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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と『覇導劉帝』 その04

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「(凄い嬉々として俺を殺そうとしてくるんだが……どうすれば良いんだよ――"光迅槍")」

《どうと言われましても、我が王自身の思うがままに》

「(それをやっている結果が、ちょっとずつ殺される確率が上がるってのは俺、少し変だと思うんだけどな! ――"天使の槍")」

《……しかし我が王、ドラゴンの攻撃を受けながら、よくもまぁ私と会話ができますね。幾ら並列で思考をさせているとはいえ、中々の化物っぷりかと》

「(そういうのはな、眷属達に言ってやれよ。全員揃って、俺以上に思考を割いていても平然としているからな――"ペネトレイト")」

《私も眷属ですよ》

「(そんなの皮肉に決まってんだろ! ――"闇迅槍")」

『GUGYAAぁぁぁあああああ!』


 俺の攻撃も少しずつとドラゴン(とりあえず会話ができるまではこっちでとおす)へ届き、ドラゴン本体の意識を取り戻して行っている。

 ……だけど、どうしてそうしていく方が、俺の命を脅かしているのだろうか。

 ただ爪と息吹を使うだけだった時と比べ、今では俺の行動を先読みして攻撃している気がしている。
 段々と回避もままならない為、攻撃系のスキルによる迎撃を行っているのだ。


「(――とは言っても、まだまだ意識は戻っていない。段々と言葉として認識できるようになっているが、それもまだ不完全……はてさて最終的に、俺は四肢を残したまま生きていられるのかな? ――"魔穿鉄堅")」


 矛に魔力を籠めて放ち、強靱な鱗を破壊していく。
 ……が、ドラゴンの自身の鱗が破壊されることを予期していたのだろう。
 体を捻り、矛の当たる部分を最小限まで減らしていた。
 初期にやっていたなら、鱗を大量に減らせた筈なのだが……戦闘狂は面倒だな。


「(ま、今は正気に戻す段階だな。……戻ったところで意味も無い気もするが、今のままよりは満足してくれるだろう。ドゥル、お前は解析の方を完成させてくれ。【乱神狂武】が何度でも発動するスキルだったら困る。だから、それに対する対応策も用意してくれよ)」

《仰せのままに、我が王》


 ドゥルとの連絡を終えると、エリア中を低空飛行で駆け回りながら、ドラゴンへ挑発を行っていく。


『GURRRRぅぅぅううううううう』

「おいおい、世の中の大半の人々は『あ』や『う』だけじゃ会話できないんだぞ。狂っているんだか何だか知らないが、いい加減お前さんの知性とやらを見せてくれよ。ま、お前さんが仮に知性を持っていたとしても、戦闘狂の知性なんて、あって無いようなものなんだろうけどな!」

『GUWOOOぉぉぉぉおおおおおおん!』

「……『お』を足してもお前さんの馬鹿さ加減に変わりは無いだろうよ。大体さ、『あ』と『う』が駄目なら『お』って、どんだけ馬鹿なんだ? 次は『い』ですか? それとも『え』ですか? どっちにしても人に言われてからしか直せないなんて、青春物の不良ぐらい馬鹿じゃねぇか!」

『GUGYAA……れ』

「ったく、そもそも英霊が狂ってるんだよ。属性は狂化・暴走でクラスは狂戦士なんですか? 先に言っておくけど、あれは既に狂ってるからな。理性保ってるし、全然狂って無いんだよ――お前と違ってな!」

『…………まれ』

「どっかの元帝王様なんだと思うけど、何をやったらこんな所に飛ばされるんだか。半端無いステータスは飾りかy『黙れと言っておろうがぁ! 朕を誰と心得るか、元とはいえ劉帝であるぞ! ――頭が高いわ!!』……ようやく話せるようになったか」


 ドラゴンのヘイト値を稼いでいると、ドラゴン――シュリュの頭のどこかでスイッチが入ったのか、彼女の言葉が聞き取れるようになった。
 まぁ、相手はまだ巨大なドラゴンの姿だけどな。

 ……にしてもシュリュ、一人称がまさかの『朕』だぞ。
 朕といえば、天子――つまり皇帝や天皇のみが名乗ることを許された一人称である。
 それを名乗るってことは、シュリュがそれに該当する存在であったということでだ。

 彼女の口ぶりからして、【元■帝】は【元りゅう帝】なのだろう(『りゅう』って、どういう字なんだ――辰? 龍?)。
 とりあえず『帝』という部分が皇帝を意味していたことが、証明されたな。


「お前が何者かなんて知らねぇよ」

『……なんだと』

「この島にいる奴は、昔居た時代や大陸が全然違うんだよ。一々一々全大陸の全国を把握していない俺に、お前がどの国で『俺Tueee』していたかなんて、知る訳ねぇだろう」

『……どうやら死にたいようだな、畜生が』

「ち、畜生?! ……ゴホンッ、その畜生ごときを相手にしておいていつまでも殺せず、逆に痛い目にあっている奴が何を言っているのやら」

『朕は今まで寝ておっただけだ。あまりにか弱い感触でな、気持ち良くて畜生の存在になど気付いておらんかったわ。ただ、その感触が段々と不快に感じてな、その発生源となる畜生をこうして処分しようと、朕直々に動いてやっておるのだ。咽び泣いて甚謝しろ』

「(プチッ)……へ、へぇ~、さすがどこかの御国の皇帝様だな、御自身自らで御動きになられるとは。いや~見事なワンマンシップでございますね~。……そんなんだから、こんな島に封印されたんじゃありませんか?」

『(ブチッ)……ほぅ、言うではないか』

「いえいえ、お前さんこそ」


「『――ハハハハッ! ……ぶっ殺す!』」


 同時にその言葉を発し――第二ラウンドが幕を開けた。


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