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偽善者と未熟者たち 三十九月目
偽善者と迷宮内氾濫 その18
しおりを挟む第四世界 迷宮『千尋山』
そこは俺の暗い衝動を閉じ込めた場所。
眷属たちが本物、魔臣たちが偽物……というか人工の成功物だとすれば、その中にあるのは人工の失敗物だろうか。
なんせ、俺がこの世界で得たチートの限りで試したアレやコレやが注ぎ込まれている。
その度合いは異常なもので、眷属たちに渡したアイテム以上にやりたい放題した。
結果的に、俺はそれらを封印することになるのだが……過去は無くなったりしない。
眷属たちは知識としてそれを知っている、だが実際に目にした者はごく僅かだ。
単純に興味が無いというのもあるかもしれないが、俺がひた隠しにしているのも理由かもしれない……まあ、眷属たちも眷属たちで秘密の研究とかやってたけど。
「──じゃあ、みんなで攻略してね。事情の方は中のみんなに説明してあるから」
「あ、あの……旦那様、ここはその……」
「うん、本当は入ってほしくなかったけど。これでもし、管理を怠っていたからこそ敵の手に渡るのも問題だからね……暴走したときの想定も兼ねて、それぞれの階層に一定時間入ってもらうよ」
「…………マジかよ」
女性陣も男性(?)陣も共に、山型の迷宮の入口へぐいぐい進ませる。
本気で抵抗された時のため、今だけ能力値の方を完全解放中だ。
ロカが露骨に嫌がっているのは、ここの実態をある程度把握しているからだろう。
中にあるモノ関連で、情報を把握しているヤツと接触しているからな。
「何をしてもいい、ただそれぞれの階層で指定してあるアイテムを守ってほしい。僕も無軌道でやった後に、さすがに不味いなぁって思って制御装置を置いておいたから。それさえ守れれば、本番があっても大丈夫だから」
「……逆にそれを奪われるってのが、たしか『お約束』ってヤツなんじゃないか?」
「ああうん、その辺も想定済みだから。国民が傷つけられるレベルの物を抑えるための制御装置だから──僕がチートの限りを創ったモノが、装置程度で制御できるわけないよ」
「…………それ、ガチでヤバいや──」
「そいやっ!」
これ以上は言わせてはいけない。
だんだん顔色を真っ青にしつつあった女性陣の姿を確認し、全員纏めて入り口である門へと押しやった。
まあ、死にはしないので大丈夫だろう。
生物兵器なんかも存在するが、そちらは今回使わないし──ワクチンで対応可能だし、その接種も定期的に国民たちにやっている。
問題は俺が許容したレベル、その範疇であろうと誰かが悪用すること。
……普通に嫌だろう、趣味嗜好が詰め込まれた品々を弄られるのはさ。
「さて、と──レン、聞いているよね?」
《はい、いかがなされましたか?》
「監視……というか見守っていてあげてね。さすがにちょっと、危ないだろうし」
《主様のご趣味全開ですものね》
「うぅ……これでも自重はしたんだよ?」
たとえば、人形が並ぶエリアがあった。
顔は基本的にのっぺりな人形が配置されているのだが、そのほぼすべてがそれぞれ異なる能力──異能を宿している。
それはシンプルに魔力を使って魔法を使うだけでなく、この世界において判明されていない謎エネルギーから成る不可思議な力を使うのだ。
そしてそれを、俺の同郷──つまり地球人が見ればある感想を抱く。
──あれ、これってもしかして『○○の□□』なんじゃ? と。
前者は作品名、後者はキャラ名。
要するに人形たちは俺が見たことのある作品の、キャラクターたちの能力を再現したモノを備えている。
顔が付いていないのは、俺の中の天使と悪魔が戦った結果……当時【天魔】だったヤツが語ると皮肉なものだが。
「あそこだけは、自重度合いが低いからね。能力の方に妥協だけは、したくなかったし」
《あの場所は大変参考になりました》
「…………うん、レンと僕の秘密だよ」
《心得ております♪》
ずいぶんと{感情}豊かになったもので。
迷宮の管理者であるレンだけが、この地の全貌を眷属の中で把握している。
他の者は断片的に、それぞれが担当する内容に合わせた事柄だけだ。
まあ、人形に関しては本当にレンだけしか知らない最重要秘密だけども。
「ちなみに、今はどうしているのかな?」
《現代兵器区画で戦闘中です》
「あー、最初にそこを選んだのかー。あんまり怪我をしないといいけど……」
比較的マシ、それが現代兵器と魔臣たちが戦った場合の想定だ。
現代、まあとはいってもだいたい20世紀から21世紀ぐらいを想定した武装である。
なので主な武器は重火器で、乗り物が用意されている程度。
創作物だとたまに、ファンタジーにまったく通じない場合もあるレベルの代物だ。
だがあそこに並べてあるのは、少々の小細工でいちおうの出力は確保してある。
つまりそれなりのダメージがある、撃たれれば普通に危険な遠距離武器が盛り沢山だ。
「まっ、それでも高レベル相手にはそこまで意味が無いから関係ないんだけど……その辺の改良も、突き詰めたいならやる必要がありそうだよね」
レベルが高くなると、様々な要因で皮膚自体が固くなるので銃弾を跳ね除ける。
爆弾などであればある程度通じるが、それも火傷が主なダメージ源になるだろう。
まあそういった理由もあり、魔臣たちは痛い思いはせど殺されることは無い。
俺もそこまでされてほしいとは思っていないからな、反省さえしてくれればいいのだ。
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