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偽善者と終焉の島 後篇 八月目
偽善者と地中探策 前篇
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俺は再び、この島でのスタート地点へと舞い戻って来た。
《それで、メルスはここに来てどうするつもりだったのかい?》
「いや、穴を掘るなら中心地からやるのがベストかな~って思ってさ。それにほら、ここなら魔物が来ないから安全に掘れるし」
念話として頭の中に聞こえてくるのは、リアの声だ。
今日の当番はリアなんだな。
《あの粉を使えば、どこからでも潜るように侵入できたと思うんだけど?》
「ほら、あの作品って色々な道具を出してくるだろう? こんな時はソレじゃ無くて前に出したアレを使えば良いのに……ってさ。だから、俺もその法則に従って一度使った道具はできるだけ使わないようにしていこうと考えてるんだよ。まぁ、覚えている限りは……だけどな」
例え話をしよう(個人の見解だぞ)。
ドラ◯もんにおいて(使用制限が無制限だと仮定して)、最も便利な道具は何だと思う?
タケコプター? ただ空を飛べるだけ。
どこでもドア? 移動にしか使えない。
暗記パン? 胃が靠れる。
もしもボックス? 実際に居るのは平行世界だし、願いも一つしか言えない。
俺としては――『ソノウソホント』をお薦めする。
言ったセリフと逆の現象が必ず現実に起きるのだ……それは立派なチートと言えよう。
だが、アレは一度だけしか使われず、登場した話数以降全く登場しない。
似た道具に『ウソ800』が存在する。
これも同じ効果を持っているが、液剤タイプの使い切り且(か)つ感動回ということで、主人公が全て使ってしまった。
その後再び補填されたかは分からないが、どちらもそれ以降登場しなかったことに変わりは無い。
――全能が故に出番が失われた……そんな悲しい道具達であった。
《メルス、例えあの作品だって同じ道具ばっかり使っていれば人気作にはならなかったんだよ。色々な状況において様々な道具を用いて少年を救う未来のロボット……そういった作品であったからこそ、名作として今も語り継がれているんだよ》
「俺より深く理解してるな」
《図書館に資料はいっぱいあったからね。でも、どうして英語版の物もあったんだい?》
学校ではそれを読んでたからだよ。
……だけど、枠外の日本語しか読めなかったし――それは言わないでおこう。
「ま、まぁ気にするな。それより今回はあの粉は使わないで、別の方法で地下に行ってみようと思う」
《地面に潜る球上の乗り物かい?》
「それは別の作品だろ!」
俺は奇天烈では無いんだ。
一応造ってはあるが。何があるか分からない地下に、それはさすがに使えないんじゃないか?
「俺が使うのはこの世界の技術だけだ」
《……というと、スキルか魔法かい?》
「異世界チート(笑)ばっかり使う訳にもいかないからな。偶には普通の行動をするのがモブってもんだろう」
そういったことは主人公がやるのがベストだろ?
俺がやってるのは精々、憧れた物語をなぞるように行う――ただの寸劇だ。
だが、リアはそう思わないらしく……。
《ぼくにとっては、メルスは希望の主人公様だよ。そう卑下しなくも良いさ》
「……あんまり恥ずかしいことを言わないでくれよ」
《そうは言ってもね、君がぼくを救ったという事実は変わらないんだ。誰が如何言おうとぼくを救ったのは君で、他の人は何もしていない。夢の中に引き籠ったぼくを外に連れ出してくれた……君はぼくの希望になってくれた。ぼくはあの時のことを決して忘れない》
「いや、忘れてくれよ」
《嫌だね。このことについてはパパとママに絶対に伝えるべきだよ。この話を聞いたら、きっと二人もメルスのことを迎え入れてくれるさ》
「……どこに?」
《そ、それは勿論……家族に、さ……》
「――こういう時、お父さんは娘を守る為にあれこれしてくると思うぞ。それに……それについては覚悟はもう決めてあるさ……ハーレムのだけどな」
《……本当、惚れた方が負けだよね》
「うぐっ、ほ、ほら始めるぞ!」
《はいはい、分かったよ》
純粋な好意程、俺の心を穿つものは無い。
嬉しいがどう反応して良いか困るんだよ。
多分赤くなっている顔を隠す為、俺は早速作業を始めていく。
……手玉に取られているな。
この世界の女性ってのは、本当に強かな奴ばっかりだよ。
作業中
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
基本的には【神羅万象】と【箱庭作り】を用いて、俺は地中へと進んで行く方法を採っている。
土の魔素を地面へと浸透させ、"地形変化"によってトンネルを造り上げる。
下へ下へと魔素を与え続けているが、段々と魔素が通り辛くなっている。
……無理やり大量の魔力を使って通しているから問題は無いが、下に何かがあることが良く分かる証拠だな。
時折周囲の魔物への警戒をしたが、今のところは地中内で魔物を発見していない……のだが――。
【七感知覚】でエコー擬きのことをしていると、地中の反応に変化が起きた。
「リア、もう少し先に広い空間がある。恐らく『吸血龍姫』とやらがそのどこかに封印されている」
《なら、早く行かないとね》
「あぁ、そうだな」
今まで以上に魔力を地面へと垂れ流し、その空間への道を切り開いていく。
そして、辿り着いた先には――。
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