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偽善者と終焉の島 中篇 七月目

偽善者と報酬カタログ その05

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『……そろそろ、時間ですね』

『プレイヤーがここにいて良い時間って、実は決まってるのよ。初期設定の時だけは、別なんだけどね』

 そろそろお別れの時間が来たようだ。

 初期設定か~、だいぶ前のことのように感じられるな~。
 あの時の俺は、ドット絵に思わずツッコんだ……って、あれ?


「……なぁ、初期設定の担当っていうのは一体誰なんだ?」

『GMの誰かが担当する筈ですよ。私達は全員が{多重存在}を所持していますから、全プレイヤーに同時に対応することも可能です』

「……それならお前達の中に、ドット絵の姿で現れる奴っているか?」

『いいえ、いませんけど。私達の姿は基本、この姿だけです。衣装を変える程度のことならできますけど……ドット絵になる機能は聞いたことありません』

『ワタクシにもドット絵は無理ですわ』


 ……なら、それなら、『ドット・ファミ』とは何者なんだろうか。


「プレイヤーの初期設定は、GMが担当している。だけど、俺の会ったドット絵はGMでは無い。……お前達に、誰か思い当たる奴はいるか?」

『それなら……運営神の何方どなたかかと思いますよ。第一陣のプレイヤーの一部を、運営神が担当しましたので。なんでも、実験的に【固有】スキルを付与するとのことで……』

「なら、アンケートってするのか? 俺は、そのドット絵にアンケートを受けたんだ」

『そんなのやってないわよ。やってどうするのよ、それ』

「いや、俺に訊かれてもなー」


 その、俺のありのままの姿を見せて答えたが……【固有】スキルは貰えなかった。
 何の為にやったかと思ったが、その後に入手した{感情}もあって、すっかり忘れていたのだ。


「……俺としては、運営神以外の神が良いんだけどな。特に■■■って記されている神」

『……本当に色々と知っていますわね。今のプレイヤーで、運営神以外の神々の存在を知れたのは、僅か1%未満ですわよ』

「逆にどうやって知ったんだよソイツら。俺は終焉の島で話を聞けたから分かったけど……普通は、運営神の従属的な存在だと思われるよな」

『実際そんな感じにされてるしね。だからこそ、信仰心が廃れるようになったワケね』


 何者なんだろうか、■■■って。
 せめて文字化けが解読できれば、調べることができるのに。


『……本当に時間が無くなってきました。
 メルスさん、そろそろお願いします』

「……そろそろって何?」


 いや、何も聞いて無いんですけど。


『言いましたよね、GMは祝福を与えたプレイヤーを覗くことができると。私とシンクはメルスさんに特別な守護を授けました。運営神でも見れない部分を見る為に……』

『だからこそ、メルスが眷属達にやってきたことも……し、知ってるんだから!』

『ワタクシも見てはいましたので……』


 ……つまりなんだ? 
 全員に、ただでさえ後で悶死したくなるようなことをやれと?
 一応はできるようになったけど、結局思い返して恥ずかしくなるようなことをやれと?

 さて、ソレってなーんだ?


「無理だn『『『…………』』』――あくまで頬にだからな」

『いいえ』『当然』『合わせてください』

「……Oh」


 この後、何回か合わせることになった。
 感想、レモンの味なんてしなかったわい!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


夢現空間 修練場


 ――再び目を開けると、そこには巨大な門が聳えていた。


「戻って来たか……」


 ステータスを開いてみると、新たに(アオイの守護)が追加されていた。
 ……うん、分かっていたけどさ。

 効果はレイやシンクの物と同じく、一つの属性とステータスを補正するものだった――属性は水で、対象の能力値はDEXだ。


《メルス様、ご無事でしたか?》

「(あぁ、会ったのはレイ達だった。……というか、気付けなかったか?)」

《申し訳ありません、全ての防衛機能が転送された途端に途絶えました。フィールドそのものに、細工があったのかと思われます》


 アンからの念話だ。
 こういう時にはすぐに連絡して貰えるように頼んであった。

 ……そうか、無効化されるのか。
 シーバラスやクソ女神に会ったとしても、何の対策もできないのなら、どうしようも無くなるのかもしれないな。


「(分かった。魔方陣の解析と並列して、そっちの対策も練ってくれ。俺も何かアイデアが浮かんだら伝えるから)」

《了解しました》


 ……無理じゃね?
 無理だからこそ、あんな所にプレイヤーを呼び出しているんだし。

 スキルの中にも、対応策と成り得る可能性があるものもあるが、100%と言い切れるものは存在しない。
 眷属達に求めれば、それはすぐに用意して貰えると思う……が、今はまだまだ控えておこう。

 {他力本願}のように完全に制御できていないスキルが多いからな。
 今のものですらそんな状態なのに、それ以上のスキルが扱える筈が無い。
 もう少し、俺自身が強くなってからだな。

 暫くすると、ネロが戻ってくる。


『メルス、どうだったのだ?』

「アンから連絡があったと思うが、俺に問題は無かった。むしろ有益な情報を手に入れられたぞ」

『……いや、そういうことでは無くてな』

「……ん?」

『また、増えたのではないのか?』

「あぁ……。うん、増えた」

『……メルスの輝きに、新たな変化があったのだ。新しく青色のものが一つ、より輝くようになった白と赤の色が一つずつ……メルスの魂は、よく見ると眷属達のものに包まれているのだ。それに変化があったということは……な』


 ご察しの通りです。


「今の会話で、全員に伝わっただろう。新しく眷属が増える予定だ……眷属結晶を七つ渡したからな」

『そうか……』

「ま、心配してくれたんだな。ありがとう、ネロ」

『こ、コラッ! そんなに頭を撫でるな! 髪がクシャクシャになるではないか!』

「元々は無かったじゃないか」


 とりあえず、今はネロを撫でて和もうか。


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