるのはかなり奇妙な感じだが、AFOの世界にある特殊な鉱石を使えば可能だろうな。問題はここじゃないってことだ」


 謎は幾つかある。
 だが、俺は生憎頭脳が子供な迷探偵だ。
 真実が一つだろうが二つだろうが、見抜いて解かなければ全て闇の中に葬り去られる。
 事件の手掛かりを一つ一つ検証していき、何があって如何なったかを識る……それが名探偵なんだろうな。


「<千思万考>っと……情報が少な過ぎるな。【思慮分別】も無いところからは識れないとクレームを付けるてるのかな?」


 『禁忌学者』もご愛用の<千思万考>を使ってみたが、今はまだ答えが出て来ない。
 別の疑問は解決したのだが……今はそれを説明するのは止めておこう。


「う~ん……そろそろ手を付けないと駄目みたいだな? プログラムなんて、全然理解できないんだけどな~」


 飛◯石が入ったケースの付近には、PC以上に大量のキーボードのような端末が設置されていた。
 創作物やテレビでしか見たことの無いような膨大なスイッチの数、一般人の手には余る代物だろ?


「……(機械操作)のスキルも持ってるし、多分どうにかなるだろう。でもまぁ、あの小説みたいに、文明の神様が力を貸してくれたら楽だったんだろうな~」


 魔法や神が存在し、神が人と契約して色々とやる小説があった。
 そこに登場していたヒロインの一人に、某有名な『神に昇進された者』と契約した者がいる。
 彼女は作中に置いて、様々な機械を使っていた。
 それは、彼女がその機械の使い方を知っていたからでは無く、彼女と契約していた存在が、何となくその使い方を理解していたからである。

 いいな~、しかも訳ありだが半神半人の状態でもあったんだぜ、ロマンだよな~。
 俺も機械の神様から加護でも貰って、何となく機械の扱いに長けたいよ~。

 ピコーン ピコーン
《加護:(機械神の加護)を授かりました》
《加護:(機人神の加護)を授かりました》

《(機械神の加護)(機人神の加護)は、(神々の加護)に統合されます》

 ……忘れていた。
 何故だか知らないが、暇な神様がモブを観察していることを。

 機械神は生産神の系譜に連なる神で、機人神は種族:機人系統の神様だ。名前は似ているが、実際の加護の内容は一部の効能が異なるものだった。

 特に違っていたのは、機械神が機械生産に関する補正があることと、機人神が解析能力に補正があることだな。
 自分が担当する役割に沿った加護だったのが幸いであった。

 共通点としては、機械の扱いに長けるという点が提示される。
 ……うん、プログラムも見ただけで何となく分かるようになったよ。


閑話休題諦念が湧く


「ふぃ~、どうにかプログラムの方の解析はできたな。<千思万考>もこれだけあればOKサイン間違いなしだ」


 端末から引き出せた情報は、この都市内全てのエネルギーの供給率に関する情報が主であった。

 ……加護を授かった今でも、中々全てを把握するのは難しい。
 どんだけ高度なプログラムにしたんだよ、アイリとやらは。

 何故それを調べたかというと、こっちに来たばかりで戦った警備用のロボットやここで見た機械に――疑問を抱いたからである。


「何でアイツらは動くことができたんだ? なんで都市のエネルギーは尽きているのに、機械は未だに動いていたんだ? なんでこの石の周りだけが動いていないんだ?」


 迷探偵には分からないが、名探偵ならば真実を見抜いてくれるだろう。


「名探偵<千思万考>発動!」


 内包された【思慮分別】が働き、俺の中で集められた資料を元に答えを導いていく。

 ロボットが動いていたのは使徒や天使が来ても対応できるようにする為。
 彼女がアップデートをしており、俺のような無茶を押し通せる存在――チーターのみが入れるように設定してあったから。

 機械が動いていたのはまだこの都市が生きているから。
 彼女がインフラを調整してあって、飛ぶことはできないが生活はできるようになっている――誰かが来ても、暫らくここに滞在できるように。

 石の近くの機械が止まっていたのは、彼女がわざとそうしたから。
 そこだけが止まっていたのなら、敢えてそれを起動させたくなるのが……日本人って者だろうから。

 情報も集まった、つまりは石を近くの機械全てを作動させればいいのだろう。
 プログラムには、日本人にしか分からない問題を混ぜたパスワード式の暗号が起動キー用の数字の羅列であるものがあったりと……まぁ面倒な仕込みが用意されている。
 そもそもプログラムが分からない日本人なら、理解できないで放置するレベルだぞ(だがしかし、彼女の居た地球の教育水準が高いなら、そうでも無いかも知れないな)。


 カタカタカタッと軽快にキーを打ち込んでいき、飛◯石のエネルギーが周辺の機械にも回るように変更していく。
 ヴィーンッという音と共に、周辺の機械のランプに光が灯る。


≪特殊シークエンス達成確認
 SSoulLLight:アイリスを起動します≫


 何処からか、ロボット達と戦う前に聞こえてきた声が再び放送され、そう告げる。

 すると目の前の石の所からホログラムが出現し、テレビのような画面となる。

 最初はノイズのようなもので画面が埋め尽くされていたのが、段々とそれも消え――最後には、一人の少女の姿が残っていた。


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