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偽善者と終焉の島 後篇 八月目

偽善者と強者探し 前篇

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夢現空間 グーの部屋


「さて、特訓も一段落ついた……だが、またしても強者の場所が分からない。そこでグー君、君の有する情報を分けてもらいたい」

『…………』

「……やっぱり、飲まなきゃ駄目か?」

『…………』

「……まぁ、別に良いけどな」


 俺は目の前に置かれていたカップに手を付けて、グイッと喉へと通していく。
 濃厚な甘さを持つティーシロップの味を、まろやかなミルクが和らげて、程良い甘さへと中和していく。

 液体が喉を全て通過した後、カップをそっと元の場所に戻して口を開く。


「――これ作ったの、俺だし」

『マスター、折角本家と同様に飲むまでは話さないというIF版の展開を用意したんだ。せめて熱くて咽る、ぐらいして欲しかったよ』

「そういった飲み物に関するクレームは、自分でこの茶を作れるようにしてからにしてくれ。因子は入れてないし、味も本当はどんなものか分からないから俺の――というか、スタ◯のパクリだが、スパイスの成分を微調整するのって結構大変なんだぞ」


 なんせ、あのス◯バなんだ……生半可な気持ちで挑んではいけない代物である。

 ……え? ならなんであの飲み物が◯タバのチャイティーになるかだって?
 一応コラボで企画されたカフェで、チャイティーシロップとミルクを使ったものが、あの飲み物だって書いてあったんだよ。


『――僕だって解析はしたんだよ。だけど、どうしても再現ができないんだ』

「(神手)と(料理神の加護)を持った俺の作った飲み物だしな。ステータスはともかく、神格が俺より上にならないと再現をするのは無理に決まってるじゃないか。普通に作れよ」


 偶に作った物に『神』関連の単語が付くぐらいだ。
 基本的に俺の料理を模倣したところで、それを完全に再現することはほぼ不可能に近いだろう。


『うーん……それが……僕達って、武具としてのスキルと種族としてのスキルしか持っていないだろう?』

「まぁ、そうだな。でも、料理関連のスキルは俺か他の眷属から共有すれば使うことはできるんじゃないか?」

『……本人に、そのスキルを扱う技量があれば、だけどね?』

「お、おい……まさか」


 実在するというのか!?
 あの存在が……創作物においてかなりの高い確率で存在するというあの――


「――飯マズ属性なのか!?」

『ううん、違うよ』


 あ、なんだ違うのか。
 てっきり俺は、料理のLimitがかなり初期から存在しているのかと……。


「なら何なんだ? 他に当て嵌まるのって、種族特性的にできないぐらいしか……でも、リッカやヤンは普通に料理できてるしな」

『僕だって一度は試してみたさ。うん、必要な材料もスキルも全てマスターが用意してあるからね。詳細な作り方もマスターの記憶を観ればすぐに分かるし、僕自身で解析した情報もある。だけど、それがあるからといってマスターと同等の物が作れるワケじゃ無いんだ。マスターは自分で言ったように権能スキルや加護による補助もあるからね。少し手を抜いたとしても、僕達が必死に作った料理よりも美味しい可能性が高いよ。前にホワイトデーに貰ったマカロンを食べたらそれは自明のことだからね。だから、僕達が必死に行うよりももっと誰もが喜ぶ方法もあると思うんだよ。そう、最も料理に長けた人が僕達に料理を作り続ける……とか』

「長い! つまりは?」

『マスターの方が上手くて美味いから、これからの料理作りは全てマスターにお任せしようってことだね』


 ……おいっ。
 とりあえず、そのことについて軽く議論をした後――本題に戻る。


「それで、強者の居場所のことだが……」

『今のマスターが行けるのは三人・・だよ』

「三人?」


 確か……まだ四人居た筈だよな?


『うん、まず一人はこの島の地下――それもかなり深い所に封印されているみたい』

「魔力とか、流れてくる力の種類は分かっているのか?」

『魔力はマスター以下、だけど龍氣の力も感じ取れているよ』

「シュリュみたいなもんか?」


 まぁ、シュリュは龍と辰のミックスという素晴らしいロマンドラゴンだがな。


『彼女の場合は英霊としての力の方が多く感じ取れていたね。だけど、地下にいる存在は龍氣以外にも……別の物が混ざっているみたい。大まかに言うなら吸血鬼、だけど普通の吸血鬼じゃない――そんな力も同時に察知できるよ』


 龍と吸血鬼のミックス……何そのロマン種族!? めっちゃカッコイイじゃん!!
 やっぱこの世界は男の夢を崩さない! そこに痺れる憧れるぅううう!!


『二人目はダンジョンマスターかな? コネット山脈の何処かに、ダンジョンが在るみたいだから……多分そこに一人いるよ』

「ダンジョン? シュリュの所に行く為の特殊フィールドを探している時は、そんなもの見つからなかったんだが……」

『ダンジョンの反応自体はこの島から感じ取れるのに、他のエリアからダンジョンを見つけられなかったんだよ。消去法でそこにダンジョンが在ると思うのさ』

「成程……」


 (ダンジョン感知)が機能しなかったのは、多分Lvが低いからだな。
 ダンジョンの存在を隠蔽する機能があるのは知っている。
 一応でも元【ダンジョンマスター】だし。

 こんな島にあるぐらいだ、それもまた訳ありダンジョン(とマスター)なんだろうな~。


『三人目……というより、こっちの場合は確実に『体』だね。その強者はこの島のかなり上空にいるよ。雲より上、成長した今のマスターでもまだ行くのは難しいだろうけど、全力を解放すればいけそうだったし、念の為説明しておいたよ』

「ま、そっちはお前達の創意工夫に任せておきたい。それで、あと一人はどうなんだ?」

『任せておいてくれ、マスター。
 あと一人……それは、別次元にいるみたいなんだよ。今のマスター独りだと、そっちには完全に行くことができない場所だから、敢えて言わなかっただけだね』

「……<次元魔法>があっても駄目なのか?」


 次元と言えば<次元魔法>。
 こういう時に使わないでいつ使うんだ? と思っていたが――。


『駄目だね。そっちの場所は大量の神氣を消費されているんだ。僕達が何をしようとも、マスターの神格が上昇するまでは絶対に開くことができない。あっち側から一度でも開けてくれれば、自由に行けるようにできるんだけどね』

「神格ね~、今更だが上がるのか?」

『――うん、あるよ。神格を今以上に強化する……とびっきりの方法がね』


 そう言ったグーが見せた笑顔は……何だか嫌な予感のするものであった。

 この後、それを一応聞かされてからこの場から去った。
 ……うん、気にしない。

 さ、さて、次は誰に訊こうかな~?


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