上 下
397 / 2,519
偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と『覇導劉帝』 その01

しおりを挟む


「こりゃあまた凄い場所に置いてあるな~」

『まさに、崖の上の……ですね』


 特殊フィールドへの入り口は、雪山の頂上の付近に存在する崖の上にあった。

 ――文字通り、崖の上空100m付近に。


「ドゥル、空の上にある扉なんて、需要があるのか? 鍵穴があるなら排水溝のオジサンが鍵を取って来るし、ちゃんと扉の下に地面があるなら、勇者の盟友が行くと思うが……ただ扉が浮いているだけの状態で、誰があそこに行くんだろうな」

『それは勿論、我が王です』

「……あぁ、そういえばそうでしたね」


 俺、あんな意味も無い所に置かれた扉を目指していましたよ。

 扉へ向かう前に、俺は神眼を使用して扉の周囲を徹底的に調査しておく。
 結界は張られているのか、どんな効果があるのか、扉は何処に繋がっているのか、通った時に生じる影響は……等々。
 最後で油断した奴がロクな目に合わないのは、知識として学習済みだ。

 俺はそんな風にはならないように、ちゃんと調べておく。
 ……フ、フラグじゃないからな。


「結界は……。ドゥル、お前は一度腕輪の中で待機していてくれ」

『……理由をお聞かせ願えますか?』

「結界に、竜族に関係のある者しか通れないような設定が施されているみたいだ。それ以外の者が通過すると、一瞬で体中のありとあらゆる力を吸い取られる……識別型の結界みたいだな」


 つまり竜人や龍人や辰人、亜竜やドラゴンみたいな存在じゃないと、結界に殺されるってワケだ。
 ……ってことは、強者は竜か龍に関係する者――または逆にそれを殺す者か。


「……よし、準備ができたみたいだな。それじゃあ早速――"因子注入・龍人"」


 体の内側から全てを塗り潰していき、俺は龍人へと姿を変えていく。
 体の所々には色が変わる鱗が現れ、俺が人ではない存在に変貌したことを証明してくれる(ま、AFOで純粋な普人であったことって、一度も無いがな)。


「それじゃあ、上空100mに聳える扉までレッツゴー! (――"龍翼生成")」


 鱗同様に不可思議な色を放つ翼を背中から生やし、一気に空へと駆け上がる。


◆   □   ◆   □   ◆


「扉は……また行き先不明か。座標だけなら一応分かるが、結局次元が違うから意味が無いんだよな~」

《次元ですか?》

「そうそう、丁度修練場に置かれている扉と同じような感じだよ。ここの扉は……まぁ、この先にいる強者を封じる為に創られた世界に繋がっているんだと思う」

《VRMMOだと思っていた世界に召喚されたと思いきや、今度は異世界転移ですか。我が王、少々盛り過ぎでは?》

「……盛り過ぎってなんだ。別に俺が貼りたくてそのタグを付けているワケじゃ無い、ただ流動的に生きている際に、そういうタグと出会っただけだよ……俺の記憶の本、今どれだけのタグが付いてるんだろうか」


 ちなみに、他の眷属達の伝記には『主人公Tueee』のタグが必ず付いている。
 実際置かれていた伝記を観て、俺もそう感じたわ。

 ……不思議なのは、俺の記憶の本に『唐変木』だの『朴念仁』だのというタグが付いていたことだ。
 確か、意味は先が分からず屋で後が気の利かない間抜けだったような……そう思われているなら、気を付けないとな。

 捧げる相手の居ない奉公なんて、それはただの独りよがり自慰行為ではないか。


閑話休題さぁ、入ろうか


 扉には次元を渡る為の細工以外は何もされておらず、俺が押しただけで扉は簡単に開いてしまった。

 開かれたその先では――――。


 GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAA……(バタンッ)

「……ドゥル、俺の見間違いか? 扉の先に二対の翼を広げたカッコイイドラゴンが居た気がする」

《そこまで分かっているのに、誤解も何もないと思います》

「……いや、目が完全に逝ってたんだよね、そのドラゴン。完全に狂いに狂ってますって感じの目をしてたんだよ」

《まぁ、ドラゴンの瞳まであの一瞬で。
 ……分かりましたからもう一度見てください。現実がそこで、我が王をお待ちしております》

「やっぱり開けなきゃd《駄目です》……開けますよ開けますよ」


 再び扉を開けると――。


 GURRRRRRRRRRRRRRRRRR……(バタンッ)

「ドゥル、私疲れてるのよ。扉を開いたら、デッカイ蛇みたいな眼しか見えなかったわ」

《完全にバレてますね。先程既に発見されていたと考えるのが妥当かと》

「……いや、ツッコんでくれよ。少し、寂しくなってくるだろう……」


 それは誰かに言うことであって、自分にいうことじゃ無い……とかあったでしょうに。


《我が王の言うことの八割は真実となりますので、否定する必要が御座いません》

「……残りの二割は?」

《……黙秘です》


 俺も今は置いておくとしよう。

 しかし、扉の前で待ち伏せされては困ってしまうな。
 探知や知覚系のスキルも次元を超えての調査はできないし、開けた先で一度でも粗相を仕出かしたら、あのドラゴンも俺を敵対者として認識して殺戮デストロイするだろう。
 ……つまり、選択肢が足りない!


「ドゥル、どうすれば良いと思う? いつまでもここに居るワケにはいかないし……」

『完全に扉に目が密着しているワケではありませんので、それをどうにか避けるのが良いかと……』

「そうだな、少し頑張るか(――"光化")」


 体を光の粒子へと変換し、再び扉へと挑んでいく。
 すると――。


「……あれ? いないな」


 俺は緊張の糸が切れた為か、扉の中へと無意識的に侵入してしまった。

 ――それが罠とも知らずに。


《我が王、上空から何かが来ます!》

「……マジかy――」


 その言葉の一雲耀うんよう後、扉へと光の柱が降り注いだ。


しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

パーティ追放が進化の条件?! チートジョブ『道化師』からの成り上がり。

荒井竜馬
ファンタジー
『第16回ファンタジー小説大賞』奨励賞受賞作品 あらすじ  勢いが凄いと話題のS級パーティ『黒龍の牙』。そのパーティに所属していた『道化師見習い』のアイクは突然パーティを追放されてしまう。  しかし、『道化師見習い』の進化条件がパーティから独立をすることだったアイクは、『道化師見習い』から『道化師』に進化する。  道化師としてのジョブを手に入れたアイクは、高いステータスと新たなスキルも手に入れた。  そして、見習いから独立したアイクの元には助手という女の子が現れたり、使い魔と契約をしたりして多くのクエストをこなしていくことに。  追放されて良かった。思わずそう思ってしまうような世界がアイクを待っていた。  成り上がりとざまぁ、後は異世界で少しゆっくりと。そんなファンタジー小説。  ヒロインは6話から登場します。

World of Fantasia

神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。 世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。 圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。 そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。 現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。 2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。 世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...