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偽善者と終焉の島 中篇 七月目
偽善者と遺跡
しおりを挟む「今回は剥き出しだな~」
『遺跡って言うんだっけ?』
「あぁ、俺も実際には見たこと無いけどな」
一般ピーポーが直接見る機会なんてあるワケ無いだろうが。
目の前には、そんな感じの遺跡がデンッと配置されていた。
凄いメカメカしい歯車付きの扉が、特にそれっぽいぞ。
「これも後から見えるようになったのか」
『他の人達が、これに気付かない筈が無いだろうからね』
「全くだ。俺ならまだしも、知識に飢えたあのグーさんがツッコまない筈が無い」
あの日――ネロを回収した日に一緒に居たのはグーだった筈。
それなのにこの場所に気付かない? ……ナイナイ。
「でも、一体どうやって開けるんだろうな。最初は小さくなるだけで通れた。二回目は面倒だったから潜った。だけど今回は……」
『少なくともこの扉の製作者は、開ける為に謎を解いて欲しいんだと思うよ』
そう、説明をちゃんとしていなかったが、扉に付いた歯車には特徴がある。
歯車は一部を除いて動かせるようになっており、何故か2枚の歯車だけ、赤と緑のカラーリングとなっているのだ。
『これ、絶対に全部の歯車を動かせるようにしろって問題だよね。アプリの中に入っていたよ。メルスン、知ってたの?』
「それなら悩むワケが無いだろう。ちょっと歯車の勉強をしてた時の産物だよ」
手を握って戦ったり、『噛み合ってる』だのと言ったりしてたアニメを見た経験による産物だな。
シングルギアだのと名乗っていたが、最終的にデュアルになってたよ。
「でもどうするか~。メルスさんのフルなパワーを使えば余裕も余裕、超余裕で開けられると思うが、全部借り物だしな~。自力で解くとなるとかなり困難だ」
『……さっきの説教は何だったの。私には使えるものは使えとか言ってたのに』
「何事も、時と場合に、よりにけり」
『川柳っぽく言わなくても良いから』
……ここで豆知識。
俳句と川柳の違いは、季語が在るか、切れ字が在るか、文語か口語かで決まるぞ。
今回の場合は季語が無い口語だから、川柳と言うワケだ。
これに、短歌や和歌が割り込んできて面倒なことになっているが……それについては語るのは止めておく。
「――それで、どうするか。二人でゆっくりとこの歯車を解いていくか」
『うん、それd「ただし、今日という日が終わるその瞬間、次の当番が強制的にユラルを排除する」……二つ目は?』
「メルスさんのフルパワーの一つ、梟形の腕輪以上の思考力でパズルを解く」
『黄金比に適いそうな頭脳だね』
「ただし、俺にそれをやる気が殆どしないから却下だ」
『自己中な理由だね!?』
「【傲慢】だからな」
『……なら、他に方法は?』
「そうだな~。古典的な方法があるぞ。具体的に言うと――――――――」
『え、えげつないね』
「それで、どれにするんだ? 一つ目か二つ目か三つ目か」
『それなら……』
この後、ユラルの選んだ選択肢を使って、遺跡の中へと侵入した。
◆ □ ◆ □ ◆
「……っと。やっとか」
『ほ、本当にできたんだね』
「一応対策として壁は硬かった。硬かったが楽だった。元【神器使い】のメルスさんなんだ。便利な神器の一つや二つ、余裕で作ってあるわ」
『神器って、絶対簡単に創れないからね!』
何を言うか。
凡人でも材料さえあれば、幾らでも創れるようなものだぞ。
必要なのは、必要なものに出会うだけのLUCだけだ。
「……ま、今のLUCは0だけどな」
『私も、LUCは一桁だけどね』
「『…………ハァ』」
アンラッキーコンビは、思わず溜め息を吐いた……あんまり不幸だって認識することは無いんだけどな。
『……でもね、メルスン。幾ら神器だからって、扉を無視して穴を掘るのは……私としてもどうかと思うんだけど』
「古来より、横穴が貫通して魔物が飛び出して来たり、扉が開かないならその周りを掘れば良いじゃない、とかが有ったんだ。俺の方法だって使い古されてるんだし、気にすることじゃ無い」
『そういう問題なのかな~?』
「問題無い問題無い。(穴掘り)なんてスキルもあるんだ。寧ろ推奨されてたんじゃないのか? 穴を掘るの」
『……絶対違うよ』
そうか?
ユラルには内緒だがあの歯車、スライドにめっちゃ時間が掛かるよう設計されていた。
しかも一つでも歯車を動かすと、一定時間脱出不可能な結界が展開されるサービス付きだ……やる気がしないわ。
製作者は俺と同じくらい意地が悪いんじゃないか?
俺のダンジョンも色々と設置したからな。
……ダンジョン内のみんな、元気にしているかな~。
移動中の会話集(※面白さを求めていません)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「……赤外線レーザーか」
『あ、怪盗物でよく出たアレだね』
「【七感知覚】があるから色付きで見れるけど、普通の奴はここで死ぬんじゃないのか?」
『メルスンメルスン、私みたいな精神体なら死なないと思うよ』
「甘いなユラル。ただの赤外線じゃ無くて、魔力が練られた赤外線だ。精神体でも感知されるぞ」
『……気を付けないとね』
◆ □ ◆ □ ◆
「今度は……スイッチだな」
『こんな古典的な罠に、引っ掛かる筈無いのにね』
「…………」
『……ねぇメルスン。どうして踏みたそうな顔をしてるの?』
「…………ここで踏んでこその、芸人ってものじゃないか?」
『芸人じゃないじゃん! (カチッ)……って本当に踏んだよっ!!』
「オットー、ワナニヒッカカッチャッター。ヨシユラル、ニゲルぞぶりゅ!」
『メルスンの馬鹿野郎!』
◆ □ ◆ □ ◆
『……ねぇ、ここを何回通ったと思う?』
「……あぁ、三十八回だな。まさかここまで入り組んだ迷宮だとは思っていなかった」
『真っ直ぐだよ! メルスンが何処に行っても罠ばっかり踏むから、転移して振り出しに戻ってるんじゃんかっ!!』
「だけどな、罠はあと六十二個あるんだ。俺にはそれを踏む義務があるんだ」
『クッ。攻撃したくても無効化される』
「同じツッコミはさすがに飽きるからな。それに、索敵した時に消費した分の回復もしないといけないからな」
『……ハァ、ならどんどん終わらせよう』
「もしかしたら、全部の罠を踏まないと開かない扉が有ったりしてな」
『有るワケ無いじゃん!』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「――と思ったユラルであったが、まさか本当にあるとは気付いていなかったのだ」
『……ここの製作者って、実はメルスンなんじゃないの?』
目の前には、左右に何かが動いた後のある枠と、0と表記されたカウンターがある。
「本当に性格が悪いな~……いや、芸人魂が有ると言った方が良いのかな?」
『……もうどっちでも良いよ』
諦めないでくれ。お前がいなくなったら、誰がツッコむんだユラルよ。
「それじゃあ、奥に行ってみよう!」
『……オー』
テンションアゲポヨとサゲポヨ。
そんな違いはあるが、二人は同じ道を進んでいくのであった。
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