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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と『覇導劉帝』 その09

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夢現空間 居間


『……そうか、其方も導士であったのか』

「導士って言っても、全然自覚は無いんだがな~。そもそも導士って何なんだよ」


 急須でいれたお茶みたいと評判な茶を出して、俺とシュリュは導士について語り合っていた。
 ……今回は眷属ともあまり衝突せずにシュリュを向かい入れられた(物凄く忙しそうに活動をしていたのだが……魔物狩りをしているのだろうか)。

 あ、今のシュリュは人の状態だ。
 黒髪黄眼のボンキュッボンなお姉さんのような姿をしている。
 格好は……スリットがかなり深いアオザイだな(でも、下にズボンを穿いていない気がするんだけど……)。

 本人によると、その姿は自身の最盛期であり、英霊になった後はその姿で固定されるようになったとのことだ。
 聖杯系の発言は無かったし、多分俺がマスターかどうか問う展開も、人理をどうこうする展開も無いんだろうな(……ハァ)。

 おっと、今は導士の説明中だったな。


『導士とは――文字通り導く存在。他者を自身の運命へと組み込むことのできる、選ばれた者達の総称だ』

「け、結構偉い人なんだな」

『……そうでもない。朕は覇道を歩むことを強いられた挙句、あそこへ閉じ込められた。これのどこが天命などであろうか』

「導士が運命を組み込めるんなら、お前の天命は既に俺の運命の中だ。きっと、天命も俺に導かれる為にシュリュを誘導したんじゃないか? 一度目の生を、天命のままに頑張ったんだろう? 二度目は、辛くても耐えたんだろう? 三度目は……まぁ、苦労はすると思うが、俺のハーレムの一人として幸せにするよ」

『……嬉しいには嬉しいが、ハーレムの一人という部分は必要が無かったと思うぞ』


 いや、言っとかないで誤解を生むのってどうかと思うし……。
 記憶は観ているから分かると思うし、口で言うのも大切だって言うだろ?


「ゲフンゲフン、話を戻そうか。シュリュは覇導士なんだよな? その効果は武を以って行う行動に補正が入ると……」

『そうだ。其方はどうなのだ?』

「俺はだな……『闇導士』と『快楽導士』と『煌導士』と『転生導士』と『堕導士』――後はシュリュの『覇導士』だ」

『は……?』


 俺がそう答えると、シュリュは呆然と俺を見てくる。
 ……どうしたんだろうか。


『メルス……其方は、複数の導士の称号を有しているのか?』

「ん? ま、まぁそうだな」

『……導士というものは、自身の運命へと他者を導く者……朕はそう説明した』

「うん、してたな」

『つまり、他者を取り込むまでに魅力を放つ運命――それが『導士』というものだ』

「へ~、そうなんだ~」

『そうなんだ~……ではない! 何故に其方は、複数の『導士』を持っているのだ! 其方の運命は一体どうなっている!!』


 ――怒られました。理不尽な怒られ方だ。


「ぷ、プレイヤーだからじゃないか? ほ、ほら、一応仮初の――しかも神の用意した体だからさ。きっと『導士』も何個か持てるんだよ」

『むぅ、そうなのか……』


 思考を加速させて浮かんだアイデアをシュリュに教え、怒りを何とか沈静化させた……と思ったのだが――。


《シュリュ様、騙されてはいけません。普通のプレイヤーは『導士』そのものを入手できていないのが現状です》

『メルス……其方……』

「いやいやいや、俺も知らなかったんだよ。――てかアン、騙すってなんだ騙すって。人聞きが悪すぎるだろう」

《……恐らくですが、{感情}のどれかが働いているのかと。スキルが模倣できて、称号が模倣できないというのもおかしいかと……》


 無視をしないでくれよ……。
 少々心が傷付いた気もするが、気を取り直して会話に戻る。


「俺としては『運命略奪者』が怪しいと睨んでいるぞ。名前が体を表しているし」

《発動時のログがありませんでしたので、今は分かりませんね。■で隠れている存在が何かをしたという可能性も捨てきれませんが、それも答えの一つかもしれませんね》


 あぁ、そういえばそんなフラグっぽいヤツもあったな。


『そんな凄いものが存在するのか』

「あれ? まだ記憶を全部観た訳じゃ無いんだな。――ある村の人達が非合法な奴隷として捕まってたから、全部奪ってから国民にしたら『運命改変者』が貰えた。その後に、その村に住んでいた子供の中に【封印】のスキル持ちがいたから、それを奪ったら――『運命改変者』に称号が変化したんだ」


 そういえばあれが、クソ女神との最初の縁だったんだよな。
 クソ女神の行動には正直不快感しか覚えないが、レミルと出会えたことを考えると……その分はチャラにしといてやるか。


「ちなみにだが【封印】を外したら、その子供達は【英雄】として急に強くなったぞ」

『ほぉ、それは楽しめそうだな』

「やっぱり戦闘狂なんじゃないか。天命でどうたらってやつは何処に逝ったんだ」

『……『覇導士』として活動していた時間が長かったからか、戦闘を楽しまないと魂がすり減ることを無意識に理解していたからか、いつの間にかこうなっていたのだ』

「……悪いことを言ってしまったな」

『いや、気にするな。其方によって救われたのだ。過去がどうであれ、朕を幸せにしてくれるのだろう?』

「ハーレムの一員としてだがな」

『朕、元皇帝であるのだがな』

「悪いが、うちにはそういうのがたくさんいるから、そういった身分による優遇はやっておりません」


 この島に来るのって、王という単語に関係がある奴が多いんだよな~。


『……むぅ。ならば、仕方が無いか』

「そうそう、なら話を『導士』に戻し《おっとメルス様、ご報告があったことをうっかり忘れていました》……どうしたの?」


 ……一度あったことって、二度目があるんだよな~。
 この後に聞いたアンの報告を聞いて、深く感じたよ。


《――運営によるイベントが、再び始まるようです》


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