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偽善者と終焉の島 中篇 七月目
偽善者とジャックフ□スト
しおりを挟む「――これで最後か?」
『……魔物の反応はありません。間もなくエリアボスが現れるかと思われます』
「そうか、なら待つか」
二本の騎士剣を操るドゥルと共に、雪山を駆け抜けて狩りを行った。
……アレのイメージの所為か、籠手から電撃や炎を放っていたりもしていたな。
その結果魔物は全滅し、今はエリアボスの出現に向けての準備を行っているぞ。
「ドゥル。今更だが、俺の装備を見て……どう思う?」
『凄い……です』
「そうだよな。この場合は大きいも黒いも硬いも使えないよな。だけど、そんなしょんぼりされても困るんだよ」
凄い○○が全然使えなかったや。
俺の装備は(装備限界突破)によってゴテゴテに固められた、チート装備ばかりである。
……関係無いが、ドラゴンのあのゲームってどうして『からだ下』がパンツとその上に装備する物が別で選べないんだろうな。
確かに装備していない時は一応上も下も着ているけど、装備できるもの中に『麻の服』とか『ステテコパンツ』とかがあるんだから別でも良いだろ! と偶に思った(水着系の装備を選んだ時は、初期装備よりも危険になるしな)。
現在のプレイヤー達はファッション用の装備を、条件を満たすことで作れるとのことなのでそういった問題をクリアできるらしいのだが、シャツと鎧とか、パンツとズボンとか――そういうのは別にしてほしいな全く。
……でも、初期装備の上にパンツを重ねることは無いんだから、ズボンを穿く時って、もしかしてそのまま――。
閑話休題
『冗談は置いておくとしても、我が王の今の装備は各方面からクレーム待った無しかと思われます』
「…………」
『装備数の制限は無視、装備している物は全て最高品質、おまけに神器か聖・魔武具――これに何も言わないのは、聖人級の心の持ち主のみでしょう』
「……いや、装備は多い方が強そうだろ?」
『入れ替える必要が無ければ、私の出番が無くなってしまうではないですか!』
「いや、そこなの!?」
理由が完全にドゥルの私意じゃん!
さすがに無理だよ。
裸一貫で突っ込んで、その時々に装備を入れ替えるなんて舐めプは。
『そんな状況……当たり前じゃありませんからね!』
「いや、分かり辛いから。それに、そこに関しては何も求めて無いだろうよ」
『我が王は私をもっと使うべきです。どんな状況でも名を呼ぶだけで武器を用意してくれる……そんな素晴らしい腕輪を』
「……まぁ、この島から出たらな。さすがにここで油断は禁物だと思うし」
『今は……それだけでも嬉しいです』
本当に嬉しそうなのは良いことだが、そんな些細なことで喜ばれる俺って……。
◆ □ ◆ □ ◆
「――ッ! ドゥル、早速仕事だな。とりあえず独りでやってもらうぞ」
『仰せのままに、我が王』
遂に、フィールドに新たな魔物の反応が出現した。
俺達はすぐにその場へと向かう。
「……最後のエリアボスがこれか~」
『ジャックフ□ストというより、じゃあくフ□ストの方がお似合いですね』
俺の目の前には、つららが垂れた真っ白な衣装を着た小人のようなものが沢山立ち並んでいる。
ただ、一体だけが白では無く黒色に体も衣装も包まれた小人が存在しており、他の小人たちを使役しているぞ。
ジャックフロスト・モルタル Lv60
エリアボス アクティブ
地上 同格
〔属性 雪 耐性 全属性
捕捉 同族召喚 同族使役 同族強化……〕
ジャックフロスト Lv50
イベントモンスター パッシブ
地上 格下
〔属性 雪 耐性 水・氷属性
捕捉 従属強化 精霊化 雪魔法〕
強さはそこまでないと思うが、このタイプは数で押してくる方かな?
実際、ジャックフロスト――以後雪だるま――の数が、一瞬では把握できない程に増殖している。
ゆっくり数えてみたところ、現在は120体程周りにいるみたいだ。
……経験値が貰えるなら、レベリングに最適な魔物かな?
「それじゃあドゥル、よろしくな」
『仰せのままに我が王。これより殲滅を開始します』
ドゥルはそう言うと、自身の周りに遠隔兵器を大量に並べていき……雪だるまへと飛ばしていく。
『敵数は膨大、現在も増加中。しかし、負ける理由が見つかりません。我が王、私、この戦闘が終わったら、好きな人に告白してみようと思います』
それは……死亡フラグだな。
っていうか、そのセリフだけで既に告白しているようなもんだろうが。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
≪コネット山脈の"ジャックフロスト・モルタル"が討伐されました≫
《初討伐称号『スピリットスレイヤー』を入手しました》
《ソロ初討伐称号『スピリットスレイヤー・ソロ』を入手しました》
《初討伐報酬を"操雪の短杖"入手しました》
《ソロ初討伐報酬"甘露の霜柱"を入手しました》
≪この放送の全ては秘匿されます≫
「――結構な数を倒したな……」
『千の軍勢は万の信念を以って討ち滅ぼすべきなのです』
「……いや、意味が分からん」
魔弾の王のことを言っているのだけは分かるのだが、ドゥルは別に銀閃や殲撃の風にはなっていないと思うぞ。
何故にここでそれをチョイスしたんだ?
弓は今回の戦闘に一度も出ていなかっただろうに……。
「――って、万の信念なんて無いじゃん。お前と……一応、俺の信念を合わせても二つしか無いだろう」
『我が王の信念は一つではありませんし、我が王へと思いを寄せる者は複数いますので充分ですよ』
「思いって……それ、色恋以外のものも絶対混ざっているよな」
『――と、申しますと?』
「憎悪とか嫌悪とか、侮蔑とか……そういった感情だな。俺にプラスの感情を持っている奴なんて、眷属と国民の極一部だろう」
昔見た(天魔魔法)を使っていた国民、それが数人いるぐらいじゃないか?
眷属以外で悪感情を持たない存在なんて。
『我が王、もっと自分に自信を持ってください。国民は皆、我が王のことを慕っていますよ。そうでない者は既に……(ボソッ)』
「え? 今何か言ったか?」
『いいえ、気の所為でしょう。それより、早く特殊フィールドに向かいましょう』
「お、おう、そうだな」
はぐらかされた気もするが、今はそれより強者との邂逅だな。
俺とドゥルは、特殊フィールドへの入り口へと歩いていった。
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